老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。
今回は、年金を繰り下げした場合の増額率についてです。
◆Q:老齢厚生年金を3年間繰り下げると25.2%の増額と考えてよいのですか?
「65歳でもらえる年金は約14万円です。老齢厚生年金は68歳まで繰り下げを考えています。老齢基礎年金は6万8000円とすると、老齢厚生年金は3年間で25.2%の増額と考えてよいのですか? 50万円の壁を超えていなければ、満額増額対象になりますか?」(Rさん)
◆A:老齢厚生年金を68歳まで繰り下げるなら増額率は25.2%です
老齢年金は原則、65歳から受け取れますが、65歳ではもらわずに66歳以降75歳まで繰り下げて受け取ることができます。(昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰り下げの上限年齢は70歳まで)
ひと月繰り下げるごとに0.7%増額されますので、3年(36カ月)繰り下げすると、25.2%(0.7%×36カ月)増額されます。
相談者は、65歳時点の老齢年金は月額で約14万円とのこと。そのうち老齢基礎年金の受給額が満額の月額6万8000円であれば、老齢厚生年金の受給額は月額約7万2000円となります。
老齢厚生年金を3年間繰り下げすると、増額率は25.2%となりますので、老齢厚生年金の月額は9万144円になるでしょう(7万2000円×125.2%)。
在職老齢年金とは、60歳以降、厚生年金に加入して働きながら年金受給する場合、総報酬月額相当額(年間給与等+賞与の1/12)と老齢厚生年金の基本月額(年額の老齢厚生年金の報酬比例部分を12で割ったもの)を足した金額が、支給停止基準額50万円(令和6年度)を超えると、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となる制度です。
在職老齢年金によって支給停止になった老齢厚生年金は繰り下げても増額されません。つまり相談者の言うように、在職老齢年金の対象となる支給停止基準額50万円を超えないように働く場合は、繰り下げによって全額が増額の対象になります。
なお相談者が65歳に到達した時点で、要件を満たした65歳未満の配偶者がいると、老齢厚生年金に加給年金額が上乗せされて受け取れますが、老齢厚生年金を繰り下げすると、加給年金額は受け取れません。
老齢厚生年金を繰り下げる場合は、よく検討しましょう。
監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
文=All About 編集部