千歳市及び近隣地域の介護事業所が参加する「第7回ちとせ介護グランプリ」は、サブタイトルに「~笑撃と感動、エンタメでつくるカイゴのミライ~」を掲げています。
介護とエンタメはかけ離れた印象ですが、このイベントがどのような内容なのか探ってみました。
クイズとプレゼンで介護の魅力を発信
NPO法人「ちとせの介護医療連携の会」が12月7日、介護技術の向上や事業者同士の連携を目的に「ちとせ介護グランプリ」を北ガス文化ホールで開催しました。
もともと介護技術を中心に「ちとせげんきグランプリ」として2017年開催し、第2回からは「ちとせ介護グランプリ」と名称を変更。
コロナ禍は一時中止するも、2023年に復活して、親しみやすく介護の知識が増えるクイズ形式にリニューアルされました。
今回の大会には、千歳や北広島、札幌の介護施設などの11事業所から17チーム・計34名が参加。
なお、「介護施設」とひとくちにいっても、その施設の種類や機能はさまざまです。
例えば、特別養護老人ホームは、常時介護が必要な高齢者が日常生活の世話や介護、機能訓練、健康管理などを受ける施設です。
一方、グループホームは認知症のある高齢者が少人数で共同生活を送る場所です。このほか、有料老人ホーム、ケアホーム、通所型のデイサービスなどがあり、施設ごとに職員の仕事内容も少しずつ異なります。
プレゼン王決定戦「わたしの職場自慢」
開会式の後には、全チームが「わたしの職場自慢」をテーマにプレゼンテーション王決定戦を繰り広げました。
制限時間は120秒。短い時間の中で、何をどのようにアピールするかが大切です。
審査基準は内容、独自性、熱意などで、病院長や介護新聞記者、介護福祉学校の校長など5名が審査員を務めます。
最初に登壇したのは、グループホームで勤務するチーム。ミャンマー出身の介護職員が、日本で働き始めた理由や職場の働きやすさ、そして帰国後の目標について語り、その熱い思いに会場全体の熱気も上がります。
昔話をアレンジして職場紹介をするチームや、異業種からの転職者が多く活気あふれる職場を紹介するチームなど、オリジナリティに富んだプレゼンが続きました。
ひときわ会場に笑いを巻き起こしたのは、「食事介助をすると自分の口も開いている」や「夜勤明けで自宅の玄関をノックしてしまう」など介護あるあるを盛り込んだチームでした。
介護クイズ王決定戦は予選から白熱
本大会に先立ち、参加した17チームによる予選が行われました。
クイズは選択・早押し・動画問題の3形式で、「福祉タクシーを利用できる人は?」「カンフォータブル・ケアとは?」「介護保険外サービスで急増しているサービス内容は?」など幅広く出題され、正解数の多い4チームが決勝に進出。
決勝戦では、介護福祉用具を取り扱う企業で最新の介護ロボットや見守りロボット等を紹介しながら、その特長等が出題されました。
介護のオンライン請求が始まった時期や、若者ケアラーとヤングケアラーの年齢、事例問題など、実務を意識した介護知識を競う内容となりました。
「カンフォータブル・ケア」とは認知症者が心地よいと感じる刺激を提供することで認知症周辺症状を軽減するためのケア技術です。
「ケアラー」とはケアの必要な家族や近親者などを無償でケアする人を指し、18歳以下がヤングケアラー、18~30代までは若者ケアラーと呼ばれます。
介護に関する知識がない人でも、クイズの解答後に丁寧な解説があるため、楽しみながら知識を深めることができました。
第7回の介護グランプリはどのチームに!?
プレゼンテーション王に輝いたのは、千歳豊友会病院に勤務する社会福祉士の柳原朱李さんと理学療法士の川越宏亮さんによるチーム登山家です。
病院で行っている介護予防教室でのフレイル予防の体操の紹介、地域の健康づくりと介護予防を広めるために「千歳ウォーキングの会」を立ち上げたエピソードを語りました。
介護クイズ王の栄冠を手にしたのは、訪問看護ステーションライフ札幌に勤務する看護師の浅井清香さんと理学療法士の武藤拓郎さんによる「チームA&M」。
ふだんから多職種と連携していい仕事をしているのが伝わってくるほど、抜群のチームワークが際立っていました。
大会MVPに選ばれたのは、有料老人ホームりんごハウスの介護福祉士 岩佐彰浩さんと成田郁子さんによる「チームりんご」です。
岩佐さんが利用者とともに楽しむぬり絵にハマって、絵を描くのが趣味となり、手書きのイラストで利用者さんとのふれあいを紹介したプレゼンが印象的でした。
第7回介護グランプリの総合優勝を飾ったのは、介護クイズ王も獲得した「チームA&M」、そしてSONPOケアの管理者である山下直樹さんと水口翔太さんによる「ソンポハチャム」です。
「介護という仕事においては、表彰される機会はなかなかありません。でも、このような形で認めていただけて、今までやってきてよかったです」と、受賞の喜びを語りました。
介護現場で楽しく誇りをもって仕事をしてもらいたい
本大会後、主催のNPO法人「ちとせの介護医療連携の会」で相談員として務める坂本大輔さんにお話をうかがいました。
――このグランプリ開催への思いを教えてください。
坂本:地域の方々に親しみやすく、分かりやすく介護の知識を知っていただきたいと思っています。同時に出場者・関係者・来場者全員でグランプリを盛り上げ、楽しみ、笑顔になっていただきたい。そして、介護の現場で楽しく誇りをもって仕事をしてもらいたいという気持ちで企画・運営しています。
――介護の仕事はどのように考えていますか?
坂本:介護という仕事は、最終的には人と人とのつながりや思いやりが重要で、どんなに技術が発達しても、介護の仕事の中心は「人」。支援が必要になっても、できるだけ今まで通りの生活を安心して送れるようにする。そうした「当たり前を可能にするための支援」を提供するプロフェッショナルの仕事だと考えています。
――今年の総括と今後の展望も教えてください。
坂本:今年は多くの関係者の方々に支えられ、過去最大規模の出場チーム数(出場者)での開催ができました。今後もさまざまな地域・世代の方々と一緒にグランプリを作り上げていきたいです。また関わるすべての方々が笑顔で参加でき、一人でも多くのミライの介護の担い手に介護の魅力を伝えられるような大会を目指していきます。
サブタイトル通り、笑いあり、感動ありのイベントでした。
介護の最新事情も学びながら、愉快で楽しい介護職員たちの姿に触れると、「介護っておもしろい仕事なのかもしれない」と感じさせられました。これからも介護の魅力をどんどん発信してほしいですね。