ヤマハ発動機は英国の名門「ローラ」と組んで「フォーミュラE」に参戦している。「電気自動車(EV)のF1」とも呼ばれるモータースポーツでヤマハはパワートレインの供給を担当しているが、そもそもなぜ、EVレースに挑戦するのか。「東京オートサロン2025」の会場で聞いた。

  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン

    ヤマハが「東京オートサロン2025」(1月12日まで幕張メッセで開催中)にフォーミュラEのマシン(デモカー)を出展(本稿の写真は撮影:原アキラ)

ヤマハの役割は?

東京オートサロンのヤマハブースには、「FIAフォーミュラE世界選手権」に今シーズンから参戦する「ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム」のフォーミュラEマシン「ローラT001」(デモカー)が展示されている。

  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン
  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン
  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン
  • マシンのボディサイズは長5,016mm、全幅1,700mm、全高1,023mm、車両重量は840kg。搭載するモーターの最高出力は350kWで、前後モーターを合わせた総合出力は600kWとなっている

フォーミュラEは「電気自動車のF1」とも呼ばれる市街地レース。ニューフェイスとなるヤマハは、電動パワートレインのマニュファクチャラーとしてチームにモーターとインバーター、ギアボックスのパッケージを供給する役割だ。

ヤマハといえば二輪の世界選手権で活躍したことが有名だが、なぜこのタイミングで四輪のフォーミュラEに参戦することに決めたのか。会場で担当者に聞いてみた。話をしてくれたのは、開発を担当する技術・研究本部の原隆チーフストラテジーリードと伊藤仁第2技術部開発主務だ。

  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン

    開発を担当する技術・研究本部の原隆チーフストラテジーリード(左)と伊藤仁第2技術部開発主務

フォーミュラE参戦の狙いは?

フォーミュラEでは、レース中にフルパワーで戦うF1やMotoGPとは異なる厳格な“制限”が適応される。それはバッテリーの容量だ。フォーミュラEが搭載するバッテリーは、レースで使用するエネルギーの半分までの容量しか認められていない、そのため、完走するためには「エネルギーマネジメント」の技術が最も重要なファクトになる。しかもレースなので、相手より速く走らなければいけない。

レースという真剣勝負の中でバッテリーのエネルギーマネジメント技術を磨き、高めていくことが、ヤマハが目指している2050年カーボンニュートラルの実現に必ず結びつくはず、というのが今回のチャレンジの趣旨だ。

ヤマハがタッグを組むのは、英国の名門「ローラ」とフォーミュラEの経験が豊富なドイツの「ABT」(アプト)。老舗のレーシングカー開発会社であるローラは、これまで数々の国際自動車レースで活躍した車両を世に送り出してきた。現在は「サステナブル・モータースポーツ」を掲げ、フォーミュラE規格に準拠した車体パッケージの開発・供給を行っている。

  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン
  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン
  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン
  • 日・英・独のワンチームでフォーミュラEに挑む

「FIAフォーミュラE世界選手権2024-25」はシーズンが始まったばかり。ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームの成績を押さえておこう。

2024年12月7日に行われた開幕戦「2024-25サンパウロ ePrix」には22台が参戦。チームのルーカス・ディ・グラッシ選手は予選で14番手につけ、決勝では14週でリタイアとなった。ゼイン・マロニー選手は予選19番手、決勝12位という結果に終わったが、ファステストラップではマロニー選手が3位で、今後に期待を持たせる結果となった。

前出の原、伊藤両氏によると、レースを体験することで「トップチームに比べて何がOKで何が足りないのか、それがかなりの部分でわかってきた」そうだ。現在は、間もなく開催されるメキシコシティでの第2戦に向けてその対策を施すと共に、各部を調整中とのことだった。

  • ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチームのフォーミュラEマシン

    現在は実戦で得たフィードバックも活用しながら、次戦に向けてマシンの調整を行っているとのこと

ヤマハブースではこのほか、研究開発中の小型低速EV汎用プラットフォーム「DIAPASON(ディアパソン)C580」の拡張モデル「C580 Fork1」「C580 Fork2」、MotoGPマシン「YZR-M1」、市販二輪車「TRACER9 GT」「YZF-R3」、「MT-03」にワイズギアのアクセサリーを装着した「MT-03ツーリングスタイル」などが展示してあった。

  • ヤマハ「DIAPASON C580 Fork 1」
  • ヤマハ「DIAPASON C580 Fork 1」
  • ヤマハ「DIAPASON C580 Fork 1」
  • ヤマハ「DIAPASON C580 Fork 1」
  • 「DIAPASON C580 Fork 1」では、農業機械分野で実績を持つ三陽機器や自動車チューニングで定評のある尾林ファクトリーをはじめとするパートナーと連携。軽量コンパクトなボディにドーザーやトレーラーなどを装備し、高い機能性を実現したモビリティを提案している

  • ヤマハ「DIAPASON C580 Fork 2」

    「DIAPASON C580 Fork 2」はSUV/ピックアップトラック向けタイヤ「OPEN COUNTRY」(オープンカントリー)シリーズで定評のあるトーヨータイヤのコーポレートカラーである青を基調にした「オープンカントリーオフロード仕様」。自動車以外の領域におけるカスタマイズ文化の新たな可能性を提示し、次世代のモビリティデザインを牽引するモデルを目指した