今回は、いわゆる「レガシーメディア」の売れ筋をレポートします。
かつて、データの保存や受け渡しなどで中心的な役割を担い、現在はピークアウトしたレガシーなメディア。古くは、カセットテープやVHS、フロッピーディスク、MOディスクなどのほか、スマートメディアやメモリースティックといったメモリーカードもありました。近いところでは、CD-RやDVD-Rなどの光学メディアも範疇に入れてもよいかもしれません。
最近は使う機会がほとんどなくなった…という声も聞きますが、細く長く売れているものも少なくありません。秋葉原でレガシーメディアを多数取りそろえる磁気研究所(HIDISC)の直営店・MAG-LABでも、数年スパン、十数年スパンで人気のメディアがいくつもあるとのこと。
店長の大谷和広氏は「仕事で必要だからという場合も多くありますが、案外プライベートでも需要があります。年配の方にデータを渡すときはUSBメモリーやクラウドだとうまくいかないから、使い慣れたなじみのメディアを探しているというケースや、レトロな環境に新鮮味を覚えるから買ってみた、というケースまでありますね」といいます。
とりわけ年末年始は、親に写真や動画を渡したり、実家で往年の環境に触れたりするなど、レガシーメディアが活躍する機会が増える時期といえます。下の「レガシーメディア探しのポイント×3」を踏まえて、令和の現在も着実に売れているレガシーメディアの需要の理由を追いかけていきましょう。
<レガシーメディア探しのポイント×3>
- 生産環境や市場在庫の違いで、供給量や価格に大きな差が生じる。
- VHSやフロッピーディスクなどの往年の主流メディアは息長く流通する傾向がある。
- スマートメディアやxDピクチャーカード、HD DVDなどはほぼ払底状態。
※本文と写真で掲載している価格は、取材した2024年12月13日14:00時点のものです。日々変動もしているので、参考程度に見てください。
音楽や録音データの配布に活躍する「CD-R」
もっとも安定して売れているのはCD-Rとのこと。平成元年に流通が始まった古参メディアですが、現在もよく見かけます。容量は650MB~875MBまでありますが、現在も流通量が多いのは700MB(80分録音)タイプです。同店では、自社ブランドの音楽用CD-R 50枚パック(HDCR80GMP50)が980円で売られていました。
「音楽や講演会の録音データなどをCD-Rに書き込んで配布するのに使う人が多い印象です。品質の良いものを選んでもコストはそこまでかかりませんし、CD-Rなら年代を問わず再生に困る人は少ないですからね。USBメモリーやクラウド経由に比べて、受け取る人のスキルを気にしなくていいという声もよく聞きます」
手元に映像を残す用途で人気の「BD-RE DL」
大容量になりがちな映像データの記録にはBlue-ray Discが根強い人気があり、とりわけBD-RE DLがよく売れているといいます。記録面が2層になっていて50GBまで記録できるうえ、BD-Rとは異なり書き換えが可能なメディアになります。同店ブランドのスリムケース入り5枚パック(HDVBE50NP5SC)の価格は1,200円でした。
「長いドラマの録画だと1層式(25GB)では足りないということで、DLタイプが選ばれます。地上デジタル放送なら6時間録画できますから。さらに、片面3層のBDXLなら100GBになるのでそちらを選ぶ人もいますが、主流はDLですね。BDは配布用というより自分用に使われる方が多い印象です。それゆえ、書き換えできないBD-Rではなく、書き換え可能なBD-REが選ばれるのかなと思います」
データ保存用で需要があるのは「DVD±R DL」
大まかにいえば音声はCD、映像はBDと棲み分けされている様子です。そして、仕事用のファイルなどの記録にはDVDが安定した需要があるそうです。
とりわけ長く売れているのは、1層式の4.7GBよりも大きい8.5GBまで記録できるDVD-R DLとDVD+R DLとのこと。同店ブランドのDVD-R DL 10枚パック(HDDR21JCP10SC)は1,650円、DVD+R DLの50枚パック(HDVD+R85HP50)は3,000円で売られていました。
「4.7GBだとちょっと足りないと感じる人が多いみたいですね。±でいえば、DVD-R DLを選ぶ人が多いですが、DVD+R DLもコンスタントに売れています。どちらも読み書きできるドライブが多く出回っているからでしょうね。逆に、DVD-RAMは非対応のドライブが多いこともあって、需要は少なくなっています」
なお、特価ベースでいえば、書き込みできるDVDでもっとも一般的なDVD-Rの複数パックがよく売れているといいます。取材時には、50枚パックで300円という、1枚あたり10円未満で売られているものもありました。「質より量という場合はコチラですね。そういった選択肢がまだたくさんあるのもDVDの強みといえるかもしれません」
幅広い世代に趣味として広がる「カセットテープ」
音楽データを自分の趣味として楽しむ需要で伸びているのがカセットテープです。同店では、1本1,280円の「RTM C-90」や900円の「FOX C90」といった90分(片面45分)録音タイプ、1本1,080円の「RTM C60」や800円の「FOX C60」などの60分(片面30分)録音タイプが売られていました。いずれも、10本まとめ買いで安くなります。
「YouTubeなどをきかっけに興味を持ったという人から、昔からずっと愛用している人まで、年代は幅広いですね。親が使っていたウォークマンをもらってカセットテープに目覚めた、という若い方もいましたね」
なお、カセットテープと一緒にカセットプレーヤーも購入する人も珍しくないそうです。
仕事用で求める人も多い「フロッピーディスク」は価格高騰
あの「フロッピーディスク」も探し求めて来店する人が現在も一定数いるそうです。国内では市場在庫品のみが流通している状況のため価格が上がっており、取材時はTDKの「MF-2HD」10枚パックが6,600円、20枚パックがなんと16,500円となっていました。
「仕事のためにどうしてもフロッピーディスクが必要で、秋葉原じゅうを探してウチに来たという方もいらっしゃいますね。一方で、個人用で欲しいという人は電気街に来たお土産的に、1枚500円のものを買っていかれます」