キャッシュレス決済サービス「PayPay」を使った寺社での"お賽銭"がスタートした。2024年12月末までに全国7カ所で利用可能で、愛知県名古屋市の「名古屋別院(東別院)」、東京都港区の「増上寺」ではすでに利用が開始されている。

  • 浄土宗大本山 増上寺でキャッシュレス決済サービス「PayPay」による"お賽銭"が可能に

12月末までに全国7カ所の神社・寺院が対応

PayPayは2024年12月23日、東京都港区の浄土宗大本山 増上寺にて、QRコードを利用したキャッシュレス決済サービス「PayPay」が神社・寺院で利用できるようになると発表した。

  • 浄土宗大本山 増上寺

PayPayは2024年8月、寄附団体や寄附サービスを運営する企業が、キャッシュレス決済サービス「PayPay」の法人向けビジネスアカウントを作り寄付を募れる仕組みを開始した。さらに2024年11月には国立大学法人および学校法人への寄付で「PayPay」が利用可能となっている。

今回の賽銭への対応は、新年の初詣、節分、合格祈願などでの需要の高まりに備え、混雑緩和を目指したもの。また参拝客にキャッシュレス決済を利用してもらうことで、寺社側は現金を回収したり、銀行へ振り込んだりする手間を省きつつ、同時に盗難などのリスクを軽減することができる。

すでに愛知県名古屋市の真宗大谷派 名古屋別院(東別院)では利用がスタートしており、12月末までに全国7カ所の寺社で導入される予定だ。

2024年12月末までの導入予定一覧(五十音順)

  • 稲毛神社 (神奈川県川崎市)
  • 熊野若王子神社 (京都府京都市)
  • 浄土宗大本山 増上寺 (東京都港区)【導入済み】
  • 和宗総本山 四天王寺 (大阪府大阪市)
  • 法華宗大本山 本能寺 (京都府京都市)
  • 天恩山 五百羅漢寺 (東京都目黒区)
  • 真宗大谷派 名古屋別院(東別院)(愛知県名古屋市)【導入済み】

「PayPay」で賽銭を納める方法

賽銭にキャッシュレス決済を利用する場合は、敷地内に設置されている「PayPay」のQRコードを参拝客が自分で読み取り、納める金額を入力し、「お気持ちを送る」ボタンを押すことで送金が行われる。

なお、賽銭利用には本人確認(eKYC)が完了している必要があるほか、利用できるのは「PayPayマネー」のみで「PayPayマネーライト」は利用できない。また「PayPayポイント」付与および「PayPayステップ」は対象外となる。

  • 「PayPay」でお賽銭を納める流れ

  • 「PayPay」での支払い画面の変遷

浄土宗大本山 増上寺において「PayPay」による"お賽銭"に対応しているのは「大殿」と「安国殿」の2カ所。大殿では賽銭箱の前と左右の柱の3カ所に、安国殿では賽銭箱の前と左右の扉の3カ所にQRコードが掲示されている。送金後には専用イラスト全5種のうち1枚がランダムで表示されるので、こちらも注目してほしい。

  • 浄土宗大本山 増上寺 大殿

  • 浄土宗大本山 増上寺 大殿の賽銭箱前にQRコードをひとつ掲示

  • 浄土宗大本山 増上寺 大殿の左右の柱にQRコードをひとつずつ掲示

  • 浄土宗大本山 増上寺 安国殿

  • 浄土宗大本山 増上寺 安国殿の賽銭箱前にQRコードをひとつ掲示

  • 浄土宗大本山 増上寺 安国殿の左右の扉にQRコードをひとつずつ掲示

導入のきっかけは「PayPay」で収める賽銭が非課税と認められたこと

浄土宗大本山 増上寺 参拝部部長の武智公栄氏は「昨今、小銭を持ち歩かない方が大変増えております。日本の方も海外の方も、カード決済やキャッシュレス決済が当たり前になりました。まずは『PayPay』を導入させていただき、お支払いの選択肢を増やしていく試みです」と、その目的について話す。

  • 浄土宗大本山 増上寺 参拝部部長 武智公栄 氏

導入に踏み切った理由のひとつは「PayPay」で収められる賽銭が非課税と認められたこと。もうひとつは「PayPay」と「Alipay」がサービス連携しており、中国からの参拝客も決済ができるようになることだという。また「PayPay」の利用状況を通じて、参拝客の動向調査や今後のサービス改善に繋げたいとする。

なお、浄土宗大本山 増上寺の売店ではすでにクレジットカードや電子マネー、交通系ICカードといったキャッシュレス決済に対応済みだ。

  • 浄土宗大本山 増上寺 安国殿にある売店の様子

賽銭を現金以外で収めるというと、日本人の中には文化的・宗教的に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれない。これに対し武智氏は、自身の考えを次のように語る。

「お賽銭の中にはいろいろな意味があります。もともとはお米から始まって、季節に関わらず供養の形となりました。また『喜捨をすることで徳を積む』という側面もあります。人それぞれの気持ちの持ちようではございますけれども、希望を込めてお賽銭をする、その気持ちは『PayPay』であっても変わらないのかなと思います」(武智氏)

また「PayPay」の決済音については、「例えばお寺であれば『南無南無』みたいな音に変えるような技術ができるのではないかなと思ったりはしますが、『PayPay』はいまや商店でも耳にするわけですから、それが日常になれば自然に感じるようになるのではないかなと思いますね」と話した。

キャッシュレス決済は年々利用率が上昇しており、現金を持ち歩かずにスマートフォンだけで外出する人は着実に増えている。PayPayはキャッシュレスを利用できる環境をさらに拡大し、「PayPay」を現金のようにどこでも使えるサービスにすべく、邁進している。

2025年の初詣で、もし「PayPay」が利用できる寺社に参拝するのであれば、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。