日産自動車は「東京オートサロン2025」(1月10~12日、幕張メッセ)に出展する車両の一部を公開した。“Chill(チル)”をテーマに新旧の「エクストレイル」をカスタムした「X-TRAIL remastered concept」「X-TRAIL unwind concept」と「キャラバン」のカスタムカー第5弾「DISASTER SUPPORT SPEC.」の3台だ。実物を見てきた。
チルってる? 新旧エクストレイルはどう変わったのか
「X-TRAIL remastered concept」は先代の2017年式「X-TRAIL 20Xi」(T32型、走行距離4.4万km)をベースとするカスタマイズモデルだ。「キューブ」「マーチ」に続く中古車カスタマイズの第3弾となる。
車内はアナログレコードを楽しめる空間を演出。新たな中古車の楽しみ方を提案している。リアラゲッジの「2」の形をした棚の上段には「オーディオテクニカ」とコラボしたオーディオセットを設置。ブラックで統一したアナログオーディオセットのいで立ちは明るいカラーのウッドの棚と対照的で、相互が引き立つような関係になっている。
このオーディオセットに電力を供給するのは、棚の下段にセットした「ポータブルバッテリーfrom LEAF」だ。家庭用交流電源を圧倒するほどの正確な波形を描く電気を発生するため、オーディオの音をより美しくすることができるのだという。
実際にレコードをかけて聞いてみると、優しいアナログの音に魅了された。クルマに素敵なオーディオセットを積むことの最大の利点は、出先で好きな音楽が楽しめること。この音質の音楽を大自然の中で聞くことができるとなると、もうマニアにとっては垂涎ものといっていいほどだ。
ボディカラーは草木に溶け込むメタリックグリーンにメタリックゴールドの下回りというローコントラストの組み合わせ。最近では、こうした色使いは単純なマットブラックよりプレミアム感があるという。サイドストライプの三角形部分は連なる山々や音楽の波形を表現したピクトグラムで、オーディオテクニカのロゴとの親和性も考慮されている。
ちなみに、車名の「リマスタード」はアナログレコードの「復刻版」としてお馴染みの言葉だ。クルマ自体も中古車を回収して魅力を上げたカスタムモデルなので、ある意味では「復刻版」といえる。
もう1台の「X-TRAIL unwind concept」は「e-POWER」を搭載した現行「X-TRAIL Gグレード」(T33型)をベースにカスタマイズしたもの。テラスを載せたトレーラーを牽引し、インドアとアウトドアの境界を超えて本格エスプレッソを嗜むことを想定したクルマなのだという。
「5」の形をした棚の下段にはエスプレッソマシンを設置。最も古いエスプレッソマシンメーカーとして知られるイタリアの「ランチリオ」社(1927年創業)製だ。具体的には1997年から製造が続く家庭用のエスプレッソマシンで、最新式の全自動マシンにはない魅力がプンプン。1,000Wの同マシンと249Wのコーヒーグラインダーを作動させるのは、X-TRAIL e-POWERが搭載する1,500WのAC電源だ。
ボディカラーは「リマスタード」と上下が逆。エスプレッソの色に近いゴールドがメインとなっている。Dピラーの「拳」を模したエンブレムは両車共通だ。
トレーラーに設置したデッキは、「パラメトリティ」と呼ばれるスリットのある立体的なテラスとなっている。明るいウッドで作られていて解放感は抜群だ。断面は自然界のさまざまな場面で見られるサインカーブの形状になっており、山や砂丘、波といった自然を連想させるだけでなく、ラゲッジから供給する交流電流の正弦波も表現している。クッションやテーブル、ランタンなどを自由な位置に配置できるので、座ったり寝転がったりとくつろぎ方はユーザー次第だ。
“備える“キャラバン「DISASTER SUPPORT SPEC.」
2021年から続くキャラバンのカスタム企画第5弾となるのが、“備える“キャラバンの「DISASTER SUPPORT SPEC.」だ。普段は日常使いしている車両で、災害などいざという時にはサポート車両として現場の支援に向かうことができるというのがコンセプトである。
架装しているのは実売を見据えた商品のみ。改造の規模感は一般の人でも手が届く範囲とした。2024年1月の東京オートサロンに出品した「Disaster Support Mobil-Hub」を見た企業や自治体からの声を反映し、さらに進化させた車両だ。
想定したのは、本社の支援部隊2名が現地入りし、被災した支店の活動再開をサポートするという状況。ホテルが稼働していなくても車内で食事や寝泊まり、事務作業などを行うことができて、通信、電気が復旧していない状況でもネットをつなげて情報収集や会議が行える仕立てとしてある。
機能としては、車外に展開可能なスライド棚を装備していて臨時のオフィス空間としても使える2nd座席部、展開すれば就寝用ベッドになるポータブルバッテリー収納棚、低抵抗素材を使用した床面を備えたラゲッジ部、角度調整可能なソーラーパネルとStarlink通信アンテナの固定具を備えたルーフ部、情報発信が可能なスライドドアガラスのサイネージモニタ、スマートフォンの充電、着替えが可能な折りたたみ個室などを搭載。電気が必要なアイテムはポータブルバッテリーfrom LEAFで駆動することができる。
ベース車両は「キャラバン プレミアムGX」のディーゼル4WD仕様。ボディはプロテクション塗装やマットフィルム、オーバーフェンダーなどで仕上げているが、現行のものであれば中古車でも実現可能となっている。また、これらの装備や搭載物を下ろせば、日常使いが可能になるという。