グローバル・リンク・マネジメントは12月25日、東京23区別の空き家数・空き家率の増減実態を詳細分析した結果を発表した。

  • 東京の空き家

全国の空き家数と空き家率の最新動向

近年、全国の空き家の問題が社会的関心を呼んでいる。総務省「住宅・土地統計調査(確報値)」(2023年10月1日時点の最新データ)によると、全国の空き家数は約900万戸と過去最多、総住宅数に占める空き家の比率(空き家率)も13.8%と過去最高を記録したとのニュースが駆け巡った。今回のレポートでは、全国、東京の空き家数(率)の推移とその実態について詳しくみていく。

はじめに全国の動向をみると、2023年の総住宅数は6504.7万戸であり、2018年と比べて264万戸増加(4.2%増)している。その一方、空き家数は900.2万戸と、2018年と比べて51.3万戸増加(6.0%増)し、空き家率は13.8%(0.2ポイント上昇)となっている。空き家数はこれまで一貫して増加が続いており、1993年(447.6万戸)から2023年(900.2万戸)の30年間で約2倍に増え、空き家率も9.8%から13.8%へと着々と上昇している。

  • 総住宅数、空き家数及び空き家率の推移(全国)

この空き家数を種類別にみていくと、2023年の空き家数900.2万戸のうち「賃貸用の空き家」が443.6万戸、「売却用の空き家」が32.6万戸と、この2つで全体の52.9%を占めている。この賃貸用あるいは売却用の空き家は、いずれ人が入居する可能性があり、また老朽化等で競争力を失った時には修繕・建て替えがなされると想定されるため、比較的問題は小さいと考えられる。

  • 総住宅数、空き家数及び空き家率(種類別)の推移(全国)

かたや、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」(本レポートでは「その他空き家」と称す)は、賃貸や売却用、別荘などを除き、長期にわたって居住者が不在の空き家であり、将来的に維持管理が不全となる可能性が高く問題が大きいとされている。

  • 空き家の種類と説明

この「その他空き家」に注目すると、1993年(148.8万戸)から2023年(385.6万戸)の30年間で約2.6倍に増えており、総住宅数に占める「その他空き家」数の比率(その他空き家率)も、3.2%から5.9%へ上昇している。将来的に、高齢者世帯の長期入院や介護施設入所による長期不在、相続後の放置などにより「その他空き家」が急速に増加し、ますます問題になると予測されている。

東京都の空き家数は約90万戸で全国最多

東京都における2023年の総住宅数は820.1万戸であり、2018年と比べて53.0万戸(6.9%)増加している。空き家数は89.7万戸と、2018年と比べて8.7万戸(10.7%)増加し、空き家率は10.9%(0.3ポイント上昇)となっている。全国の空き家率が一貫して上昇しているのに対して、東京都ではほぼ横ばいとなっており、ここ15年間は全国の空き家率を下回る水準で推移している。

  • 空き家数、空き家率(種類別)の推移(東京都)

しかし、空き家率が横ばい傾向であるといっても、東京都の場合は総住宅数が増加している(住宅の新規供給量が多い)ことが大きな要因となり、空き家数自体は着実に増加している状況にある。空き家数全体でみると、1993年(52.7万戸)から2023年(89.7万戸)の30年間で約1.7倍に増えている。この間に大きく増えているのは「賃貸用の空き家」ではあるものの(1993年38.8万戸→2023年62.9万戸)、今後大きく問題化すると考えられる「その他空き家」も1993年(11.0万戸)から2023年(21.4万戸)の30年間で約1.9倍に増えている。

2023年の空き家率(種類別)を都道府県ごとにみた場合に、東京都のランキングは空き家率では44位(1位の徳島県は21.3%)、「その他空き家」率では最下位(1位の鹿児島県は13.6%)に位置しているが、空き家数でみれば、東京都の空き家数は1位(全国の空き家数の10.0%)、「その他空き家」数は2位(全国のその他空き家数の5.6%)となっており、空き家の実数自体は極めて多いことがわかる。

  • 空き家率、空き家数(種類別)の都道府県ランキング(2023年)

また、空き家の建て方(一戸建て、長屋建、共同住宅)別の割合を全国と東京都で比較してみると、「賃貸用の空き家」については、全国、東京都とも共同住宅の割合が9割程度で圧倒的に高くなっている。その一方、「その他空き家」については、全国では一戸建が7割超を占めるのに比べて、東京都では一戸建が35%程度に過ぎず、共同住宅が6割強を占めている。「その他空き家」が一戸建の場合には単体の建物として放置され、共同住宅の場合には建物全体で放置されたり、建物内で虫食い状の放置になったりする恐れもあるため、どちらも複雑な問題になっていくことが予測される。

  • 空き家の建て方別割合

東京23区別にみた空き家数と空き家率の動向

次に、東京23区別に空き家数、空き家率の推移をみていく。

  • 東京23区・総住宅数、空き家数(種類別)、空き家率(2003年・2023年)

空き家率(全体)でみると、特別区部平均で2003年(10.9%)から2023年(11.2%)の20年間では微減であり、各区別では千代田区、台東区が大きく数値が減少している以外はほとんど大きな変化がないようにみえる。

ただし、空き家の種類別にみると、「その他空き家」率では、文京区、台東区、世田谷区、荒川区、江戸川区 、中央区で大きく上昇しており、また「賃貸用の空き家」率では、港区、墨田区、渋谷区、中野区、豊島区で上昇している傾向がみてとれる。

  • 東京23区別の空き家率

そこで、空き家増加の実態をよりみえやすくするため、X軸をその他空き家、Y軸を賃貸用の空き家の実数とする2003年・2023年のプロット図を描いて比較してみると、多くの区で「その他空き家」、「賃貸用の空き家」とも増加している状況がみてとれるが、とくに世田谷区・足立区・板橋区・大田区・練馬区では「その他空き家」「賃貸用の空き家」の両方が、江戸川区・台東区・江東区では「その他空き家」が、新宿区・豊島区・杉並区・中野区・葛飾区では「賃貸用の空き家」の実数が、特別区部平均値を超えて増えてきていることが分かる。

  • 東京23区・空き家数プロット図(2003年)

  • 東京23区・空き家数プロット図(2023年)

ここまでみたように、都区部では空き家率が横ばい傾向で推移し、「その他空き家」率も全国で最も低いことから、それほど深刻には捉えられていない状況があった。しかしながら、都内においては、もともと住宅ストック量(総住宅数)が膨大で、新規供給も旺盛なため、空き家の実数そのものが多く、着実に増加している。

同調査では「さらに、都内に住む団塊の世代を含めた居住者が高齢化するに従い、空き家数は爆発的に増えることも予想される。こうした空き家が無駄に眠る資源とならないように、いかに活用し、バリューアップや再開発に繋げていくかが今後ますます重要になっていくと考えられる」としている。