1979年にスタートした『全日本仮装大賞』が、13日(19:00~)の放送でついに100回大会を迎える。第98回で「今回で私、この番組終わり」と勇退宣言が飛び出したものの、この大台を達成することができた司会の萩本欽一は今、どのような心境でこの番組と向き合っているのか。そして20年以上にわたりタッグを組む香取慎吾に感じることとは――。

  • 『全日本仮装大賞』が100回大会に到達した萩本欽一

    『全日本仮装大賞』が100回大会に到達した萩本欽一

コント55号の準備と比べて…

――第100回を迎えますが、歴代で特に印象に残る作品は何でしょうか?

第1回の時の「蒸気機関車」(優勝作品)。あの時、僕は「仮装」という番組名だから、女装したり、ハワイアンの格好をしたりして出てくると思ってたの。そうしたら人間が汽車になって出てきた(笑)。その時のディレクターが、「この番組はこれから広がるぞ」と言っていたのを覚えてます。その後、作品がどんどん長くなってきて、「これはちょっとマズいぞ」と思っていたところに出てきたのが、「アジのひらき!」(第6回優勝作品)。あれは番組を救ってくれたね。エジソンが出てきた後に、湯川秀樹さんが出てきたって感じかな。

最近だと、「マッスルエフェクトでTikTok」(第99回優勝作品)。お父さんと娘さんが合わせて踊ってるんだけど、娘って大抵お父さんが嫌いじゃない。でもあの作品で一緒にやっているのを見て、「ああ、これだよテレビっていうのは」と思いました。その後、「珍しく家族が全員で見ていた」といろいろな人から言われたし、最近では珍しくファンレターもたくさん来ましたね。俺のテレビを見てる人は、だいぶおじいちゃん、おばあちゃんになってるから「久しぶりに息子夫婦と孫と、皆で笑って泣いたよ」って言葉を聞くと、「仮装大賞って、一つ別のところにいるんだな」と思いました。

――仮装大賞の歴史を振り返って、どんな思いがありますか?

出場者のみんなに、「ありがとうね」というのが一番ありますね。出てくる方の作品がどんどん進歩している。こんなに練習した3分間の作品、もうテレビタレントは負けますよ。コント55号でも練習なんてしたことなかったもの。「この作品は半年は練習したんです」と言った方がいて、僕が慎吾に「踊りの練習は何分するの?」って振ったら、「30分」と言ったからね(笑)。もちろんプロだから30分でできるんだけど、素人の方は間が分からないからもっと時間がかかるんです。それがピシャっと合うまでやるんだから。あれを見てると、本当にコント55号は不届きだったなと思いますね。

  • 第1回大会の優勝作品「蒸気機関車」

香取慎吾が変わったのは前回大会

――香取さんが司会に参加して20年以上経ちますが、どんな変化を感じますか?

変わったのは前回(第99回)だよ。収録が終わってから「今日の慎吾は良かったな、最高だった。面白かったよ」と言ったら、「じゃあ今までは面白くなかったんですか」って聞くから、「面白くねえよ」って(笑)

俺からすると、慎吾は頑張ってる。ヨイショするわけじゃないけど、いいやつなの。萩本欽一という先輩よりも絶対に一歩も前に出ようとしない。本番中に、「俺は出ていかないから1人でやってこい」と言っても、やらないの。でも、今日は(『仮装大賞』の直前番組収録で)俺が黙ってたら、「自分がやらなきゃマズいと思ってる」とやっと言ってきたね。そこからきれいな流れを作っていて、「あれができりゃ大丈夫だよ」と思いました。

――香取さんの司会としての成長ぶりはいかがですか?

成長は前回だけ(笑)。生まれてからずっと3歳児だったのが、前回になってやっと成人式を迎えた。正直言って、これからが楽しみだと思ったね。

――では、第100回に向けて、視聴者の方にメッセージをお願いします。

今回は番組史上初めて、初参加の方が半分来た、それで応募者数がこんなに多いんです(3,580組)。すごい人になると、「初めて仮装大賞を見た」という人が来ています。そこから絞り込まれているわけだから、中身が濃いんじゃないかな。でも、(常連出場者の)梶原(比出樹)さんには、なかなかかなわないよ。我々の中の仮装を覆していった男だからね。それにぶち当たったらどうなるか。新しい層が出ているので、期待ができると思います。

  • 第100回大会の梶原比出樹さんの作品


【収録レポート】真骨頂の“素人いじり”は衰え知らず

昨年12月29日に行われた収録で、83歳の萩本は例年と変わらず全力投球。仮装を披露し終えた出場者一人ひとりにくまなく声をかけ、面白くなりそうなキャラクターを発見すると、その鉱脈を掘り当て大きな笑いに変えていく――テレビ史に刻まれる真骨頂の“素人いじり”は衰え知らずだ。

どの出場者ともトークは大いに盛り上がり、コンビを組む香取慎吾や審査員たちと軽妙なやり取りを繰り広げていく。あくまで出場者が主役の番組だが、会場はさながら「欽ちゃん劇場」状態。収録予定時間を1時間ほどオーバーしながらも、約4時間半の本番を見事にこなした。

冒頭、第100回大会の意気込みを宣言し、観覧客の大きな拍手の中で収録をスタートした萩本。一度は「今回で私、この番組終わりね。長い間ありがとう」と引退の意向を口にしたこともあったが、まだまだ体力が許す限り、出場者たちを見守り続けてくれそうだ。