ヤマハ発動機は英国の名門「ローラ」と組んで「フォーミュラE」に参戦している。「電気自動車(EV)のF1」とも呼ばれるモータースポーツでヤマハはパワートレインの供給を担当しているが、そもそもなぜ、EVレースに挑戦するのか。「東京オートサロン2025」の会場で聞いた。
ヤマハの役割は?
東京オートサロンのヤマハブースには、「FIAフォーミュラE世界選手権」に今シーズンから参戦する「ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム」のフォーミュラEマシン「ローラT001」(デモカー)が展示されている。
フォーミュラEは「電気自動車のF1」とも呼ばれる市街地レース。ニューフェイスとなるヤマハは、電動パワートレインのマニュファクチャラーとしてチームにモーターとインバーター、ギアボックスのパッケージを供給する役割だ。
ヤマハといえば二輪の世界選手権で活躍したことが有名だが、なぜこのタイミングで四輪のフォーミュラEに参戦することに決めたのか。会場で担当者に聞いてみた。話をしてくれたのは、開発を担当する技術・研究本部の原隆チーフストラテジーリードと伊藤仁第2技術部開発主務だ。
フォーミュラE参戦の狙いは?
フォーミュラEでは、レース中にフルパワーで戦うF1やMotoGPとは異なる厳格な“制限”が適応される。それはバッテリーの容量だ。フォーミュラEが搭載するバッテリーは、レースで使用するエネルギーの半分までの容量しか認められていない、そのため、完走するためには「エネルギーマネジメント」の技術が最も重要なファクトになる。しかもレースなので、相手より速く走らなければいけない。
レースという真剣勝負の中でバッテリーのエネルギーマネジメント技術を磨き、高めていくことが、ヤマハが目指している2050年カーボンニュートラルの実現に必ず結びつくはず、というのが今回のチャレンジの趣旨だ。
ヤマハがタッグを組むのは、英国の名門「ローラ」とフォーミュラEの経験が豊富なドイツの「ABT」(アプト)。老舗のレーシングカー開発会社であるローラは、これまで数々の国際自動車レースで活躍した車両を世に送り出してきた。現在は「サステナブル・モータースポーツ」を掲げ、フォーミュラE規格に準拠した車体パッケージの開発・供給を行っている。
「FIAフォーミュラE世界選手権2024-25」はシーズンが始まったばかり。ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームの成績を押さえておこう。
2024年12月7日に行われた開幕戦「2024-25サンパウロ ePrix」には22台が参戦。チームのルーカス・ディ・グラッシ選手は予選で14番手につけ、決勝では14週でリタイアとなった。ゼイン・マロニー選手は予選19番手、決勝12位という結果に終わったが、ファステストラップではマロニー選手が3位で、今後に期待を持たせる結果となった。
前出の原、伊藤両氏によると、レースを体験することで「トップチームに比べて何がOKで何が足りないのか、それがかなりの部分でわかってきた」そうだ。現在は、間もなく開催されるメキシコシティでの第2戦に向けてその対策を施すと共に、各部を調整中とのことだった。
ヤマハブースではこのほか、研究開発中の小型低速EV汎用プラットフォーム「DIAPASON(ディアパソン)C580」の拡張モデル「C580 Fork1」「C580 Fork2」、MotoGPマシン「YZR-M1」、市販二輪車「TRACER9 GT」「YZF-R3」、「MT-03」にワイズギアのアクセサリーを装着した「MT-03ツーリングスタイル」などが展示してあった。