更年期は一般的には45~55歳頃といわれており、ホルモンバランスが乱れ、体調の変化や不調を感じる人が多くいます。更年期そのものは病気ではありませんが、日常生活に支障をきたすほどの症状が現れる場合、「更年期障害」と呼ばれます。

パーソル総合研究所が『更年期の仕事と健康』をテーマに勉強会を開催し、調査データから見えてきた職場内支援の方向性について紹介します。

女性だけじゃない。男性にも更年期症状がある

日本人の平均閉経年齢は50.5歳で、その前後5年間は卵巣機能が低下し、エストロゲンなど女性ホルモンの分泌が急激に減少。からだが熱くなるホットフラッシュや発汗、めまい、気分の落ち込み、不眠といった症状が出ます。

更年期というと女性特有の課題というイメージを持つ方が多いかもしれませんが、男性にも更年期や更年期障害が存在します。

男性の更年期症状としては、落胆や抑うつなどの精神・心理症状、骨・間接・筋肉関連症状や発汗・ほてりなどの身体症状、性欲低下や勃起障害などの性機能関連症状といわれています。

いま更年期に該当するアラフィフは、団塊ジュニア(第二次ベビーブーム)にあたり、人口が多いのが特徴です。

更年期による離職やパフォーマンスの低下など健康課題として、社会にさまざまな影響を及ぼしており、働きやすい環境整備、 更年期症状に対する理解の必要性が求められています。

更年期症状による経済損失は、女性1.9兆円、男性1.2兆円

経済産業省は2024年2月に「女性特有の健康課題による社会全体の経済損失」を試算し、その結果を公表しました。

更年期症状による欠勤、パフォーマンス低下、離職、休職で、経済損失は女性で 1.9 兆円、男性で 1.2 兆円とされ、総額は年間3.4兆円にのぼると推計されています。

  • 出典:令和6年2月 経済産業省 ヘルスケア産業課「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」

さらに、40~59歳の女性のうち、更年期の対処をしていない人が約6割にものぼり、更年期症状が原因で「仕事を辞めた」女性は 9.4%に達していることは分かっています。

また、女性特有の健康課題に対して、女性の7割が上司の理解や両立支援を求めている一方、、企業側は「何をすればいいかわからない」と苦慮している実情もあるようです。

40~50代の正社員の4割前後が更年期症状あり

今年7月、パーソル総合研究所が実施した「更年期の仕事と健康に関する定量調査」によると、40~50代の正社員の4割前後が軽度レベル以上の更年期症状を抱えていることがわかりました。

  • 出典:パーソル総合研究所「更年期の仕事と健康に関する定量調査」

特に、要長期治療レベルの女性は4割強、重度の症状を持つ男性は7割弱にもかかわらず、多くの人が更年期症状を自覚していないというのです。

  • 出典:パーソル総合研究所「更年期の仕事と健康に関する定量調査」

では、男女共に「多忙な業務に追われているとき」に症状がつらくなると回答する人が多い一方で、女性は「空調の温度が合わないとき」、男性は「朝」に症状が強く現れるという顕著な違いも見られました。。

更年期症状がある社員に対する支援の方向性

本人による食事改善や生活習慣の改善などのセルフケアに加え、上司によるラインケア(メンタルヘルスをサポートする取り組み)、同僚によるピアサポートが、パフォーマンス低下防止や離職防止に有効。

さらに、職場で更年期の理解が深まることで、働き続けられるという調査結果も出ています。

  • 出典:パーソル総合研究所「更年期の仕事と健康に関する定量調査」

疲れやすい、気持ちが落ち込みやすい、イライラしやすい、眠れない、集中力が続かなくてミスが増えたなど、鬱を疑う前に「更年期かも」と心身の不調に向き合ってみることも必要かもしれません。