年末に会社から渡された源泉徴収票の「源泉徴収税額」を見て、「よく分からないけれど、ずいぶんたくさん税金払っているみたいだなぁー……」と感じたものの、「仕方がないか……」と見なかったことにした方、いらっしゃるのではないでしょうか。
この税金、実は減らせる方法がたくさんあります。このたくさんある方法の中でも、所得控除を使う方法を考えてみましょう。所得控除を適用すると、その分だけ税金をかける対象となる金額を小さくすることができ、税金を減らすことができます。
税金を減らすといっても、もちろん違反ではありません。脱税でもありません。「なんだか説明がざっくりすぎて分からない……」という方は、以前に源泉徴収票の見方に関する記事で14種類の所得控除についてご紹介していますので、ぜひ目を通してみてください。
今回は、この14種類の所得控除の中でも一番簡単に適用することのできる可能性のある扶養控除についてご紹介します。
実はご両親を養っていませんか?
配偶者以外で16歳以上の人を扶養していると、扶養控除を適用することができます。扶養、とは生活の面倒を見ていたり、援助したりしていることをいいます。控除できる額は以下の<扶養控除の控除額>のとおり。
ご両親と一緒に生活をしている場合や、離れて生活をしていても仕送りをしている場合には、扶養控除の対象になります。ただし、ご両親の所得が38万円を超えると扶養控除の対象にはなりません。ご両親にそれなりに収入があるのならば扶養する必要はないという考え方からです。ご両親の世代の収入は、国からもらえる公的年金が中心でしょう。
公的年金は雑所得という所得に分類されますが、この雑所得が38万円を超えると、養っていたり仕送りをしたりしていたとしても扶養控除を適用することができません。
65歳未満の方が受け取る公的年金額から雑所得を計算するための速算表は以下のとおりです。
速算表から逆算すると、65歳未満の場合には公的年金等の収入額が108万円以下であれば扶養控除の対象になります。
65歳以上の方の場合の速算表は以下のとおりです。
こちらも速算表から逆算すると65歳以上の方の場合には公的年金等の収入額が158万円以下であれば、扶養控除の対象になります。
ご両親が自営業等で老齢基礎年金のみを受給している場合、特に扶養控除の対象となる可能性が高いでしょう。
どのくらいの税金が減るのか
仮に所得税率が10%だった場合で試算すると……
・扶養するご両親が70歳未満の場合
→1人あたり38万円の扶養控除額が適用されます。
38万円×10%=3万8,000円
扶養控除を適用することで1人あたり3万8,000円の所得税が減ります。
・扶養するご両親が70歳以上で同居の場合
→1人あたり58万円の扶養控除額が適用されます。
58万円×10%=5万8,000円
扶養控除を適用することで1人あたり5万8,000円の所得税が減ります。
・扶養するご両親が70歳以上で別居の場合
→1人あたり48万円の扶養控除額が適用されます。
48万円×10%=4万8,000円
扶養控除を適用することで1人あたり4万8,000円の所得税が減ります。
皆さんの所得税率が高ければ、この試算以上にもっと所得税が減ることになります。
また、住民税も減るので支払う税金がぐっと小さくなります。手続きは簡単。会社から配布される「扶養控除等申告書」という紙にご両親について記載するだけです。ぜひ、ご両親の年金額を確認し、紙1枚で税金を減らしてみてください。
国分さやか
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。
2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター
<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種