2025年の阿部巨人をペナントモードで検証!

 まるで、「平成巨人」が帰ってきたかのようなストーブリーグである。

 阿部巨人がライデル・マルティネス(中日)、田中将大(楽天)、甲斐拓也(ソフトバンク)と立て続けに大物選手を獲得した。マルティネスには4年総額50億円以上、4年ぶりのFA補強となる甲斐には5年15億円クラスの大型契約を提示と報じられている。同リーグのチームから絶対的クローザーを引き抜き、ソフトバンクにマネーゲームを挑んで勝利するという、触るもの皆獲りまくる“人間ブルドーザータツノリ”が猛威をふるった10数年前の原巨人を見ているかのような一連の動きである。

 そして、楽天を自由契約になり去就が注目されていた田中マー君も獲得。今季わずか1登板で未勝利に終わるも、日米通算200勝まであと3勝に迫るレジェンドだ。いわば、球界に貢献したベテラン選手がキャリア晩年に巨人のユニフォームを着る、昭和からの伝統ムーブは令和でも健在だった。

 久々の大型補強に邁進する阿部巨人だが、マルティネスと大勢の共存は可能なのか? 甲斐と大城卓三や岸田行倫の捕手併用は機能するのか? そして田中は新天地で200勝達成なるのだろうか? 今回は『プロ野球スピリッツ2024-2025』(コナミデジタルエンタテインメント)のペナントレースモードで、ひと足お先に2025年のプロ野球をシミュレートしてみよう。

◆ 2025年の阿部巨人をペナントモードで検証

 FA、現役ドラフト、自由契約、米球界移籍等をエディット機能で反映させた(12月17日現在)12球団で、巨人を選択してペナントモードを進める。なお、可能な限り25年シーズンの選手編成だが、ゲームのシステム上2024年の公式戦日程での進行となる。

 すでに阿部監督がスポーツ報知紙上で明言していたように、まずは「8回大勢、9回マルティネス」の勝ちパターンでブルペン整備。さらにグラウンド上の司令塔を期待ということで、甲斐は「8番捕手」で開幕。田中は、阿部監督が24年シーズンに春先の菅野をエースクラスと投げ合わせるのではなく、ローテ5~6番手とマッチアップして自信を取り戻させたように、戸郷翔征、山崎伊織、グリフィン、井上温大、西舘勇陽に次ぐ6番手で起用する。

 田中の移籍後初登板は4月4日の中日戦。バンテリンドームのマウンドへ。奇しくも、楽天から現役ドラフトで移籍した元後輩の伊藤茉央と投げ合い、6回3安打3四球5三振の1失点投球で巨人の田中は移籍後初勝利を挙げた。左のエース格グリフィンが不調から抹消される中でも、田中は登板間隔を充分に空け、90球を目処にした阿部監督の起用法に応え、17日の阪神戦(甲子園)でも6回3分の2を1失点にまとめて2勝目。早くも日米通算200勝にリーチをかける。

 チームもやはり球界屈指のリリーバー大勢と絶対的守護神マルティネスを中心にした超強力ブルペンで接戦に強く、序盤は首位快走。すべてが順調と思いきや、前年に続き巨人打線は得点力不足に悩まされ、来日2年目の研究されたヘルナンデスがスランプに陥り、24年に打率.256・5本塁打の甲斐も打率1割台と低迷。次第に大城の出番が増えていき、やがて5番に定着する。なお、大城は年間を通して打撃好調で打率.287、18本塁打、75打点と完全復活を果たした。

 田中もその後、本拠地の東京ドームでの一発病にも泣き、勝ち星から見放され大記録目前に足踏み。しかし、序盤にKOされても不思議と味方が逆転してくれて負けはつかない強運ぶりを発揮。5月になると大勢が肩の違和感で離脱した巨人は、阪神に首位を奪われるも2位につけ、DeNAやヤクルトともに混セを演出する。マルティネスを獲っておいて良かった……と実感する展開である。

◆ 待ちに待った大記録達成は…?

 交流戦が開幕すると、29日のソフトバンク戦で2週間振りに先発した田中は今季初黒星。6月5日のロッテ戦では、打者としても移籍後初の犠打を決めるなど奮闘。初めて小林誠司とベテランバッテリーを組み、東京ドームで移籍後最長の7回のマウンドにも上がるが、代打・角中に逆転アーチを浴びてジ・エンド。6月12日には仙台凱旋でKスタの古巣・楽天戦で先発マウンドへ。試合は延長10回に岡本和真の13号決勝ソロで勝利するも、7回1失点と好投した田中に勝敗はつかなかった。

 ここまで進行したとろで、現実の巨人で新外国人のトレイ・キャベッジの獲得発表があったため、ゲーム内でも新外国人調査へ。貧打解消の救世主としてパワーSの大砲候補ディズリーを年俸4億円で獲得する。防御率4点台と調子の上がらないバルドナードと入れ替えで1軍昇格させると、最終的に打率こそ.266も72試合で24本塁打と期待に応えた。

 待ちに待った大記録達成は、7月10日の広島戦(マツダ)だ。5回3失点ながらも打線の援護に恵まれ、背番号18は約2カ月半振りの3勝目。ついに日米通算200勝を達成した。前半戦終了時、田中の成績は13試合(74回3分の2)3勝1敗、防御率2.77。……妙にリアルなこの感じ。チームは首位DeNAと3ゲーム差で折り返した。

 なお、田中の盟友の88年組の坂本は、「プレー中に腰を痛めたようです」と二度の離脱に見舞われながらも、代打中心の起用で打率3割台をキープして意地を見せた(長野や坂本のベテラン陣は、日程進行とともに衰えて能力が下がっていくシビアな設定である)。

◆ リーグ戦2位から球団初の下克上日本一を達成

 8月になるといよいよ難しいのが捕手併用だ。8月1日現在、リーグ最低のチーム打率.249なので、結果的に打力にまさる大城中心の起用になっていく。岸田もいるので、甲斐は抑え捕手のようなやや中途半端な役回りが増える。現実の阿部監督が充実の捕手陣をどう起用していくのか注目である。

 結局、ペナントレースは阪神が逆転Vを飾り、巨人は76勝61敗6分で首位に5ゲーム差の2位。エースの戸郷が14勝、190奪三振、勝率.778で3つのタイトルを獲得。マルティネスは1点台の防御率に35セーブ(リーグ2位)とさすがの安定感だった。打撃陣では岡本が37本塁打、99打点も両部門とも村上宗隆(ヤクルト)にわずかに及ばず二冠を逃す。田中の最終成績は22試合(117回)で5勝3敗、防御率3.31。強力ブルペン陣を擁していたため、QS数4と5回を目処にマウンドを降りることが多かったが、ローテの谷間をカバーしてみせた。

 なお、夏場に大勢がセットアッパーで完全復活した巨人は、接戦の多い短期決戦で抜群の強さを見せる。CSファーストステージでDeNAに2勝1敗で競り勝つと、甲子園に乗り込んだ阪神とのCSファイナルでも4勝2敗で日本シリーズ進出。するとパ・リーグの覇者ソフトバンクを4勝1敗でくだして球団初の下克上日本一を達成した。このシリーズでは古巣を知り尽くした甲斐が先発マスクを被り存在感を見せた。そして、田中はCSファイナル第2戦、懐かしの甲子園のマウンドに立ち、5回1失点で勝ち投手になっている。

 こうしてプロスピで巨人の大型補強をもとに2025年ペナントをシミュレートしてみると、ライデル・マルティネスの獲得は、故障癖がやや気になる球界屈指のリリーバー大勢が離脱時のリスクヘッジとしては理にかなっていると実感できた(対費用効果の観点では意見が分かれるだろうが)。なお、24年に現実の巨人が唯一月間負け越しをしたのが6月の9勝12敗1分で、大勢の故障離脱時だった。

 田中の獲得も、菅野智之のメジャー移籍で負担が増す若手先発陣をサポートするローテ5~6番手として復活してくれたら御の字だろう。プロスピペナントでも、中盤に井上や西舘が故障や再調整で二軍降格すると、なんだかんだ5回まで投げてくれる田中の存在はありがたかった。

 そして最も頭を悩ませのが、やはり甲斐の起用法である。5年15億円超というビッグディールでの加入だけになんとか使いたい。ただ、得点力不足を考えると大城も使いたい。一塁大城なら三塁岡本が増え坂本の出場機会が……。タクヤとタクミの狭間で悩めるシンちゃん問題。こうして見ると、2025年の阿部巨人のカギを握るのは「甲斐拓也」ではないだろうか。その起用法がチームのあらゆるポジションに影響を及ぼすからだ。

 ちなみにこの30年間の巨人監督で、リーグ連覇を成し遂げたのは原辰徳ただひとり。堀内監督や高橋監督はもちろん、意外なことに9年間も続いた第二次長嶋政権も連覇は一度もなかった。監督2年目の阿部慎之助が、セ界連覇と同時にその“タツノリの壁”を超えられるのか注目である。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)