◆心躍る瞬間「小学生のときに観たミュージカル『ふたりのロッテ』」
松下:今月お迎えしているゲストは、俳優の古田新太さんです。よろしくお願いいたします。今週も古田さんの“心躍る瞬間”について伺っていきます。今回お話いただくのはどんな瞬間でしょうか?
古田:おいらが“心躍った瞬間”は「小学生のときに観たミュージカル『ふたりのロッテ』」です。
松下:それでは時計の針をその瞬間に戻していきましょう。小学生のときにミュージカルを観劇されているんですね。
古田:学校の芸術鑑賞会みたいなものに行かされたんですけど、まったく興味がなくて、オープニングの幕が開いてすぐに寝ちゃって。だから、「『ふたりのロッテ』です」って言っているけど、ストーリーは全然覚えちゃいない。
松下:(笑)。
古田:だけど、起きたら市場のシーンで、八百屋さんや魚屋さん、牧師さんが出ていて、その人たちが急に歌って踊りだしたの。その瞬間“そんな市場なんかに行ったことねえ!”“なんてバカバカしい世界なんだ”と思って。
松下:確かに。目を覚ました瞬間に、リアリティとはかけ離れた世界を観たんですね。
古田:それで“これは面白い、何をやってもアリなんだ”と思って。その頃は“漫画家になりたい”“プロレスラーになりたい”“ロックミュージシャンになりたい”なんて思っていたけど、そのミュージカルを観たら“(俳優は)何にでもなれるんだ”と。
松下:ステージ上であればミュージシャンにもなれるし、プロレスラーにもなれるし、自分の好きなものがすべてそこで叶えられる。
古田:そして、歌って踊ってもいい。“こんなお得な商売はないな”と。
松下:それが俳優という職業へつながっていったのですか?
古田:そう。“こんなに「でたらめ」ができる職業があるんだ”って。
松下:ある意味、自由ですもんね。
古田:それで“ミュージカル俳優っていいぞ”と思って、ミュージカル俳優になりたいなと(思うようになった)。
◆やっておいたほうが得
松下:そこから古田少年は具体的に動き出したのですか?
古田:楽器はやっていたし、歌も好きだったけど、小学生だからなかなか叶わない。中学生になって演劇部に入ろうと思ったんだけど、演劇部がなくて。
松下:あら。
古田:それで、無理やり先生に「1回、体育館を貸してもらえませんか?」と頼み込んで、ミュージカルをやったんです。
松下:ええ!? それは脚本も書いて?
古田:脚本は「太った殿様」というもので。
松下:絵本ですよね?
古田:そうそう。それで、おいらは太った殿様。
松下:(笑)。
古田:お客さんを呼びたかったから各運動部のキャプテン、いわゆるモテるやつらに「お前ら、ミュージカルやるぜ」と声をかけて。そして、1人の先生を巻き込んで、木戸銭で100円を取ってやったら結構いっぱい集まったの。
松下:すごい! そのときからいろんな構想が頭のなかに生まれていたんですね。
古田:(そのミュージカルでは)くだらないギャグとかも入れて。
松下:脚本は有りのものだったけれど、オリジナリティも入れて?
古田:「太った殿様」は民話劇なんだけど、おいら(殿様)は志村さんのバカ殿のメイクをしていたから(笑)。
松下:白塗りで(笑)。既にもう今の古田さんに通じるものがありますね。
古田:中学のときからそんな感じだったけど、高校では演劇部に入って、クラシックバレエとタップをやり始めて。それとは別に、ストリートでブレイクダンスとかが流行っていたから、ウィンドミルとかバックスピンとかもやっていたの。
松下:すごい! ひと通り全部のことを……できないことがないんじゃないですか?
古田:“(ひと通り)やっておいたほうが得だな”という考えだったので。準備するより、監督に「これできる?」と聞かれたときに「できます」とすぐ言えるほうが目に留まりやすい。
松下:古田さんは、よく(若い)役者さんに「ダンスはやっておいたほうがいい」みたいなことをおっしゃいますが、そういうことなんですね。“いつでも対応できるように準備をしておく”と。
古田:監督によっては、日本刀を使って立ち回りをしているのに、急に「古田さん、ヌンチャクできる?」って(笑)。それでも「はい」と言う。
松下:古田さんが「ノー」と言っている姿を見たことがないです。
古田:ただ単に早く帰りたいんだよ(笑)。
松下:(笑)。それが理由だとしても、できないことって絶対にあるじゃないですか。でも、古田さんの場合はないんですよ。すごいなぁ。
<番組概要>
番組名:Grand Seiko presents My Time My Story
放送日時:毎週土曜 12:00~12:25
パーソナリティ:松下奈緒
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/mystory/