◆Q. プレゼントを贈りたい人がいます。何を贈ると喜んでくれるでしょうか?
Q. 「プレゼントを贈りたい人がいます。何を贈れば喜んでくれるかをずっと考えているのですが、『他にもっと欲しいものがあるんじゃないか』『これをもらっても迷惑じゃないだろうか』と悩んでしまい、決めかねています。決断のコツを教えてください」
◆A. 心理学的に回答すれば、実は「何を贈るか」はあまり重要ではありません
「プレゼントに何を贈ればいいか」は、性別や年齢に関わらず、いつも多くの人を悩ませる問題ですね。相手の欲しいものや好みをよく知っていて、それにぴったりと合ったものを贈れれば、もちろん喜ばれるに違いありません。
しかし心理学的に回答すれば、プレゼントで「何を贈るか」ということは、実はあまり重要ではないのです。
人間の欲求を5つの階層に分けた「欲求5段階説」という心理学理論があります。アメリカの心理学者であるマズローが提唱したもので、ピラミッドの形で示された図はとても有名なので、皆さんもどこかで見たことがあるかもしれません。
それによると、人間の欲求は、下の階層から順に、「生理的欲求→安全欲求→社会的欲求(親和欲求)→承認欲求→自己実現欲求」に分けられます。
そして、何であれ「プレゼントを贈られる」ことは、これらの欲求の上位にあるものの複数を、一度に満たしうる出来事なのです。
プレゼントを贈られた時点で、まず「自分のことを想ってくれる人がいる」と、目に見える形で実感できるでしょう。相手との関係によりますが、集団への帰属意識や、個人からの愛情などが伝わり、第3層の「社会的欲求」が満たされます。
自分へのプレゼントを準備するために、相手が時間や手間、あるいは金銭的な負担をしてくれたと感じれば、尊重されていると伝わり、第4層の「承認欲求」も満たされます。
そしてもし相手が、「幸せな人生を送ること」や「たくさんの人に愛されること」が人生で最も大事なことだと考えていれば、「こんな贈り物をしてくれる人がいて幸せ」と感じ、最上位の「自己実現欲求」までも満たされるかもしれません。
このように、「贈り物」はその行為やプロセス自体が、相手を精神的に満たし、幸せにすることができる行為なのです。何がふさわしいか悩む時間も含めて、相手への贈り物の一部です。そして最終的には、あなたが何を選んでも気持ちを伝えることができる行為になると思います。
◇中嶋 泰憲プロフィール
千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。
文=中嶋 泰憲(医師)