エフアンドエムネットは、管理部門向けのビジネスメディア「労務SEARCH(労務サーチ)」にて、年収103万円以下の男女300名を対象に、年収の壁に関するアンケート調査を実施した。なお、調査期間は2024年11月15日~2024年11月25日であった。

今回のアンケート調査において、9割以上が年収の壁という言葉を知っていると回答した。しかし、年収の壁について「知っていて、意味を理解している」人は47.0%、「知っていて、なんとなく理解している」人は45.7%であり、年収の壁の概要を正確に理解している人は半数以下であった。

年収103万円を超えないように、働く時間や日数を控えたことはあるか聞いたところ、「ある」が74.7%、「ない」が25.3%であり、多くの人が年収の壁を超えないように働く時間や日数を制限した経験があることがわかった。

年収の壁があることで困った経験をしたことがあるかを聞いたところ、「ある」が60.0%、「ない」が40.0%と、半数以上が何らかの困った経験をしていることが判明した。

どのような経験かを聞いてみたところ、第1位は「もっと働きたいのに働けない」(41.1%)、第2位は「収入が足りない」(23.9%)、第3位は「就業時間や収入の管理・調整が難しい」(19.5%)という結果となった。この結果から、年収の壁があることで「働く意欲を十分に発揮できていない」「経済面で生活に不安を感じている」などの問題が浮かび上がっているという。

政府は2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始している。これは、年収の壁を越えても手取り額は減らず、労働者が年収の壁を気にせず働ける施策であるとのこと。ここからは、そんな年収の壁・支援強化パッケージの認知度や利用率について調査したという。

年収の壁・支援強化パッケージについて知っているか聞いたところ、第1位は「知らない」(38.7%)、第2位は「聞いたことはあるが、理解はしていない」(31.0%)、第3位は「知っていて、なんとなく理解している」(23.7%)という結果となった。「知っていて、意味を理解している」人はわずか6.6%であり、制度に関して十分に周知されていない現状がうかがえる。

年収の壁・支援強化パッケージの利用状況を聞いてみたところ、「利用していない」が95.3%とほとんどの人が利用していないことが明らかとなった。これは前問の回答と関連しており、年収の壁・支援強化パッケージの認知度が低いため、利用に至っていない人が多いと考えられるという。

回答者に年収の壁・支援強化パッケージの制度の概要について説明したうえで、年収の壁・支援強化パッケージを利用できるなら、収入を上げるために今よりも働きたいと思うかを聞いた。その結果、「どちらかといえばそう思う」が43.0%と最も多く、次に「そう思う」(22.0%)、「あまりそうは思わない」(21.7%)、「そう思わない」(11.2%)となった。

「どちらかといえばそう思う」および「そう思う」の回答を合わせると65.0%にのぼることから、社会保険料の負担があっても手取り収入が減らない場合や、一時的な収入の増加があっても扶養に影響しない場合は、多くの労働者は「働きたい」と考える可能性があることがわかる。特に人手不足に悩む企業は、年収の壁・支援強化パッケージについて社内周知することで、課題解決につながる可能性もあるとのこと。

現在議論されている、年収の「103万円の壁の引き上げ」について賛成か反対かを聞いたところ、「賛成」が45.0%、「どちらかといえば賛成」が32.7%、「反対」が3.3%、「どちらかといえば反対」が6.3%、「わからない」が12.7%という結果となった。「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせると、その割合は77.7%となり、約8割が年収の壁の引き上げに肯定的な意見を持っていることがわかる。

前問で「反対」または「どちらかといえば反対」と回答した人に対して理由を聞いたところ、第1位は「社会保険料の負担が発生し、手取りが減るかもしれないから」で24.2%となった。

103万円の壁が引き上げられても、一定の年収を超えると社会保険料(または国民年金・国民健康保険料)の負担が発生するのは変わらない。そのため、手取り収入の増加は限定的になる可能性があり、年収の壁の引き上げに反対の姿勢を見せる人の多くは、この点を懸念していることがうかがえる。

年収の壁の撤廃や年収上限の引き上げがおこなわれた場合、収入を上げるためにもっと働きたいと思うかを聞いてみたところ、「どちらかといえばそう思う」が42.0%、「そう思う」が37.3%と、程度に差はあるものの、合わせて約8割がもっと働きたいと考えていることがわかった。

しかし、「あまりそうは思わない」が15.0%、「そう思わない」が5.7%と、年収の壁が変更されたとしても働く意欲は変わらない人も一定数いるという結果となった。

理由を聞いてみたところ、「現状の働き方に満足しているから」が46.8%と最も多い結果になった。この設問では「現状の収入に満足しているから」といった回答も用意したため、対象の回答者のうち約半数は、収入よりも仕事と生活のバランスを重視していることがうかがえる。

次に多かったのは、「社会保険料の負担が発生し、手取りが減るかもしれないから」で19.3%、続けて「現状の収入に満足しているから」が9.7%、「年収の壁の撤廃や年収上限の引き上げによるメリットがわからないから」が8.0%、「減収による財政負担が心配だから」が6.5%となった。

出典:労務SEARCH