2024年もまたレンズをあれこれ買ってしまいました。でもカメラは買っていませ…と思ったけど、よくよく考えたら買っていました。富士フイルムのX100シリーズ6代目・X100VIです。
先代のX100Vが現行品だった頃、富士フイルムのカメラ製造が滞り、常に在庫切れということがありました。そんなときに世界規模でX100Vブームが巻き起こり(聞いた話によると中国発らしい)、中古が新品よりはるかに高値という異常事態が続いていました。僕はX100Vを発売日に購入していましたが、中古店の買取価格がそのときの金額をはるかに超えていたのです。何度ドナドナを考えたことか。
しかし、僕にとってX100シリーズは決して手放せない存在。2020年に渋谷スクランブル交差点のスナップをまとめた「#Shibuyacrossing」という作品を発表しましたが、それはほとんどを4代目・X100Fで撮影しました。作品自体はスクエアなのですが、X100シリーズのフルサイズ換算35mm相当という画角は、スクエアにすると同45mm相当に。僕自身は40~50mm相当の画角が好きなので、実にちょうどいいのです。一方で、ふつうに3:2で撮るときの35mm相当もまた、町を歩きながらスナップするときに心地よい画角。単焦点レンズ固定というスペックですが、僕にはとても使い勝手のよい二刀流なのです。しかも、いつでもどこでも持っていけるコンパクトなサイズでありながら、ファインダーや絞りリング、各種ダイヤルを備えており、“写真を撮った気分”がしっかりと味わえます。これは撮影中のテンションにもかかわり、絶好の被写体に出会ったときなどはシャッター数が増える、すなわちチャンスをモノにできる機会が増えます。
そんなカメラですから、いくら買取価格が高騰しても手放せません。一方で、代替わりすれば当然買い替えることになります。そこでX100VIが発表されたと同時にX100Vを売却。その時点でも買取価格は購入価格を大きく上回っていました。そして、X100VIを発売と同時に買うつもりでしたが…。思い出される方も多いことでしょう。X100VI、とにかく買えなかったのです。公式通販はなんと抽選販売。その他の量販店も軒並み抽選だったり、過去の購入履歴で優先順位があったり、はたまた告知なしで予約を開始(そして即終了)したり。僕もあちこちの抽選に申し込み、今まで足を踏み入れたこともなかった家電量販店のアカウントを作成したりもしました。しかし全滅。初回出荷分を逃し、しばらくX100シリーズが手元にない、という不安に苛まれていました。
ところが、同じようにあちこちで網を張っていた友人から、なんと抽選を2つ当てたという報告が。かくしてその片方を譲ってもらった次第です。X100シリーズは、なんとなくブラックとシルバーを交互に買っていて、今回はブラックの番だったのですが、手にしたのは友人が希望していたシルバー。でも、2代続けてシルバーを使っていると、次もシルバーでいいかなと思っています。僕個人はX100シリーズで一度も使ったことがない内蔵フラッシュと前ダイヤルを省いてくれれば、もっとソリッドな雰囲気でいいと思うんだけどなぁ……。
6代目ながら、初代と基本構造は変わらぬ究極のキープコンセプトなのですが、5代目と大きく変わった点は、画素数が約2610万画素から約4020万画素と大幅にアップしたこと。スクエアにトリミングしても、先代の3:2=最大解像度より画素数が多いということになります。富士フイルムのセンサーは大きくプリントしたときの印象がよく、先々代のX100FもA2に余裕でプリントできました。数字上は解像度不足なはずですが、決して破綻しないのです。それだけに画素数が増えれば、さらに耐性が向上することになります。そしてそれを支えるように、待望の手ブレ補正を搭載したことが画素数以上のトピックです。ライバルのGRは、あのサイズで手ブレ補正を組み込んでいるので、X100シリーズにできないこともないのですが、でも驚きました。サイズはたった2mm厚くなっただけ。おかげで、X100Vのボディジャケットもぎりぎり装着できます。
実際に初めてX100VIで撮影したときに感じたのは、これまでのX100シリーズにはなかった鋭いキレ味でした。X100Vでレンズがリニューアルされた際、X100F以前の絞り開放時の甘さが消えましたが、X100VIは同じ光学系ながら格段にシャープネスが向上した印象です。もちろん、センサーが変わったこともあるのでしょうが、手ブレ補正の恩恵が大きいですよね……と富士フイルムの方に尋ねたら、そうなんです、そこをわかってほしいんですとおっしゃっていました。あと細かい点では、X100Vではスマホとの接続が“できるはずだけどほとんど無理”でしたが、X100VIではとても快適になった、ということも付け加えておきます。
そして、発売からもうすぐ1年経とうとする今も、公式通販は在庫なし、量販店も取り扱いなし(予約すら受け付けていない)という状況なのが気がかり。そのせいで、先代のX100Vも中古相場は高止まりしています。僕みたいにないと困る人にはほぼ行き渡ったのかもしれませんが、2025年はより多くの写真家にこの名機が行き渡ることを願ってやみません。