デルのフラッグシップノート「XPS」シリーズに、Intelの最新プロセッサ「Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)」搭載モデルが登場。今回はその中から、13型ディスプレイ搭載の「New XPS 13」を取り上げ、ハード面を中心に紹介する。

  • Lunar Lake搭載の最新「New XPS 13」レビュー、デルの美意識を体現するフラッグシップモデル

無駄を極限までそぎ落とした上質デザイン

XPSシリーズと言えば、シンプルかつ極限まで無駄をそぎ落としつつも、非常に上質で持つことに喜びを感じさせるデザインのCNC削り出し加工のアルミニウムボディが大きな特徴だ。最新のXPS 13にも、その上質なデザインはしっかりと受け継がれている。天板のDellロゴ以外の目立つ装飾を一切排し、ボディ全体から美しさや気品が感じられる。このあたりは、さすがフラッグシップシリーズといった印象だ。

  • CNC削り出し加工のアルミボディは、シンプルながら非常に上質で、持つことに喜びを感じさせるほど

  • ベゼルが極限まで狭められたディスプレイによって、開いても美しさを感じさせる

この上質ボディに優れたスペックを凝縮している点も、New XPS 13の大きな特徴だ。今回の試用機のスペックは以下にまとめたとおりだが、プロセッサーに“Lunar Lake”こと、Intelの最新プロセッサ「Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)」を採用することで、従来モデルから性能面を大幅に強化するとともに、マイクロソフトが定めるAI PCの新基準「Copilot+ PC」の要件も満たしている。さらにバッテリー駆動時間も大幅に延長されており、モバイルノートPCとしての魅力が大きく高められた。

  • プロセッサ:Core Ultra 7 258V(8コア8スレッド/ブースト時4.80GHz)
  • メモリ:LPDDR5x 32GB(プロセッサー内蔵)
  • ストレージ:512GB PCIe SSD
  • OS:Windows 11 Home 64bit
  • ディスプレイ:13.4型有機EL、2,800×1,800ドット、60Hz、タッチ対応
  • 無線機能:Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)、Bluetooth 5.4
  • 生体認証:顔認証、指紋認証
  • インターフェイス:Thunderbolt 4×2
  • サイズ/重量:295.3×199.1×14.8mm/1.18kg

サイズは295.3×199.1×14.8mmと、13型クラスのモバイルノートPCとしては極限のコンパクトサイズとなっている。このあたりは従来モデル同様に、ディスプレイのベゼルを4辺とも極限まで狭めている点が大きく貢献している。

重量は公称1.18kg、実測では1,191.5gと公称をわずかに上回っていた。13型クラスのモバイルノートPCでは1kgを切る軽さの製品も珍しくないため、手に持っても特別軽いという印象はなく、どちらかというとやや重い印象だ。ただ重すぎるということはなく、15mmを切る薄さでボディ剛性が非常に優れることもあり、軽快に持ち歩けるはずだ。

  • 本体正面

  • 左側面。14.8mmと15mmを切る薄さで、収納性に優れる

  • 背面

  • 右側面

  • 底面。フットプリントは13型クラスのノートPCとしてトップクラスの小ささだ

  • 重量は実測で1191.5gで、まずまず軽快に持ち歩ける軽さだ

高品質有機ELディスプレイで快適な作業が可能

ディスプレイには、2,800×1,800ドット表示対応の13.4型有機ELパネルを採用している。有機ELパネルということで高コントラストかつ鮮やかな発色が大きな魅力で、写真のレタッチや動画編集なども、本来の色をしっかり確認しながら行える。

ディスプレイ表面は光沢処理ではあるが、一般的な光沢ディスプレイに比べて外光の映り込みが比較的抑えられている点も嬉しい部分だ。また、タッチ操作にも対応しており、タッチによる直感的な操作も可能だ。

ただし、ディスプレイは最大で135度ほどまでしか開かない。もう少し深くまでディスプレイが開くと利便性がさらに高まるため、この点は少々残念だ。

なお、XPS 13では試用機に搭載されていたタッチ対応有機ELディスプレイだけでなく、2,560×1,600ドット表示、リフレッシュレート最大120Hz対応の液晶ディスプレイや、タッチ非対応の1,920×1,200ドット表示液晶ディスプレイも選択可能だ。

  • 2,800×1,800ドット表示対応の13.4型タッチ対応有機ELパネルを採用

  • 有機ELということもあって、高コントラストかつ鮮やかな発色はさすが。映像処理用途にも問題なく対応できるはずだ

  • ディスプレイが135度ほどまでしか開かない点は少々残念

タイル型で段差のないキーボードは操作性で意見が分かれる

キーボードには近年のXPSシリーズで採用されているものと同じ、タイル状のキーを採用する「ゼロラティスキーボード」を搭載している。このキーボードは隣り合うキーとの間隔がほとんどなく、見た目にはかなり異質な印象を受ける。

ただ、キーピッチは約19mmフルピッチを確保しており、実際にタイピングしてみると見た目ほど違和感はない。キーとの間隔が狭いため、キーの端を触ると隣のキーに触れてしまうこともあるが、タイプミスが誘発されることはほとんどなく、主要なタイピング自体は特に大きな問題はないと感じる。

キータッチはやや硬めで、しっかりキーを押し込んでタイピングする必要があるという印象。個人的には軽めのタッチのキーボードが好みなので、少々疲れるかな、と感じたものの、好みの問題なので、キーの感触は量販店などで実機に触れて確認してみてもらいたい。

ただし、キーボードで気になる部分もいくつかある。例えば、カーソルキーの上下は1つのキーを半分に分割して実装しているため、かなり小さく操作しづらい印象。また、BackSpaceキーの右に電源ボタンを配置しているため、一部キーのピッチがやや狭くなっている点なども気になった。

さらに、操作性で大きく意見が分かれそうだと感じたのが、ファンクションキー列がタッチセンサーになっている部分だ。個人的に文字入力時にFnキーを多用することもあって、指の感触でキーの位置が判断できないタッチセンサーはかなり扱いづらく感じたが、普段Fnキーをほとんど使わないというユーザーにとっては、そこまで不便とは感じないかもしれない。

  • 従来モデル同様の、タイル状のキーボードを搭載。Enter付近の一部キーのピッチが狭くなっている点や、カーソルキー上下が小さい点は少々気になる

  • キートップはキーボード面と段差がなく、非常にすっきりとした印象だ

  • 主要キーのキーピッチは19mmフルピッチ。タッチはやや硬めで、しっかり押し込むようにタイピングする印象だ

  • キーボードバックライトも搭載している

  • ファンクションキー列はタッチセンサーで実現

  • キーボードのFnキーを押すとファンクションキー列の機能が切り替わる

ポインティングデバイスのタッチパッドは、キーボード手前のパームレストとシームレスに一体化しており、見た目では全く存在感がない。とはいえここにタッチパッドがあるだろう、という部分に広々と搭載されており、戸惑うことなく操作が行える。

また、クリック操作時には振動によるフィードバックがあり、物理クリックボタンを操作しているかのような感覚で確実な操作が可能な点も、かなり扱いやすく感じる。タッチパッド自体の存在感が全くない点はデザイン性を高めることにも繋がっているが、それでいて操作性が犠牲になっていない点は嬉しい部分だ。

  • キーボード手前のタッチパッドは、パームレストとシームレスに一体化。どこに搭載しているのか見た目ではかわからない

  • 一般的なノートPCと同等の場所にタッチパッドが存在するので、違和感なく操作できる。クリック操作時に振動でフィードバックもあり、利便性は申し分ない

Wi-Fi 7対応で高速な無線通信が可能

冒頭で試用機のスペックは紹介しているが、改めて確認しておこう。

プロセッサーはCore Ultra 7 258Vを採用。メモリーはプロセッサー内蔵で容量は32GBと申し分ない。BTOでは、Core Ultra 5 226VやCore Ultra 7 256V、Core Ultra 9 288Vなども選択できる。いずれを選択してもマイクロソフトが定めるCopilot+ PCの要件を満たしており、Copilot+ PCのAI機能を含め、様々なAI機能を活用できる。

内蔵ストレージは、PCIe 4.0準拠の512GB SSDを搭載していたが、こちらもBTOで容量1TBまたは2TBのSSDを選択できる。無線機能は、Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)準拠の無線LANとBluetooth 5.4を搭載。無線LANは最高速度が5.8Gbpsと非常に高速で、アクセスポイント側の対応も必要ではあるが、環境が整っていれば有線LANを凌駕する高速な通信が可能だ。

生体認証機能は、Windows Hello対応の顔認証カメラと指紋センサーを同時搭載。顔認証カメラはフルHD(1080p)対応Webカメラとしても利用できる。指紋センサーは電源ボタン一体型となる。拡張ポートは、Thunderbolt 4を2ポート、左右側面に分けて1ポートずつ用意している。

モバイルノートPCとしては必要最小限で、電源を接続すると1ポートが埋まってしまうことを考えると、できればUSB Type-AやHDMIなども用意してもらいたかったように思う。

  • ディスプレイ上部にWindows Hello対応の顔認証カメラを搭載。1080p対応Webカメラとしても利用できる

  • BackSpaceキーの右に電源ボタン一体型指紋センサーを搭載。顔認証と使い分けられ、利便性と安全性を両立できる

  • 左側面にThunderbolt 4を1ポート搭載

  • 右側面にもThunderbolt 4を1ポート用意。拡張ポートは必要最小限だが、ポートリプリケーターを用意するなどすれば申し分ない拡張性を実現可能だ

優れた性能と長時間のバッテリー駆動を確認

では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。まずはじめにPCMark 10の結果だが、申し分ないスコアが得られている。飛び抜けて高スコアというわけではないものの、ビジネスモバイルノートPCとしてはもちろん、多少処理の重いアプリケーションを利用する場合でも全く不満のないパフォーマンスを発揮できるスコアとなっており、全く不満はない。

  • PCMark 10の結果。飛び抜けて高いスコアではないものの、モバイルノートPCとして申し分ないスコアとなっており、性能面での不満は感じない

それは、プロセッサーの純粋な処理能力を計測するCINEBENCH R23の結果にも現れている。こちらも飛び抜けたスコアではないかもしれない。ただ、Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)では搭載するCPUコア「Pコア」のハイパースレッディングが廃止されたことでマルチスレッド処理のベンチマークスコアがやや不利になっている。それでもこのスコアが得られている点は、CPUコアの処理能力が十分に優れることを示しており、そのことからも性能面で不満を感じることはないと言える。

  • CINEBENCH R23の結果。Pコアのハイパースレッディングが廃止されたものの、申し分ないスコアで、処理能力の高さが申し分なく発揮されている

それに対し、3DMarkの結果はかなり優れている。Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)内蔵GPUの「Intel Arc 140V」は、従来の内蔵GPUから処理能力を大幅に強化しており、ゲームも快適に動作するほどの描画能力を備えているとしている。3DMarkの結果もそちらを裏付けるものとなっており、いずれのテストもインテル製プロセッサーの内蔵GPUとは思えないほどの高スコアとなっている。

ビジネスモバイルPCとしては非常に優れた描画性能であり、グラフィックス系アプリの利用はもちろん、息抜きでゲームをプレイするといった場面でも大いに活躍してくれるだろう。

  • 3DMark Night Raidの結果

  • 3DMark Time Spyの結果

最後にバッテリー駆動時間だ。XPS 13の公称の駆動時間は、フルHD+のストリーミング動画を最大26時間連続で再生できるとされている。PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用し、ディスプレイ輝度50%、キーボードバックライトオフの状態で検証してみたところ、15時間36分を記録した。

ベンチマークテストでこれだけの駆動時間ということは、あまり省電力を気にせず利用したとしても、おそらく10時間程度は問題なく利用できるだろう。Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)は省電力性も大きく改善されているが、テストからもしっかり確認できた形だ。

  • 「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」で15時間30分を超える駆動時間を確認。性能に優れるだけでなくバッテリー駆動時間も長く、モバイルノートPCとして優れた魅力を備えると感じる

AI関連機能もカバー、優れた性能や長時間駆動がモバイルPCとして大きな魅力

XPS 13最新モデルは、外観は従来モデルからほとんど変化が感じられないものの、プロセッサーにインテルのCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)を採用したことで、高い性能を実現しただけでなく、駆動時間も大幅に延長され、これまで”モバイルノートPCだから”と妥協せざるを得なかった部分をしっかり改善。モバイルノートPCとしての魅力が大きく高められている。

注目を集めているAI関連機能については、Copilot+ PCのAI機能も含めて、現時点では特に有用なものはあまりない状況だ。それでも、Copilot+ PCで定められている40TOPS以上の処理能力を添えるNPUを内蔵している点は、今後Copilot+ PCでの新たなAI機能に対応できるのはもちろん、その他の様々なアプリに実装が予定されているAI機能でも活用されることになっていくため、その存在はこれからAI機能を活用していく上で有利となるはずだ。そのため、現時点でNPUを活用する場面が少ないとはいえ、将来性を考えると優れた処理能力を備えるNPUを内蔵するPCの選択は、より長くPCを利用するという意味でも重要なポイントだ。

そういった意味でも、Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)搭載のXPS 13は、性能や駆動時間に優れ、長い期間利用するモバイルノートPCとして魅力的な存在であり、広く勧められる製品だと感じた。