FIDO(ファイド)アライアンスは12月12日、都内で第11回となるFIDO東京セミナーを開催し、それに合わせて同アライアンスの取り組みを紹介する記者説明会を開催した。
「パスキー」の導入が始まって2年、認知・利用は大きく広がった
FIDOアライアンスは2012年7月に設立された、パスワードレスのオンライン認証の標準化・普及を行う業界団体。「FIDO」は「高速なオンラインID認証」を意味する「Fast IDentity Online」の略だ。ボードメンバーにはGoogle/Amazon/Meta/Apple/Microsoftといったプラットフォーマー、Intel/Qualcomm/Ciscoといったハードウェアベンダー、金融業界からVisa/MasterCard/Bank of Americaなどが名を連ね、IDセキュリティや身体認証を専門とする企業も参加している。
「このボードメンバーの構成は全体の構成を反映している」と説明にあたった同アライアンス エグゼクティブディレクター兼CEOのアンドリュー・シキア氏がいうように、オンラインID認証に関わるあらゆる立場の企業が参加している団体といってよいだろう。
FIDOアライアンスが目指すのは、パスワードによる認証から、公開鍵による認証への移行を進めること。このためには、公開鍵による認証がシンプルで扱いやすく、それでいて協力なものでなければならないため、公開鍵認証のユーザーエクスペリエンスの改善の支援に力を入れている。
そしてFIDOアライアンスが現在導入促進を積極的に進めているのが、公開鍵方式のパスワードレス認証である「パスキー」だ。
パスキーの導入が始まったのは2022年と最近のことだが、「パスキーは新しい仕様やプロトコルというわけではない」とシキア氏は言う。「パスキー」という呼称は、秘密鍵をファイルと音声を活用してデバイス間で同期するという機能を導入するにあたって使われるようになったものだが、その認証プロセス自体は以前からある公開鍵と秘密鍵の組み合わせによる認証と何ら変わらないということだろう。
ともあれ、「パスキー」のユーザー認知とサービス対応はこの2年の間に広まった。FIDOアライアンスによる調査では全世界の消費者の57%、日本の消費者の62%がパスキーのことを認知しており、グローバルで150億超のさまざまなアカウントがパスキーでサインイン可能になっている。
パスキーを利用できるサービスは日々増え続けており、FIDOアライアンスでもすべて把握するのは難しいくらいだという。また、コンシューマ向けサービスでの導入だけでなく、企業が業務において多要素認証やパスワードの代替としてパスキーを導入する事例も増えているそうだ。
具体的な導入事例としては、まずワールドワイドのものとして、amazon、Sony Interactive Entertainment、Google、TikTokのケースが紹介された。それぞれサインイン失敗の減少やサインイン所要時間の短縮といったメリットがあったという。国内の事例として紹介されたのはKDDI(au ID)、LINEヤフー、メルカリ、NTTドコモで、パスキー認証の比率が高まっており、登録者数が増加していること、パスキー導入により問い合わせ件数が減っており、また不正ログインの撲滅にも貢献しているというデータが示された。
こういった実績の積み重ねの成果のひとつといえるのが、2024年6月に日本政府が策定した「国民を詐欺から守るための総合対策」に「パスキーの普及促進」が盛り込まれたことだという。