私たちは生きている限り、他人と関わりあう必要があります。
みなさんは、『人間関係の断捨離』や『人間関係リセット症候群』という言葉を聞いたことはありませんか? これらは、人との関係に悩む人がこれまでの関係性をバッサリ切ってしまう行為。
誰しもが人間関係について悩んだことはあると思いますが、果たしてそれは本当に必要なのでしょうか? 本記事では、断捨離したいと考える人の特徴や、断捨離までのステップを解説していきます。2025年の年初めに自分の心を守る方法を理解し、スッキリした1年にしていきましょう。
■断捨離したい人は"疲れている"!?
はじめに、人間関係をリセットしたいと思う人はどんな人なのでしょうか?
「そもそも、心に負担を抱え、疲れを感じている人が多いようです。人間関係に疲れやすい人として、周囲の期待に応えようと無理をしてしまう人、自分のルールに厳しすぎる人、見返りを求めるすぎる人、顔色をうかがってしまう人などが挙げられます。ほかにも理由はたくさんありますが、心が疲れてしまったときに断捨離やリセットという選択肢が出てくるのではないでしょうか」
そう話すのは、Je respire代表取締役であり臨床心理士・公認心理師の松島雅美先生です。自分自身をよく見つめ直してみると、当てはまるものが一つくらいはあるかもしれません。そんな人は、黄色信号です。
松島先生によれば「人間関係の断捨離は、あくまで最終手段」。断捨離をする前にやるべきことをこれから解説していきます。
■人間関係よりも生活の断捨離から始めよう
まずは「生活の見直し」から始めてみましょう。人間関係より先に、自分の生活で断捨離できるモノやコトはありませんか?
1日のルーティンを振り返ってみてください。例えば、仕事が忙しくそれだけでいっぱいいっぱいなのに、プライベートの予定を詰め込みすぎてしまっている――。そんな理由から心や体の休まる時間を作れず、ストレスや疲労がたまっていく人も少なくないのだそう。
「日常の朝起きてからの寝るまでの行動を振り返り、物理的なところから整理整頓しましょう。疲れている人はきっとどこかに無理が見つかるはずなので、まずはそれを断捨離してくださいね」
その次に、自分自身の快・不快の整理。自分にとって「嫌だな」と思ってしまう人がいるのであれば、どのような場面で嫌だと思うのか、その人のどんなところが嫌なのか、嫌ではない部分もあるのかを考えてみてください。自分の快・不快を紙に書きだして視覚化させることは、不快を減らす工夫を見つけるために効果的です。
職場、友人、家族、どんな相手であっても付き合い方の工夫はできるはず。いきなりリセットするのではなく、"不快と感じない距離を保つ"という方法もあります。
例えば職場の上司に、「ミスを何度も指摘されるから嫌だ」と苦手意識を持ってしまう人もいるでしょう。それは確かに不快ですが、ミスは自分の課題でもあります。 「この人は私に指摘してばかり」と思うのではなく、指摘される回数(不快)を減らすために「どうしたらミスが減らせるのか?」を考えてみましょう。
また、「自分で改善できる不快」と「改善できない不快」は分けて考えることが大切です。
・改善できる不快:自分なりの工夫で少しずつ減らしていくことができるもの。改善することで「成長」につながります
・改善できない不快:【会社のルールなど個人で変えられないもの】と【他者の悪意によるもの】に大別されます
仕事ではルールのある組織に所属し、自分に任された役割を果たす対価として賃金を得ています。そのため、自分の思うようにならないことにもある程度は適応する必要がある、と松島先生は言います。
一方、悪意を向けてくる人に対しては、1人で抱え込まず第三者に相談することで、不安が軽減される場合があります。
不快にも種類があるので、それを分類して考えることで、思考や感情の整理がしやすくなるでしょう。特に仕事では、「断捨離」よりも「距離を置く」という表現がより適しているのかもしれません。
ここまでをおさらいすると、まずやるべきことは
「自分の生活の見直し」
「自分の快・不快の整理」
「改善できる不快と、できない不快の理解」
であることがわかりました。
「断捨離ありきではなく、不快を減らす中の最終手段が人間関係の断捨離。人に対してではなく、自分の中で断捨離できるものはあるかな? と見直してみてください。“自分さえ我慢すれば……"と思ってしまうような不快になる付き合い方ではなく、どうしたら快になる付き合い方をできるかを考えてみると、改善への一歩が踏み出せるかもしれませんね」
■疲れた心を復活させるには?
最近は、SNSなどで「フォロワー整理をします」と公言し、人間関係をリセットする人もいますよね。ですが、人間関係をリセットする、断捨離する――。言葉にするのは簡単ですが、"社会の中で生きる私たちにとって自分の可能性を狭めてしまいかねない"ということを理解していただけたのではないでしょうか。
行動(悪習慣)の断捨離、意識(思い込み)の整理整頓、そこまでしても改善されない不快を見つけたときに初めて断捨離をしましょう。
「実は、本当に断捨離すべき人は多くないのかもしれません。嫌だから断捨離する、そんな簡単なことではないと知ってもらいたいです。そして何より、断捨離の先には、快があることがベスト。一時的な楽だけではなく、その先の快を見据えた上での決断であってほしいと思います」
最後に、断捨離した人が心を健やかに保つ方法を聞きました。
「自分自身の行動を整理すると、きっと余白ができるはず。余白ができると、快か不快かを判断する余裕も生まれてくると思います。その余白を持つことを大切にしてほしいですね。また、睡眠の質は重要です。脳が疲れてしまうと考える力が衰えてしまったり、不快を感じやすくなったりするので、上質な睡眠をとる習慣を心がけてください。そして、穏やかなメンタルを作るためには、一人の時間を作る、温かいコーヒーを飲む、そんなささいなことで構わないので、自分の快の時間と余白を作ることを意識してみましょう」