突然の発熱、咳、のどの痛み、胃腸の不調など、年末年始に多い体調不良。医療機関が休診で受診が難しい中、頼りになるのが市販薬です。しかし、薬局やドラッグストアに行くと種類が多すぎて迷ってしまうことも……。そこで今回は、ナビタスクリニック内科医の山本佳奈先生の監修のもと、症状別に市販薬の選び方を分かりやすく解説。急な体調不良でも慌てず、自分に合った薬を選んで賢く対処しましょう。健康的な新年を迎えるためのヒントをお届けします!
■風邪症状の対処法
風邪薬では、総合風邪薬の他、発熱、咳、のどの痛みに合わせた市販薬が販売されています。症状に合った成分を知ることで、より効果的に風邪に対処することができます。
■発熱・頭痛
発熱や頭痛が主な症状の場合、解熱作用や鎮痛作用がある市販薬を選ぶとよいでしょう。以下のような成分を含む商品を選ぶのがポイントです。
・アセトアミノフェン
効果:発熱や頭痛の両方に効果的。胃への負担が少なく、幅広い年齢層に使用できる。
特徴:軽度から中程度の痛みや熱に最適。妊娠中の服用でも比較的安全とされている。
市販薬の例:タイレノールA(アリナミン製薬)、ラックル(日本臓器製薬)、カロナールA(第一三共ヘルスケア)
・イブプロフェン
効果:解熱作用に加え、抗炎症作用があるため、炎症を伴う頭痛(副鼻腔炎やのどの炎症など)にも効果的。
特徴:発熱と頭痛の両方が強い場合に適している。ただし胃腸に負担をかけやすいので、胃が弱い人には注意が必要。
市販薬の例:リングルアイビー(佐藤製薬)、イブA錠(エスエス製薬)、
・ロキソプロフェン
効果:即効性が高く、発熱と頭痛を早く抑えたい場合に適している。
特徴:飲みやすい錠剤が多く、効果が持続する。ただし胃腸が弱い人や空腹時は避ける。
市販薬の例:ロキソニンS(第一三共ヘルスケア)
■咳
咳の症状がある場合は、咳止めや痰の排出を助ける薬を選ぶといいでしょう。また、スプレータイプやドリンクタイプなど局所的に使用できる薬を選ぶのもポイントです。
乾いた咳(空咳)
痰が絡まない乾いた咳や、コンコンと咳が出る症状には鎮咳成分のデキストロメトロファンを含む市販薬を選びます。即効性を重視する場合は液体タイプもおすすめです。
市販薬の例:パブロンせき止め液(大正製薬)、新コンタックせき止め液Wアタック(グラクソ・スミスクライン)
痰が絡む咳
痰が絡む場合は、痰を出しやすくする成分のグアイフェネシンや、痰の切れを促すカルボシステインなどの成分が入った薬を選ぶといいでしょう。
市販薬の例:新ブロン液エース(エスエス製薬)、ストナ去たんカプセル(佐藤製薬)
■のどの痛み
のどの痛みには、腫れを抑える抗炎症作用であるトラネキサム酸や痛みを和らげる鎮痛作用のあるものを選びましょう。即効性を求めるならスプレータイプ、持続性を求めるならトローチを選ぶのがポイントです。
市販薬の例:ペラックT錠(第一三共ヘルスケア)、パブロンのどスプレー365(大正製薬)
■複数の風邪症状がある場合
発熱、咳、のどの痛みなど複数の症状がある場合は、さまざまな成分が配合された「総合感冒薬」「総合風邪薬」とされる商品を選ぶといいでしょう。
市販薬の例:新ルルAゴールドDXα(第一三共ヘルスケア)、パブロンSゴールドW(大正製薬)
■胃腸の不調
「胃がムカムカする」「お腹が張る」「食べすぎて胃もたれ…」そんな胃腸の不調には、整腸剤や症状に合わせた胃腸薬を選ぶのがポイントです。普段から胃腸の調子が悪くなりやすい人は、常備薬として自分に合った薬を見つけておくとよいでしょう。
■食べすぎ・胃もたれ
食べすぎや胃もたれは、胃腸の消化機能が低下する場合によく見られます。消化を助けるリパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼなどの消化酵素や、胃酸のバランスを整える成分が入った薬を選ぶといいでしょう。
市販薬の例::ガスター10(第一三共ヘルスケア)、大正漢方胃腸薬(大正製薬)、キャベジンコーワS(興和)
■下痢、お腹がゆるい
冷えや食べすぎ、生活習慣の乱れなど様々な原因で起こる下痢。突発的な下痢には即効性のあるものを、生活習慣の乱れによる下痢には整腸作用があるものを選ぶといいでしょう。
市販薬の例:ストッパ下痢止めEX(ライオン製薬)、正露丸(大幸薬品)、トメダインコーワ錠(興和)
■便秘
暴飲暴食や、食物繊維の不足などで年末年始は便秘になりやすいタイミング。便を柔らかくする作用がある酸化マグネシウムや、ビサコジルを含む製品を選ぶと良いでしょう。腸を刺激する成分は、連続使用すると依存性が生じる可能性があるため、必要時のみ使用するのがポイントです。
市販薬の例:酸化マグネシウムE便秘薬(健栄製薬)、コーラックII(大正製薬)、スルーラックS(エスエス製薬)
■自分に合った市販薬を選ぶには?
市販薬を服用する前に説明書をよく読み、用法・用量・内服のタイミングを正しく守って使用することが大切です。 自分に合った市販薬がよく分からない場合はもちろん、持病をお持ちの方、現在内服している薬のある方、アレルギー歴や副作用歴のある方、妊娠中や授乳中の方、ご高齢の方や子供向けの薬を購入したい方は、薬剤師さんに相談してから購入することを強くお勧めします。(山本佳奈先生)
■病院受診のポイントと年末年始への備え
市販薬は一時的な症状緩和に役立つものですが、症状が長引いたり、重症化した場合は医師に相談することが大切です。激しい頭痛や吐き気、意識がもうろうとするなどの症状を伴う場合や、高熱(38.5℃以上)が3日以上続く場合、頻繁に嘔吐し食事や水分を受け付けない場合などは、無理に市販薬で対処せず病院を受診するといいでしょう。
また、手足のしびれを伴うめまいや突然の激しい頭痛、息苦しさがあり息をするたびにゼーゼー音がする、全身に発疹やむくみ、顔や手足が異常に腫れるなどの激しい症状がみられる場合は、救急相談センター(#7119)への相談や夜間・休日診療所を受診するなど早めに対処することが大切です。
年末年始に向け、風邪薬、胃腸薬、解熱鎮痛剤、整腸剤など、基本的な常備薬を用意しておく、年末年始でも診療している医療機関をリサーチし家族で共有しておくなど、家庭でできることを備えておきましょう。
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