「更年期」はいずれ誰でも経験するものですが、本人にとっては初めてのこと。更年期を迎える前から、どのような症状が出るのか漠然とした不安を抱えている人も多いでしょう。女性の場合、更年期の症状はいつ頃から、どのような形で現れるのでしょうか。更年期を健やかに過ごすためのポイントとあわせて、詳しく解説します。
■女性の更年期障害とは
女性は年齢とともに、「思春期」「性成熟期」「更年期」「老年期」という4つのライフステージを経験します。個人差はあるものの50歳前後で閉経を迎え、この閉経の時期を挟んだ前後10年間(一般的に45〜55歳頃)は「更年期」と呼ばれています。なお、閉経とは、最後の月経から1年以上月経がない状態のことです。
更年期にホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、発汗など)やめまい、動悸、気分の落ち込みなどが起こり、他に原因となる病気が見つからない場合、それらの症状は「更年期症状」といいます。また、それらの症状によって日常生活に支障が出る場合は「更年期障害」と診断されます。
女性の更年期症状は、女性ホルモンが減少することで引き起こされます。女性ホルモン(エストロゲン)は30歳代後半から低下し始め、40歳代後半になると一気に低下します。その急激な変化でホルモンバランスが崩れ、9割近い女性が心身に何らかの不調を感じるといわれています。
ただし、更年期の症状はこうした女性ホルモンの減少だけでなく、性格、仕事や家庭環境などの心理的要因も複雑に関係します。大した症状を感じないまま過ぎ去ることもあれば、仕事を続けるのが難しいほどの症状が出ることもあり、個人差が大きいのも特徴です。
■女性の主な更年期症状
女性の更年期に現れる症状や程度は人によって差が大きく、「不定愁訴(原因はわからないけれど、何となく体調が悪い)」と呼ばれるほどさまざまです。しかし、一般的には以下のようなものが多くみられます。
<精神神経系の症状>
頭痛、めまい、不安感、不眠、イライラする、うつ、倦怠感など
<血管運動神経系の症状>
動悸、ホットフラッシュ、寝汗、むくみなど
<皮膚・分泌系の症状>
のどの渇き、ドライアイなど
<消化器系の症状>
吐き気、下痢、便秘、胸やけ、胃もたれなど
<運動器官系の症状>
肩こり、腰痛、背中の痛み、関節痛、しびれ、手足の痛みなど
<泌尿器・生殖器系の症状>
月経異常、尿失禁、性交痛など
これらの症状に加え、更年期はこれまで女性ホルモンで守られていた病気が芽を出しやすい時期でもあります。特に、コレステロール値や血圧が高くなりやすいため、年一度の健康診断で身体の状態を確認することが大切です。
■更年期を健やかに過ごすためのポイント
更年期に現れる症状の程度には、普段の生活習慣も影響します。しかし、症状が悪化してから生活を変えることは難しいため、その前にできるだけ早い段階で健康的な生活を取り入れましょう。更年期を健やかに過ごすには、以下のような生活を心がけることが大切です。
<バランスのとれた食事>
たんぱく質やビタミン、ミネラルなどを含んだバランスの良い食事を心がけましょう。「○○を食べていればOK」といった特定の食材を過度に推奨するような情報を見かけることもあるかもしれませんが、改めて健康に必要な栄養素を確認してみると、「バランスよく食べることが大切」という結論にいたります。
食事のバランスは、「主食:副菜:主菜=3:2:1」が理想的です。また、更年期は太りやすい時期でもありますので、糖分や油分の少ない和食中心の食事を意識しましょう。これに加えて、女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンを含む大豆製品も、積極的に取り入れたい食材です。
<適度な運動>
運動には、血行促進、ストレス解消、ダイエット、自律神経のバランスを整えるなど、更年期の不調を和らげる効果があります。ウォーキングやジョギング、ヨガ、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を無理のない範囲で行いましょう。
<充分な睡眠>
更年期は体力や気力が落ち、疲れやすくなります。早寝早起きを心がけて充分な睡眠をとるほか、日中でも疲れを感じた時には無理せず休むようにしましょう。
<気分転換>
同世代や上の世代の友人、知人と更年期について情報共有したり、趣味で気分転換したりすることも大切です。また、苦手な人間関係から離れるなど、ストレスを溜めにくい環境に身を置く工夫もしてみましょう。
<ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬>
症状がつらい場合は、我慢せず適切な治療を受けましょう。婦人科や更年期外来では、血液検査によるホルモン値測定のほか、子宮や卵巣の状態の検査、他の病気の関連などを確認します。
そのうえで、更年期障害の治療には、主にホルモン補充療法や漢方薬による治療が用いられます。ホルモン補充療法は、低下したエストロゲンを補う治療法です。エストロゲンの投与法には、「周期的併用投与法」「持続的併用投与法」「エストロゲン単独投与法」の3種類があり、閉経からの期間や子宮があるかなどを考慮して投与法を決めます。
漢方薬は、患者の体質や体型、自覚症状などを総合的に判断し、症状ごとにどの漢方薬を使うかを決めます。その他、手軽にさまざまな栄養素のものが手に入る、サプリメントの服用もおすすめです。
最後に更年期障害の予防法や症状を和らげる方法に関して、産婦人科の専門医に聞いてみました。。
40歳代近くになると、月経周期がみだれ、少しずつ更年期といわれる症状を自覚する方が増えてきます。日常のストレスや生活リズムの乱れからも症状がひどく出る方もあります。日頃から、食事や生活の改善で症状を軽くできるように心がけましょう。
症状に不安がある場合は、近くの医療機関へ相談してください。漢方、ホルモン治療のみならず、症状改善のアドバイスをもらってください。