サントリーは12月24日、2025年の国内酒類事業方針・ビール事業方針に関する会見を実施。ノンアル部の新設や大阪・関西万博に向けた取り組みなどについて発表するとともに、ビール事業の戦略として"ビールとエコノミーの両輪"を掲げた。
2030年に国内酒類売上高1兆円を目指す
サントリーは2024年12月24日、東京都港区のサントリーホールにおいて、2025年の「酒類事業方針・ビール事業方針」に関する発表会見を行った。例年は年明けに行われるが、2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)に向けた取り組みについて触れるために異例の年内開催となった。
国内におけるサントリーの2024年酒類売上は、2023年比105%見込みと非常に好調だ。コロナ禍の影響を受け低迷した酒類市場規模は着実な回復基調にある。2025年の売上計画では、2024年比105%を目指すという。
2025年3月にサントリーホールディングスの代表取締役社長となる鳥井信宏氏は「今後も酒類市場を成長させることは、国内酒類のリーディングカンパニーである我々の大きな役割だと思っております」と語るとともに、「2030年に国内酒類売上高1兆円(※内部管理ベース)を目指し、もっとも信頼され、愛される会社になる」という方針を明らかにした。
ものづくり品質が世界で認められた2024年
サントリーは事業成長にとって美味追求・品質向上がもっとも重要な活動と捉え、2023年からの3年間で300億円規模の成長投資を行う。
こういった継続的な活動によって2024年は、インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ 2024では「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎12年」がシュプリームチャンピオンスピリットを受賞。デキャンター・ワールド・ワイン・アワード 2024においては「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」が最高位の賞であるBEST IN SHOWを受賞。その"ものづくり品質"が世界から高い評価を受けた年となった。
ノンアル統合組織「ノンアル部」の新設
サントリーは2025年、持続的な事業成長を見据えた新たな挑戦を進める。大きな柱は「ポートフォリオ強化」「サステナビリティと酒類文化伝承」「大阪・関西万博」の3つだ。
同社は幅広いポートフォリオを有するが、その中でもノンアルコール飲料の需要に注目。2025年1月に機能性表示食品の新商品「のんある酒場レモンサワー+(プラス) ノンアルコール」を発売するとともに、4月に新たな需要を喚起する新商品、秋にお酒の本格感を追求した新商品の発売を予定しているという。
こうしたノンアルコール飲料への取り組みをより加速していくため、これまでビール本部、スピリッツ本部、ワイン本部などに分散していたノンアル担当を集約し、2025年1月より「ノンアル部」を新設する。これは「カテゴリからものをつくるのではなく、お客さま視点でものをつくる」ためだという。
サントリーは、環境負荷削減だけではなく、酒文化の伝承も重要なサステナビリティ活動であると捉え、さまざまな活動を行っている。その例として「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」に真摯に向き合っていること、適正飲酒の大切さとお酒の魅力を伝える「ドリンクスマイル」の活動を2025年1月から開始することを伝えた。
大阪・関西万博に向けた取り組み
サントリーグループがプラチナパートナーを務める大阪・関西万博では、「水と生きる」というメッセージを掲げ、水上ショーなどを実施する。また持続可能な未来の実現に向け、環境負荷の少ない商品の開発を行っている。
ひとつは、原料以来のGHG排出量削減に向けて再生農業原料(麦芽・ホップ)を使用したビール「水空エール」。もうひとつは、ガラス製造時のCO2排出量を抑えた"CO2削減びん"を使ったワイン「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 赤 時のかさね」と「SUNTORY FROM FARM 信州 シンフォニー 2023」だ。
「水空エール」は大阪・関西万博の会場内レストランで限定販売され、CO2削減びんを使用したワイン2種は会場内レストランのほか、一部の国内空港免税店で販売を予定している。
さらに、新たな商品開発モデルへの挑戦として、4月に消費者参加型の「ワールドKANPAIビール」を実施し、万博会場や工場・イベント等で限定発売する。
ベースとなる商品を購入した消費者は、専用サイトで「香り」「苦味」「後味」「刺激(炭酸)の強さ」などの好みの味わいを入力。これによって世界中の嗜好を集約する。このデータをもとにサントリーが商品を開発し、9月に「ワールドKANPAIビール」を数量限定販売するという取り組みだ。
2025年の活動方針は「ビール・エコノミー両輪」
続いてサントリー 常務執行役員 ビール本部長の多田寅氏がビール事業について語る。サントリーの2024年ビール事業販売実績は、ビール類計では2023年比97%だが、「ビール」カテゴリに限ると104%となる予定だ。これは「サントリー生ビール」が645万ケースを達成し、2023年比162%に着地する見込みであることが大きい。
一方、「エコノミー(発泡酒+新ジャンル)」カテゴリの「金麦」ブランドは2023年比93%を見込んでいる。2020年から進められている酒税法改正以降、「エコノミー」カテゴリーの商品は苦戦を強いられており、今後の改正と合わせ「ビール」カテゴリの伸びは続くと予想される。
とはいえ、消費の二極化・健康意識の高まりによって多様なニーズも顕在化しており、一定以上の市場は残ると多田氏は予測。2025年の活動方針を「ビール・エコノミー両輪」とする。
純粋な"生ビール"を想起させた「サン生」ブランド
「ビール」カテゴリを牽引した「サントリー生ビール」は、業務用の瓶・樽取扱店が2万店を突破し、消費者接点を増やし続けている。
2025年は“生ビール”らしさの強化、"生ビール"訴求の強化を行うとともに、瓶・樽取扱店2.5万点を目標とし、2027年に1,000万ケースブランドの実現を目指す。12月より順次デザイン・中味のリニューアルが進められており、ブランド名をより強調することで認知の強化を図る。
「ザ・プレミアム・モルツ」は、引き続きプレミアムビールとしてのポジション獲得を進める。こちらも12月より順次リニューアルが進められており、「THE」を象徴的にあしらった新しいプレモルロゴが採用された。
「マスターズドリーム」は高価格帯商品としての独自価値強化に努める。"夢"の字を大きくあしらい墨黒と金色で高級感を演出したデザインを12月下旬より展開するとともに、マスターズドリームならではの接点拡大を進める。
金麦<晩酌サワー>を4月8日に発売、金麦第4の柱に
「エコノミー」カテゴリの「金麦」ブランドは、これまでも好評を博してきた"日常的に家で飲むのに一番ふさわしいビール類"のポジション確立を目指す。
1月に「金麦」「金麦〈ザ・ラガー〉」「金麦〈糖質75%オフ〉」3種のデザインを12月より順次リニューアル。ロゴを大幅刷新し、左右非対称で麦穂の中にすべての情報を詰め込むという、ビール類ではめずらしいデザインを採用した。
2024年に限定販売された金麦サワーは、「金麦〈晩酌サワー〉」として2025年4月8日に新発売を予定している。サントリーはこれを"金麦第4の柱"として育成したいとし、「サントリー生ビール」発売時並みの広告を大規模・集中投入。新たな食中酒として需要拡大を狙う。
多田氏は最後に「『サントリー生ビール』『金麦』、それとノンアルコール飲料をしっかりとやっていきながら、市場を少しでも活性化できるように貢献していきたいとに考えております。来年も多大なるご支援をよろしくお願いします」とまとめた。