子供が生まれることは本当に嬉しいことで、特に男性には、今まで以上に頑張らなくちゃ!とお金の面でも気持ちが引き締まるような思いになる方がたくさんいます。

健康保険から出産育児一時金や家族出産育児一時金を受け取り、住んでいる場所によっては市区町村から助成金を受け取ることもあるでしょう。一方で、「もらえる」お金なのに案外忘れがちなものがあります。税金の還付です。

出産費用は医療費控除の対象

所得税や住民税を算出する際に、所得控除があります。所得控除には14種類ありますが、そのうちの1つが医療費控除。自分を含めて家族のために医療費を支払った場合、その支払った医療費が一定額を超えると適用することができます。病気になったりケガをしたりした場合の治療費などが主な対象になりますが、出産費用も医療費控除の対象になります。

  • 所得税の計算

医療費控除の対象となる出産費用には次のようなものがあります。

・妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用
・不妊治療のための費用
・定期検診や検査、治療に行くための通院費用(交通費/※1、2)
・出産で入院する際にタクシーを利用した場合のタクシー代(※3)
・病院に対して支払う出産費用(※4)

(※1)領収書がなくてもメモ書き等で可能です。
(※2)自家用車で通院した場合の駐車場代やガソリン代は対象外です。
(※3)実家で出産するために実家に帰省する交通費は対象外です。
(※4)入院中の食事代も含みますが、出前を取ったり外食したりしたものは対象外です。

手続きの方法

まず、出産にかかった費用を含めて1月1日から12月31日までの医療費を計算してみましょう。

医療費の対象になるものには次のようなものがあります。

・医師による診療又は治療の対価(※1、2)
・治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価(※3)
・あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(※4)
・保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価
・義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯などの購入費用(※5)
・通院のための費用(※6、7)

(※1)健康診断の費用は、重大な疾病が見つかり治療をした場合は除いて対象外です。
(※2)医師等に対する謝礼金などは原則として対象外です。
(※3)処方箋のない医薬品も対象です。
(※4)疲れを癒したり、体調を整えたりするといった治療に直接関係のないものは対象外です。
(※5)メガネやコンタクトレンズは原則として対象外です。
(※6)領収書がなくてもメモ書き等で可能です。
(※7)自家用車で通院した場合の駐車場代やガソリン代は対象外です。

医療費控除額を計算

出産費用も含めた医療費の計算ができたら、次の式に当てはめてみましょう。

医療費控除額=医療費の合計額-保険金や給付金の合計額-10万円(※1)

(※1)所得の合計額が200万円未満の場合は所得の合計額の5%の金額

保険金や給付金とは、生命保険や医療保険から支給された入金給付金や手術給付金、健康保険などから支給された高額療養費や出産育児一時金などです。トータルで支払った金額から10万円又は所得の合計額の5%を差しい引いた後の金額が医療費控除の対象額です(上限200万円)。

なぜ忘れがちなのかというと、医療費控除を適用するためには確定申告が必要だからです。会社で行う年末調整で適用することはできません。確定申告というと、とても大変な作業のように感じるかもしれませんが、国税庁のホームページから申告書類等を作成することができます。会社から受け取った源泉徴収票等を用意して国税庁のホームページを開いてみてください。案内のとおりに入力していくだけで簡単に作成できます。

どのくらい税金が還付されるのか

医療費控除の額に所得税率を乗じた金額が所得税で還付される金額です。所得税率は所得の金額によって異なります。

例えば医療費控除の額が20万円で所得税率が10%であれば、単純に計算すると20万円×10%=2万円が支払う必要のない所得税として還付されます。また、翌年に支払う住民税も20万円×10%=2万円減ります(住民税の税率は一律10%)。

  • 所得税率表

時々受けるご質問があります。夫婦それぞれに所得がある場合、どちらが医療費控除を適用すべきかというご質問です。

正解は、所得が多く所得税の税率が高い方が適用すべきです。所得税の税率が5%の方が適用すると医療費控除額の5%しか所得税が還付されないのに対し、所得税の税率が10%の方が適用すると医療費控除額の10%にあたる所得税が還付されます。住民税は一律10%なのでどちらが適用しても変わりません。ぜひお子様が生まれたら確定申告をして還付を受けてください。

国分さやか

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お金の教室 おさいふほんわか心もほんわか 代表
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。


2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター

<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種