ソーシャルメディアに対する一部の巨大企業や億万長者の影響力が強まるなか、国際的なテック起業家や支援者のグループが、誰にも支配されないオープンで健全なソーシャルメディアのエコシステム構築を支援するキャンペーン「Free Our Feeds」を立ち上げた。

Free Our Feedsは「3年間で3000万ドルの資金調達」を目標に掲げ、初年度には400万ドルを確保する計画である。「公益のためのソーシャルインフラの保護」を目標に、まずは分散型ソーシャルネットワークBlueskyの基盤技術「ATプロトコル」のプロジェクトを支援する。

分散型ネットワークを標榜するBlueskyは、ユーザーが自身のネットワークやデータを管理できる仕組みを提供しているが、その基盤であるATプロトコルはいまだBlueskyが主要な運営主体である。キャンペーンは、ATプロトコルを管理する公益財団を設立し、データストリームを保証する独立したインフラを整備して、ATプロトコルの独立性を確保する。また、オープンプロトコルを基盤とする新たなソーシャルアプリケーションの開発に資金援助する。これにより、Blueskyが万が一、外部の巨大資本に支配されても、ユーザーが別のプラットフォームにネットワークとデータを持って移動する自由を確保できる。

Free Our Feedsはウェブサイトのトップページで、「ザッカーバーグが完全に(イーロン)マスク化した今、これ以上、億万長者にデジタル公共広場を支配させるわけにはいかない」と主張している。米Metaは1月7日、Facebook/Instagram/Threadsのコンテンツ管理ポリシーの変更を発表し、コンテンツモデレーションのルール緩和を進める可能性があると報じられた。

Free Our Feedsは現在、以下の9人の管理者グループにより管理されている。

  • ナビハ・サイード氏: Mozilla Foundationのエグゼクティブ・ディレクターで、インターネットの透明性やデジタル権利の擁護に注力。
  • ロビン・ベルジョン氏: 独立系テクノロジストで、WEB標準とプライバシー技術の分野で活躍。
  • ディープティ・ドーシー氏: New_ Publicの共同ディレクターで、倫理的かつ包括的なオンライン公共空間の構築に取り組む。
  • マーク・ファドゥール氏: AI Forensicsのディレクターで、AI技術の社会的影響の分析と解決を専門とする。
  • シャリフ・エルサイエド=アリ氏: Future of Technology Instituteのエグゼクティブ・ディレクターで、人権と技術政策に精通。
  • マーク・サーマン氏: Mozilla Foundationのプレジデントで、オープンソースやインターネットの健全性の推進に尽力。
  • イーライ・パリザー氏: New_ Publicの共同ディレクター、「The Filter Bubble」の著者。メディアと情報のフィルタリングに関する研究で知られる。
  • マロリー・ノデル氏: Social Web Foundationのエグゼクティブ・ディレクターで、デジタルコミュニケーションにおける倫理的基準の提唱者。
  • フィル・ボードワン氏: Numeno.AIの共同創業者。

また、「Will you help us to free social media from billionaire control?(ソーシャルメディアを億万長者の支配から解放するために協力してくれますか?)」というオープンレターに、Wikipedia創設者のジミー・ウェールズ氏、ミュージシャンのブライアン・イーノ氏、俳優のマーク・ラファロ氏、台湾の元デジタル大臣であるオードリー・タン氏など、多くの技術者、研究者、作家、アーティスト、ジャーナリストが署名している。

Mastodon、Flipboard、Ghost、Threadsなどのプラットフォーム間の相互運用を可能にしているオープンプロトコル「ActivityPub」についても、「ATとActivityPubは、どちらか一方を選ぶべきものではない」としており、オープンなソーシャルメディアプラットフォーム間の相互運用の実現を目標に、ブリッジングとネイティブプロトコルの相互運用性を向上させるテストを支援する可能性を示している。