2018年1月より、休眠預金等活用法が施行されました。休眠預金とは、10年間入出金などのない預貯金のことです。簡単に説明すると、忘れられている預貯金は世の中のために使うことにする、ということです。「忘れるような預貯金があるなんてうらやましい……」くらいに思っていた筆者ですが、他人事ではありませんでした。
「銀行から何か郵便が届いています」というメッセージとともにハガキの写真が実家より送られてきました。身に覚えがなく、内容を確認してもらうと、休眠預金のお知らせでした。その額5万円弱。うれしい臨時収入なものの、やはり記憶にありません。ハガキには氏名と残高しか記載されておらず、口座番号は分かりません。
筆者は、その銀行で1つしか口座を開設していないはずです。ですが、銀行は筆者名義で5万円弱を預かっていると連絡してきているのです。とりあえず、銀行に赴きました……。
休眠預金とは?
金融庁の調査によると、毎年約1,200億円が休眠預金となっています。このお金を社会のために生かそうという主旨で施行されたのが、休眠預金活用法です。とはいえ、元は預貯金者のお金であることから、金融機関は預貯金者に払い戻す努力をしなくてはいけないこととなっています。残高が1万円以上ある預貯金については、登録されている住所へ郵送または電子メールで通知されます。1万円未満の場合には通知されません。
休眠預金口座の対象となる預貯金は、普通・通常預貯金、定期預貯金、当座預貯金、別段預貯金、貯蓄預貯金、定期積金、相互掛金、金銭信託(元本補填のもの)、金融債(保護預りのもの)です。ただ、休眠預金口座の対象になったからといって、残高がゼロになってしまうわけではありません。窓口で手続きを行うことで払い戻すことができます。
通帳やカードがある場合、暗証番号が分かれば通常通りATMで引き出すことが可能です。暗証番号が分からない場合には窓口で届出印を使って引き出します。ですが、通帳やカード、届出印がなかったり口座番号すら不明だったりする場合には、公的書類が必要になることもあります。また、解約をする場合には、原則として本人確認書類と届出印が必要です。金融機関により必要な書類が異なるので、事前に金融機関に問い合わせてみるといいでしょう。
休眠預金に対する意識
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、5割超の人が休眠預金の保有数はゼロであると解答しています。仮に筆者がこの調査の対象だった場合、筆者は「休眠預金はありません」と応えたはずです。ですが、冒頭で紹介したように、休眠口座あったのです。
結論、筆者が子供の頃に親が筆者名義で開いた口座でした。当初預け入れた金額は4万円。40年近くにわたる長期複利運用効果に驚くやら、当時の利率の高さに驚くやら、また親に感謝しつつも忘れていたなんて……と思うやら。
「たとえ休眠預金があったとしてもその残高は寄付します」という場合はいいのですが、せっかくなので休眠口座がないかチェックしてみましょう。通帳やカードの整理をして、1つの金融機関で複数の口座が開設されている場合には解約することも検討しましょう。
また、開設した記憶があるものの通帳やカードが見当たらない場合や、解約した記憶がない場合には金融機関の窓口に行って問い合わせてみましょう。その場合、これまでの住所や苗字が変わっている場合には旧姓が必要になるのであらかじめ準備していくといいでしょう。また、合併などで金融機関がなくなっていても、引き継ぎ先の金融機関で対応してもらうことができます。
投資によってお金を増やしたり、節税したりすることも重要ですが、せっかく貯めたお金を忘れずに生かすことの方が大切でしょう。この機会に、預金口座やカードの整理をしてみてください。その際には是非、ご両親にも一言聞いてみてください。「昔、口座開いてくれてそのままになっていない?」と。
国分さやか
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。
2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター
<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種