東京都が推進している「こどもスマイルムーブメント」。その一環として、令和6年度から新たにスタートした「ティーンズ・アイデアコンテスト」の表彰式が12月22日、東京・丸の内で開催された。

  • 「ティーンズ・アイデアコンテスト」の表彰式が開催

■ティーンズ・アイデアコンテストとは?

東京都では、子供を大切にするチルドレンファーストの社会の実現に向けて、官民が一体となって子供の笑顔につながるアクションを展開する「こどもスマイルムーブメント」を推進している。

  • 子供の主体的な社会参画の機会創出をはかる「こどもスマイルムーブメント」

ティーンズ・アイデアコンテストは、都内に在住または在学する中学生・高校生を対象にしたコンテストとして今年(2024年)初めて開催された。企業・団体は3つのテーマを提示。子どもたちは、その中から興味・関心のあるものを1つ選び、応募フォームにしたがって課題解決につながるアイデアを寄せた。

用意されたテーマと提案企業は、以下の通り。

・「地震が起きても慌てない、安心できるまちにするためには?」(熊谷組)
・「赤ちゃんにやさしい、子育てのしやすい地域社会を実現するためには?」(ピジョン)
・「デジタルデバイド(情報格差)とネット依存を防ぐには?」(イコールチャンス)

  • 用意されたテーマと提案企業

募集期間は、令和6年7月5日から10月6日までの3カ月間。募集対象は「都内に在住又は在学の中学生及び高校生相当年齢(令和6年4月1日時点で12歳以上18歳未満)の方」とした。

  • コンテストの流れ

一次書面審査、二次ヒアリング審査、最終審査を経て、中学生・高校生の各部門から「最優秀賞」(知事賞)1つ、「優秀賞」2つが選ばれた。

■社会課題を考える機会になった

表彰式には、東京都副知事の松本明子氏のほか、こどもスマイルムーブメント アンバサダーを務めるタレントの伊集院光さん、そして平井一夫さん(ソニー元CEO / 一般社団法人プロジェクト希望 代表理事)が登壇した。

中学生の部で「最優秀賞」に選ばれたのは、桜蔭中学校2年生の村川博美さん。熊谷組の「地震が起きても慌てない、安心できるまちにするためには? 」というテーマに対して、支援物資の流通をスムーズにするためのアプリ「物流くん」を提案したアイデアが高く評価された。

  • 桜蔭中学校2年生の村川博美さん

村川さんは「この度は素晴らしい賞をいただき、とても光栄です。以前から地震について興味があり、勉強を続けてきました。今回、アイデアコンテストの機会をいただけたので、このテーマについてより深く掘ることができました。とても貴重な時間になりました」と笑顔で話した。

  • 東京都副知事の松本明子氏から、副賞の楯が授与されました

高校生の部で「最優秀賞」に選ばれたのは、豊島岡女子学園高等学校2年生の松木雛子さん、津田梨結さん。イコールチャンスの「デジタルデバイド(情報格差)とネット依存を防ぐには? 」というテーマに対して、中高生のための社会接続型オンラインサロン”Act”を提案する、というアイデアだった。

  • 豊島岡女子学園高等学校2年生の津田梨結さん(左)、松木雛子さん(右)

松木さんは「まずはこの舞台に立てたこと、そしてこのような素晴らしい賞をいただけたことを本当に誇りに思います。テーマに取り組む中で、自分たちの問題意識を見つめ直し、高校生の等身大の思いを届けることを大切にしました。自分たちの置かれている状況、社会問題などを俯瞰して見る良い機会にもなりました」と話し、津田さんは「このコンテストに参加することで、普段なら見逃してしまうことのある社会問題について、改めて考える機会となりました。これからも、このような社会問題について解決策を考えること、そして問題提起していくことを忘れずに生活していきたいと思います」とした。

  • 松本副知事から副賞の楯が授与

■”掛け算の交流”をして

中学生の部で「優秀賞」に選ばれたのは、筑波大学附属中学校2年生の髙橋りっかさん。ピジョンの「赤ちゃんにやさしい、子育てのしやすい地域社会を実現するためには?」というテーマに対して、地域で助け合う、ちょこっと買い物代行というアイデアを提案して高い評価を得た。髙橋さんは「このような賞をもらえて、とても光栄です。優秀賞をいただけたことを糧にして、これからも地域の社会課題について考えていけるよう頑張ります」と喜びのコメント。

  • 筑波大学附属中学校2年生の髙橋りっかさん

  • 伊集院さんから副賞の楯が授与

同じく中学生の部で「優秀賞」に選ばれたのは、東京都立小石川中等教育学校2年生の細田淳太さん。イコールチャンスのテーマに対して、高齢者にスマホの利用を促進し、若者にスマホの使いすぎを抑制するレンタルスマホを提案して高評価を得た。「本日は、このような晴れやかな場を用意していただき、本当にありがとうございます。ちょっと最優秀賞には至らない部分があったと思います。今後、精進して、またリベンジできたらなと思っております」としている。

  • 東京都立小石川中等教育学校2年生の細田淳太さん

  • 伊集院さんから副賞の楯が授与

講評として、伊集院さんは「人はベテランになると、どうしても、みんなの出したアイデアの”引き算”ばかりしてしまいます。『これは前にやった人がいる』とか、『これはコンプライアンスがどうだ』とか、引き算ばかり。本人には悪気がないのに、気がついたら、せっかくのアイデアをゼロにしてしまうこともたくさんあるんです。でもイチバン難しいのは、ゼロからイチにすること。それは、僕ら大人の発想では難しいことでもあります。今回は一応、便宜上、最優秀賞と優秀賞を決めるから、みんな、やっぱり悔しさなどを感じたりもすると思うんだけど、もしかしたら他のメンバーと話して、自分のアイデアに『これを足したらもっと良くなるんじゃないか』みたいなことも、きっとあるでしょう。これを良い機会に、みんなで”掛け算の交流”をしてもらえたら。おじさんたちも、みんなのアイデアを現実のものにするためにたくさん努力します。アイデアをゼロまで引かないことを約束します。今後、より良いものができると思いますので、引き続き、頑張っていきましょう。今日は本当におめでとうございました」とねぎらった。

  • 伊集院さんが講評

■子どもの斬新なアイデアを事業のヒントに

高校生の部で「優秀賞」に選ばれたのは、N高等学校2年生の野口丈さん。熊谷組のテーマに対して、非常時のみ作動する避難誘導機(モニター・電光掲示板)を設置して身を守る指示を行うというアイデアを提案した。野口さんは「普段から防災について、たくさん考えてきました。その思いを伝える場を持てたことを、とても嬉しく思います。こういった大きなアイデアコンテストに参加するのは、今回が初めてでした。とても良い経験になりました」と話した。

  • N高等学校2年生の野口丈さん

  • 平井さんから副賞の楯が授与

同じく高校生の部で「優秀賞」に選ばれたのは、都立南多摩中等教育学校4年生の古屋花実さん。ピジョンのテーマに対して、子育て世帯や子育てに関わりたい人に向けた団地Share happy baby houseを提案するアイデアが高評価だった。古谷さんは「このような賞をもらえて、とても嬉しく思います。私の”子どもたちの幸せを守りたい”という思いは、まだまだ終わりません。これからも、いろいろなことに挑戦して夢を叶えていきたいと思います」と話した。

  • 都立南多摩中等教育学校4年生の古屋花実さん

  • 平井さんから副賞の楯が授与

講評として、平井さんは「受賞された皆さん、本当におめでとうございます。野口さんと古谷さんのアイデアは、全く違う社会課題に対する提案でしたが、面白い共通点もございました。野口さんのアイデアは、スマホを持っていない高齢者の方々に、災害時にどうやって情報を提供するかということでした。スマホを使わないで、情報を直接伝達するアイデアが素晴らしいと思った。古谷さんのアイデアも、人と人のコミュニケーションを大事にするものでしたね。いろんな経験・体験を持ってる方々が、アドバイスしてあげる場を提供する。現代に生きる私たちは、つい情報機器に頼りがちですが、人と人のコミュニケーションのあり方、人間と人間はどうやって対話するか、その大切さを改めて認識させてもらったように思います。本当に皆さんおめでとうございました」とした。

  • 平井さんが講評

最後に松本副知事が登壇。まずは「今回、初開催となるこのコンテストでは、防災、子育て、デジタルという、いずれも重要なテーマについて中高生の皆さんに様々なアイデアをご提案いただきました。どれもキラキラ光る、『課題を解決したい』という熱意に溢れた、若者らしい、思い切ったアイデアばかりだったと思います。未来の東京を担う皆さんの声は、私たち大人にも新たな気づきを与えてくださいます。東京都では、そのような声を社会全体でしっかり受け止めていくことを目指して、本日のティーンズ・アイデアコンテストをはじめ、企業やNPO、学校、市区町村など様々な皆様と連携して、色いろな取り組みを行っています」とする。

  • 松本副知事が講評

そのうえで「現在、こどもスマイルムーブメントに参画している約1,900の企業や団体の中からも、子どもの斬新な意見を自分たちの事業や活動に取り入れたい、という声が多く聞かれるようになりました。これからも東京都では参画企業や団体の皆様と協力しながら、子どもたちが社会の一員として主体的に意見を表明し、参画できる環境を創出してまいります。ぜひ皆さんの意見を、これからも世の中に積極的に発信して、そして将来の可能性と視野を大いに広げてください。会場にお越しの皆様、オンラインでご視聴の皆様、本日はありがとうございました」とまとめた。