「最近、手足が冷える」「なんだか風邪を引きやすくなった」と感じることはありませんか? 冷え性を放置するとさまざまな健康リスクを招きます。今回は、日常生活で簡単に取り入れられる冷え対策を解説し、温かく健康的な体を目指すためのヒントについて愛晋会中江病院の中路幸之助先生にお伺いしました。

■冷え性が起こる原因

――冷えが引き起こす健康リスクについて教えてください。

冷えが引き起こす健康リスクは多くあり、主なものは以下のものがあげられます。

1つ目は、体温を低下させ、それにより免疫細胞の働きを減弱させ、風邪やインフルエンザ・新型コロナウイルスなどの感染症にかかりやすくなること。2つ目は、自律神経の乱れを引き起こし、血行が不良となり、冷えがさらに増悪するなど悪循環の原因になること。3つ目は、体温が低下すると代謝も低下し、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高まること。また抜け毛や肌のくすみの増加などの美容への影響が出てきます。最後は、膠原病、甲状腺機能低下症、がん、アレルギーなどの病気の症状や原因になります。そのほか、頭痛、腰痛、不眠、肩こり、情緒不安定、月経痛や月経前症候群(PMS)などの不調を引き起こすとされています。

――冷え性が起こる原因について教えてください。

体の冷えにより基礎代謝が低下するため、体温が低くなり、冷え性が起きやすくなります。女性の場合は、ホルモンバランスの変化、特に月経時や更年期のホルモン変動が冷え症を引き起こすこともあり、月経時の血液の不足や卵巣の機能の低下も冷えの原因となります。鉄分不足は特に生理のある女性で見られます。また、ダイエットなどが原因で鉄欠乏になり、冷え性や全身倦怠感を引き起こすこともあります。

さらに、姿勢の悪さ、長時間のデスクワークでの骨盤のゆがみなどが下半身の血行不良を引き起こしたり、ストレスや不安が原因で血行不良が起こり、冷え性を引き起こすことも。自律神経のバランスの乱れによって、血流が滞り全身に熱が送られなくなります。エアコンなどの季節に関係ない快適な室内環境も自律神経の乱れを引き起こし、冷え性の一因となります。そのほか、喫煙により血管が収縮しやすくなり、血行不良が起こり、冷え性の原因となります。

■冷えの対策方法は?

では、冷えを防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか? 日常生活で出来る対策方法について聞いてみました。

規則正しい食生活を

食事の回数が毎日バラバラなど、不規則な食生活は冷えが増悪する原因となるため、規則正しい食生活を心がけたり、体を温める食べ物を積極的に摂取することが重要です。たとえば、生姜やニンニク、ネギ類、魚や肉類などが体を温める効果があります。甘い冷たいコーヒーなどの体を冷やす食べ物は摂りすぎに注意し、代わりに温かい飲み物や湯豆腐などを取り入れると良いでしょう。

体温の低下を防ぐ

また、きつい下着や服装を避け、血行不良にならない服装を選びましょう。冬場は吸湿性のよい下着を着用し、膝掛けやマフラー、ショールを活用して体温の低下を防ぎましょう。

ストレスをためない生活を

自律神経の乱れを防ぐために、ストレスをためない生活を送ることも重要です。日頃からストレスを発散するため、好きな趣味に取り組むことや音楽を聴くことなどを取り入れると良いでしょう。また普段はシャワーに入る習慣のある人でも、湯船に浸かることで血行が促進し、冷えが解消されてリラックス効果が得られます。38~40度くらいのぬるめの湯が良く、熱い湯は避けましょう。足湯も効果的と言えます。

適度な運動

さらに、筋肉量の減少を防ぐために、日頃から適度な運動を心がけることが重要。ウォーキング、寝る前にストレッチをする、普段歩く習慣をつけることも役立ちます。下半身を動かすストレッチや屈伸、スクワット、ウォーキングなどが冷え対策として効果的です。マッサージやストレッチ、特に足指を動かすことは血行を促進する効果があります。

十分な睡眠を

睡眠不足が長引くと自律神経の乱れを引き起こし、冷えの原因となります。十分な睡眠は冷え性対策に重要です。決まった時間に就寝・起床し太陽の光を浴びる、寝る前にリラックスするなどの対策を講じることが重要です。

こまめなマッサージ

デスクワークや立ち仕事中は、数時間に1度はデスクを離れて歩く、階段を上り下りする、骨盤内のインナーマッスルを使うことを意識しましょう。こまめに脚やふくらはぎをマッサージすることも効果的です。

そのほか、下半身を温める床暖房やコタツ、パネルヒーターなどを活用すると良いでしょう。ただし、長時間の使用は低温やけどなどの原因となるため避けましょう。喫煙は血管を収縮させ、血行不良を引き起こすため、冷え性の改善には禁煙が推奨されます。

これらの対策を出来る範囲で日常生活に取り入れることで、冷え性の症状を改善しましょう。

――また、冷えを改善するために意識すべき体の部位も教えてください。

体の中心、特に体幹部分を温めることが冷えの改善に効果的です。体内に熱が十分にあると、手足まで熱が届きます。お腹周りを温めるために、カイロや腹巻などを使用してみるのも良いでしょう。

下半身の冷えに関しては、特にふくらはぎとお尻の筋肉が関わっています。ふくらはぎの筋肉は、末端の血液を心臓に戻すポンプ作用があり、意識して歩いたり、爪先立ちを行うことが有用です。デスクワークなどによってお尻の筋肉が硬直している場合、ストレッチで筋肉(特に梨状筋)をほぐすことがおすすめです。下半身のマッサージ、特にふくらはぎとお尻の筋肉をマッサージすることで血行不良を改善できます。

手足の先が冷えると感じる人は、意識的に手や足の指を動かすことを習慣にすることが効果的です。このように、日常生活の中で体の各部位で筋肉を動かすことが重要です。これらの方法を組み合わせることで、冷えを効果的に改善することが可能です。

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