イギリス生まれ、インド生産のブランド「ロイヤルエンフィールド」は、どんなバイクを作っているのか。バイク大国・日本のライダーにとって、あえてロイヤルエンフィールドを選ぶ意味はあるのか。代表作「クラシック350」に乗って同ブランドの魅力を探った。

  • ロイヤルエンフィールド「クラシック350」

    ロイヤルエンフィールドのバイクとは? 代表作「クラシック350」に試乗!

世界最古なのにインド製? その秘密とは

同じ外国車でも、クルマとバイクとではいろいろと違うところがある。そのひとつが登録台数上位のブランドの顔ぶれだ。クルマはメルセデス・ベンツを筆頭に4位までをドイツ勢が占め、5位のミニも英国車ではあるがBMWが開発し、ドイツで生産する車種もある。

一方のバイクは、日本自動車輸入組合(JAIA)が発表した2024年4~9月の輸入小型二輪車(251cc以上)の新規登録台数で見ると、1位が米国のハーレーダビッドソン、2位がドイツのBMW、3位が英国のトライアンフ、4位がイタリアのドゥカティと、主要生産国がきれいに分かれている。

そしてランキングの5位に入っているのがロイヤルエンフィールドだ。このブランド、発祥の地は英国だが、現在はインドでバイクを生産をしている。登録台数は昨年同時期に比べると123%に増えており、伸び盛りのブランドと言える。

  • ロイヤルエンフィールド「クラシック350」

    ロイヤルエンフィールドは日本で人気上昇中(写真はアクセサリーパーツを装着したボディカラー「エメラルド」の「クラシック350」)

バイクを作り始めたのは1901年。つまり、現在日本で買えるバイクでは世界最古のブランドになる。第二次世界大戦後にインドに生産拠点を構えると、こちらが主力になり、英国工場は閉鎖。1990年代にはインドの商用車メーカー「アイシャー」のグループに入った。

しかし21世紀に入ると、レース用フレームの製作で定評のあった英国のハリスパフォーマンスを買収し、研究開発施設を設けるなど、両国の得意分野を併せ持つ組織になっている。

そのロイヤルエンフィールドが最近、日本で人気を集めているのは、クラシカルなブリティッシュバイクの雰囲気を残したデザインと走り、そしてアジアの嗜好性に合わせた中排気量の車種が多いことが理由だろう。とりわけ、我が国では普通二輪免許で運転できる350ccの車種が4車種と充実していて、日本での販売の7割を占めているという。

1950年代のデザインと最新技術が融合

ラインアップの中核に位置するのが、マイナーチェンジを実施したばかりの「クラシック350」というバイクだ。12月12日に発売となった同モデルに、東京都港区で行われた試乗会で乗ってきた。

外観は1950年発表の「G2」がモチーフ。直立した空冷単気筒エンジンだけでなく、スタイリングも雰囲気を継承している。個人的には三角形のサイドカバー、2分割のシートなどが効いていると思った。

  • ロイヤルエンフィールド「クラシック350」

    デザインのモチーフとなった「G2」

そのうえで新型は、LEDヘッドランプ/パイロットランプ、ギアポジションインジケーター、USBタイプCコネクターを装備。上級車種にはスマートフォンアプリ連動の簡易型ナビ「トリッパー」を装備するとともに、ブレーキとクラッチのレバーが調整可能になった。

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    アナログ式速度系とデジタルディスプレイを融合

ボディカラーが多彩なのもポイント。試乗した「ヘリテージシリーズ」はレッドとブルーがあり、他に「ヘリテージプレミアムシリーズ」のブロンズ、「シグナルズシリーズ」のサンド、「ダークシリーズ」のグレーとブラック、「クロームシリーズ」のエメラルドと7色もある。

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    多彩な品ぞろえのボディカラーも「クラシック350」の特徴だ

試乗会場にはすべての色がそろっていて、ビンテージ風からミリタリー風まで、多彩なライフスタイルに合わせて選ぶことができることを確認した。これもまたクラシック350の魅力のひとつだろう。

クラシック350のライバルを挙げるとすると、同じインド製のホンダ「GB350」、トライアンフ「スピード400」あたりになりそうだ。クラシック350の全長は2,145mm、ホイールベースは1,390mmで、GB350とスピード400の中間に位置する。195kgの車両重量は2台より20kg前後重い。これは、前後フェンダーをスティール製にするなど、質感を重視した作りによるところが大きい。

実際のところ、見た目のクオリティは350ccとは思えないほど高い。でも取り回しに不安はないし、足つきは身長170cmの筆者なら両足のかかとが少し浮くぐらい。片足ならべったり着くので安心だ。

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    見た目のクオリティは350ccとは思えないほど高い

ライディングポジションは上半身がわずかに前傾になり、ステップは曲げたひざの真下あたりにある。都市や郊外をゆったり流して乗るのにちょうどいいと思った。

2024年らしからぬ鼓動と音にほっこり

単気筒350ccエンジンは最高出力14.9kW/6,100rpm、最大トルク27Nm/4,000rpmと控えめなスペックだが、走り出すと空冷単気筒の鼓動と排気音がとにかく歯切れ良くて、レスポンスは穏やか。リズムを味わいながらゆったり走ろうという気持ちになる。

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    今では希少になった空冷単気筒エンジン。歯切れ良いサウンドは必聴だ

力不足というわけではなく、東京都心の一般道なら流れを楽にリードできるのだが、力が適度なのでスロットルを大きく開ける機会がしばしばあり、そのときに例の鼓動と音を満喫できるので、むしろ好都合だ。

5速のトランスミッションはリターン式ながら、シーソー式ペダルなので、つま先の甲を使わず、かかとを使ってシフトアップできる。シューズやブーツの選択肢が増えそうだ。

乗り心地は大きくて分厚いシートのおかげもあって快適。それでいてフレームの剛性感は高く、重めの車体も相まって、走りはとても安定していて、安心して操れた。

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    大きくて分厚いシートは座り心地良好

旧いクルマやバイクに憧れる人は多いけれど、実際に所有するとなると、故障が心配だったりするだろう。その点、ロイヤルエンフィールドのクラシック350は、名前のとおりの見た目や加速感を新車ならではの安心感や安定感の中で味わえる。

しかも、上級車種を思わせる高級感を漂わせながら、価格は69.41万円からと手が届きやすい。インド製であることはまったく意識しなかった。このクラスのバイクが気になるという人は、ロイヤルエンフィールドという名前は覚えておいたほうがいいだろう。