スパークス・アセット・マネジメントは12月5日、「日本株式市場の振り返りと展望に関する意識調査2024」の結果を発表した。調査は2024年11月8日~11月12日、全国の20歳~79歳の投資経験者1,000人を対象にインターネットで行われた。
「今年、投資デビュー」20代投資家では32%
投資経験者1,000名(全回答者)に、現在の投資状況について聞いたところ、"投資家"(「現在、投資をしている」と回答した人)は82.9%、"投資離脱者"(「過去に投資をしていたが、現在はしていない」と回答した人)は17.1%となった。
次に、投資の経験年数を聞いたところ、投資家(829名)では、「今年、投資を始めた」が15.0%、「1~3年程度」が24.8%、「4~6年程度」が20.0%、「7~9年程度」が7.1%、「10年以上」が33.1%となった。
年代別にみると、「今年、投資を始めた」と回答した人の割合は、20代では31.5%、30代では21.5%、40代では7.5%、50代では8.8%、60代・70代では4.4%だった。
投資離脱者(171名)についてみると、投資の経験年数は、「1年未満」が31.6%、「1~3年程度」が22.8%で、合計した「3年以下で離脱」は54.4%となった。また、「4~6年程度」は15.2%、「7~9年程度」は4.7%、「10年以上」は25.7%だった。
現在投資している資産、1位は「日本株式」
投資家(829名)に、現在投資している資産を聞いたところ、「日本株式」(58.1%)と「投資信託(「REIT」以外)」(56.8%)が特に高くなり、「外国株式」(19.1%)、「仮想通貨」(11.6%)、「日本公社債(国債/地方債・社債など)」(11.0%)が続いた。
男女別にみると、「日本株式」(男性66.4%、女性49.6%)は、女性と比べて男性のほうが15ポイント以上高くなった。
年代別にみると、20代と30代では「投資信託(「REIT」以外)」(20代56.0%、30代58.1%)が1位、40代以上では「日本株式」(40代60.0%、50代65.3%、60代・70代71.1%)が1位だった。
投資家の"ポイント投資"利用率は49%
投資サービスの利用状況について質問した。
投資家(829名)に、共通ポイントなどで投資できる「ポイント投資」、買い物のおつりを自動で積み立て投資してくれる「おつり投資」、ロボットが資産運用を代行してくれる「ロボアドバイザー投資」、好きなテーマを選ぶと最適な銘柄を自動で選択してくれる「テーマ型投資」、ネット上でお金を借りたい企業を仲介してもらい投資できる「ソーシャルレンディング投資」の5つのサービスを提示し利用状況を聞いたところ、それぞれのサービスの利用率は、「ポイント投資」では49.2%、「おつり投資」では10.3%、「ロボアドバイザー投資」では10.4%、「テーマ型投資」では7.2%、「ソーシャルレンディング投資」では6.5%となった。
年代別にみると、利用率は、「ポイント投資」では30代(58.1%)、「おつり投資」、「ロボアドバイザー投資」、「テーマ型投資」、「ソーシャルレンディング投資」では20代(順に19.0%、16.7%、13.1%、12.5%)が最も高くなった。
過去の調査結果と比較すると、「ロボアドバイザー投資」の利用率は、2023年6.9%→2024年10.4%と、3.5ポイント上昇した。
投資家の35%が「ESG投資に前向き」
次に、ESG投資について質問した。
投資家(829名)に、ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資サービス)をしているか聞いたところ、「している」が8.0%、「していないが、したいと思う」が27.4%で、合計した「前向き」は35.4%となった。
性年代別にみると、ESG投資に前向きな人の割合は、20代男性(56.4%)が最も高くなり、30代男性(46.6%)、40代男性(37.3%)が続いた。
投資家の71%が「新NISAを利用している」
2024年1月から、新しいNISA制度(新NISA)が始まった。新NISAでは、年間の投資枠が拡大され、投資商品の非課税期間が無期限になっている。
投資家(829名)に、NISAを利用しているか聞いたところ、「旧NISAのみ利用している」は11.7%、「新NISAのみ利用している」は29.4%、「旧NISAと新NISAの両方を利用している」は41.9%で、合計した「NISAを利用している」は83.0%、「新NISAを利用している」(「新NISAのみ利用している」「旧NISAと新NISAの両方を利用している」の合計)は71.3%となった。また、「NISAは利用していない」は17.0%だった。投資家の大半が、2024年に開始された新NISAを利用していることがわかった。
性年代別にみると、「新NISAを利用している」と回答した人の割合は、男女とも30代(30代男性82.9%、30代女性79.7%)が最も高くなった。
2024年の"日本株式市場を表す漢字"は?
株式投資家(533名)に、2024年の日本株式市場を表す漢字1文字を聞いたところ、1位「乱」(70名)、2位「変」(30名)、3位「高」(26名)、4位「上」(22名)、5位「新」(19名)となった。
それぞれの漢字を選んだ理由をみると、「乱」では「株価が乱高下したから」や「波乱な相場だったから」、「変」では「様々な制度が変わった年だから」や「日米のトップが変わったから」、「高」では「日経平均株価が史上最高値をつけたから」「物価が高くなったから」といった回答があった。
昨年の調査結果と比較すると、2023年は株高や物価上昇を象徴する「高」や「上」が上位となっていたほか、紛争・戦争が続く世界情勢を反映した「戦」がTOP10入りしていた。2024年は「乱」が1位、「変」が2位と、株価の乱高下や政治・経済状況の変化を象徴する漢字が上位に並んだ。
今年1年の投資の損益着地予想
投資家(829名)に、今年1年の投資の損益着地予想を聞いたところ、「大幅にプラス着地」は11.7%、「ややプラス着地」は50.2%で、合計した「プラス着地」は61.9%、「大幅にマイナス着地」は4.2%、「ややマイナス着地」は10.1%で、合計した「マイナス着地」は14.4%と、プラス着地を予想する人が多数となった。
過去の調査結果と比較すると、「プラス着地」と回答した人の割合は、2022年43.8%→2023年56.1%→2024年61.9%と、2年連続での上昇となり、今年は昨年と比べて5.8ポイント上昇した。
年代別にみると、「プラス着地」と回答した人の割合は、20代(64.9%)と40代(64.4%)で高くなった。
プラス着地の勝因、マイナス着地の敗因は?
今年1年の投資の損益着地予想について、どのようなことが要因だと考えている投資家が多いのか。「プラス着地」の人には勝因を、「マイナス着地」の人には敗因を聞いた。
プラス着地と予想した投資家(513名)に勝因を一言で表してもらったところ、1位「動じない・一喜一憂しない」(34名)、2位「放置・ほったらかし投資」(31名)、3位「長期保有・長期投資」(26名)となった。株価の変動や世界・日本の社会情勢の変化に翻弄されず冷静に判断したことや、短期的な売買を行わない、放置も含めた長期投資のスタンスがプラス着地につながったと考えている人が多いようだ。
マイナス着地と予想した投資家(119名)に敗因を一言で表してもらったところ、1位「円安・ドル高」(8名)、2位「業績悪化・保有株の不振」(7名)、3位「アメリカ大統領選挙」(6名)となった。
株価の記録的な乱高下、投資家はどのように動いた?
今年(2024年)の8月5日に、日経平均株価は前日比4,451円28銭安と過去最大の下げ幅を記録、しかし翌6日には前日比3,217円04銭高と過去最大の上げ幅を記録し、記録的な乱高下となった。
投資家(829名)に、2024年8月に日経平均株価が大きく下落した局面で、保有投資資産をどのようにしたか聞いたところ、「売却のみ行った」は3.6%、「売却と買い増しの両方を行った」は11.3%、「買い増しのみ行った」は22.7%で、「売却した」(「売却のみ行った」と「売却と買い増しの両方を行った」の合計)は14.9%、「買い増しした」(「買い増しのみ行った」と「売却と買い増しの両方を行った」の合計)は34.0%となった。また、「何もしなかった」は62.4%だった。動かず様子見した人や、反発を期待して買い増しした人が多いのでは。性年代別にみると、「買い増しした」と回答した人の割合は、30代男性(48.9%)が最も高くなった。
他方、2024年8月に日経平均株価が大きく上昇した局面で、保有投資資産をどのようにしたか聞いたところ、「売却した」は17.9%、「買い増しした」は21.4%となり、「何もしなかった」は70.7%だった。状況を静観していた人が多いようだ。
年代別にみると、「買い増しした」と回答した人の割合は、20代男性(40.0%)が最も高くなった。20代男性投資家には、さらなる値上がりを予想して買い増しした人が少なくないようだ。
投資家が選ぶ今年の経済分野の流行語は?
今年、投資家が注目したキーワードやニュースについて質問した。
投資家(829名)に、今年(2024年)の経済分野の流行語(トレンドワードや新興の分野、技術、産業など)だと思うものを聞いたところ、「新NISA/NISA/つみたてNISA」(114名)がダントツとなった。新NISAスタートをきっかけにNISAブームが起きたことを実感している投資家が多いのでは。以降、2位「AI(人工知能)」(55名)、3位「円安」(44名)、4位「半導体」(34名)、5位「トランプ/もしトラ/またトラ」(33名)と続いた。
今年、積極的に投資を進めようと思うきっかけとなったニュースを聞いたところ、1位「新NISA・NISA・つみたてNISA関連」(160名)、2位「アメリカ大統領選挙」(95名)、3位「円安・ドル高」(91名)、4位「物価高・物価上昇」(55名)、5位「株価上昇・株高」(46名)となった。
来年以降の日本経済成長のために必要だと思うことは?
来年(2025年)以降の日本経済や市場の展望について質問した。
全回答者(1,000名)に、来年以降の日本経済の成長のために必要だと思うことを聞いたところ、「物価高騰の抑制」(31.4%)が最も高くなった。次いで高くなったのは、「持続的な賃金上昇」(28.9%)、「過度な円安の是正」(28.2%)、「減税策の推進」(24.6%)、「ウクライナ情勢の解決」(24.1%)だった。
男女別にみると、「AI・ロボットの普及」(男性20.6%、女性13.6%)は、女性と比べて男性のほうが7.0ポイント高くなった。
年代別にみると、50代では「持続的な賃金上昇」(34.0%)が1位だった。また、60代・70代では、「ウクライナ情勢の解決」(35.5%)と「原油価格の適正化」(33.0%)が全体と比べて10ポイント以上高くなった。
今後、長期的に成長の期待が持てそうだと感じる市場TOP3
次に、"今後、長期的に成長の期待が持てそうだ"と感じる市場(産業)を聞いたところ、「知能化技術(AI・自動運転車など)」(27.4%)が最も高くなり、「先進医療(再生医療・遺伝子治療など)」(23.0%)、「ロボット工学(家庭用・産業用ロボットやドローンなど)」(22.9%)、「環境エネルギー(水素燃料など)」(19.7%)、「高齢者向けサービス(介護・医療・生活関連など)」(18.3%)が続いた。先端技術に関連した分野や、深刻化が懸念されるエネルギー問題、高齢化社会に関連した分野に期待する人が多いようだ。
年代別にみると、20代では「ロボット工学(家庭用・産業用ロボットやドローンなど)」(21.0%)が1位、30代では「知能化技術(AI・自動運転車など)」「先進医療(再生医療・遺伝子治療など)」「情報・通信技術(IT/ICT)」(いずれも20.5%)が同率で1位となった。また、60代・70代では「知能化技術(AI・自動運転車など)」(40.0%)、「ロボット工学(家庭用・産業用ロボットやドローンなど)」(33.0%)、「環境エネルギー(水素燃料など)」(34.5%)が全体と比べて10ポイント以上高くなった。
"与党過半数割れ"が2025年日本株式市場に与える影響
2024年は多くの国で重要な選挙が実施される"選挙イヤー"となった。日本では、10月の衆議院議員選挙において、与党の議席が15年ぶりに過半数を割る結果となった。
全回答者(1,000名)に、衆議院議員選挙2024における"与党過半数割れ"は2025年の日本株式市場にどのような影響を与えると思うか聞いたところ、「非常に良い影響」は8.1%、「やや良い影響」は24.9%で、合計した「良い影響」は33.0%、「非常に悪い影響」は7.6%、「やや悪い影響」は24.7%で、合計した「悪い影響」は32.3%となった。また、「影響はない」は34.7%だった。
年代別にみると、40代以下では「良い影響」(20代38.5%、30代33.5%、40代32.5%)が「悪い影響」(20代27.5%、30代32.5%、40代26.0%)を上回ったのに対し、50代以上では「悪い影響」(50代35.5%、60代・70代40.0%)が「良い影響」(50代29.5%、60代・70代31.0%)を上回った。
"またトラ"が2025年日本株式市場に与える影響
11月のアメリカ大統領選挙では、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利し、4年ぶりに大統領に復帰した。トランプ氏のアメリカ大統領再就任は2025年の日本株式市場にどのような影響を与えると思うか聞いたところ、「良い影響」は41.1%、「悪い影響」は38.0%、「影響はない」は20.9%となった。
年代別にみると、40代以下では「良い影響」(20代51.5%、30代44.0%、40代40.0%)が「悪い影響」(20代28.0%、30代34.0%、40代31.0%)を上回った。50代では「良い影響」(40.0%)と「悪い影響」(40.5%)がほぼ同率で、60代・70代では「悪い影響」(56.5%)が「良い影響」(30.0%)を上回る結果となった。日本株式市場への影響について、若い年代ほどポジティブにとらえているようだ。
2025年12月末の日経平均株価予想は?
今後の日経平均株価がどのように変動するか、株式投資家の予想を聞いた。
株式投資家(533名)に、約1年後の2025年12月末の日経平均株価の予想を聞いたところ、「40,000円~45,000円未満」(27.7%)に多くの回答が集まり、平均(「わからない」と回答した人を除いて算出)は37,361円となった。
"日本企業が本来の実力を発揮し、株式市場で正当に評価された場合"という条件を加えて聞いたところ、「40,000円~45,000円未満」(24.5%)や「45,000円~50,000円未満」(17.1%)に多くの回答が集まり、平均は41,517円となり、条件を加えていない場合(37,361円)と比べて4,156円高くなった。
また、約10年後の2034年12月末の日経平均株価の予想を聞いたところ、「50,000円以上」(17.6%)や「40,000円~45,000円未満」(12.3%)などに回答が集まり、平均は40,508円となった。
"日本企業が本来の実力を発揮し、株式市場で正当に評価された場合"という条件を加えて聞いたところ、「50,000円以上」(19.9%)に多くの回答が集まり、平均は42,050円だった。