MM総研は12月19日、日本におけるスマートフォン販売店舗の実態調査の結果を発表した。2024年3月時点での全国の携帯電話販売店舗は10,742店舗で、そのうちキャリアショップが7,269店舗(約67.7%)を占め、多くの消費者は専門的なサービスや対面サポートを重視しているという。
キャリアごとの店舗数では、ソフトバンクが最多の2,531店舗(34.8%)、次いでKDDIが2,319店舗(31.9%)、NTTドコモが2,071店舗(28.5%)、楽天モバイルが348店舗(4.8%)。なお、ソフトバンクとKDDIの店舗数には、サブブランドであるワイモバイルやUQモバイルを単独で扱う小型店舗も含まれる。
KDDIとソフトバンクは、サブブランドの取り扱いを通じて他キャリア利用者を含めた顧客接点を増やす戦略を展開している。楽天モバイルは店舗数では他3社に劣るものの、オンライン契約の強みを活かし、2024年10月に契約数800万件を突破した。
地域別では、四国でドコモのシェアが35.7%と全国平均を9.5ポイントも高い。成功の要因は地域密着型サービスや顧客サポートの強化とみられる。四国は人口が少なく競争が緩やかなため、地域ニーズに応じたサービスが提供しやすい環境だと分析されている。
九州ではKDDIのシェアが33.2%と全国平均を2.4ポイント高い。これは、グループ企業である沖縄セルラーが地域特化型の営業戦略を展開していることが要因で、沖縄県民のニーズに合ったサービスやキャンペーンの実施により、契約数でも沖縄でのシェアが高くなっているとみられる。
東海ではソフトバンクのシェアが38.8%と全国平均を6.6ポイント高く、前身の東海デジタルホンが愛知県を中心に積極的に営業していた影響が残っているためとみられる。一方、楽天モバイルは関西で13.3%、関東で13.2%と全国平均を2ポイント以上上回り、人口密度が高く効率的な顧客獲得が期待できる両地域に注力した結果だと分析されている。
スマートフォン市場が飽和するなか、各キャリアは他社ユーザーの獲得を狙って大型ショッピングモールが新たな主戦場となっている。ショッピングモールではモール内のキャリアショップに限らず、近隣のショップもイベントスペースで出張販売を行っており、キャンペーンやノベルティも活用して来店者に積極的な声かけを行っている。
経済産業省の調査によると、面積30,000平方メートルを超える大型ショッピングセンター170か所でのキャリアショップの出店状況は、KDDIが113店舗で最多、次いでソフトバンクが112店舗。各社のキャリアショップ数に占める出店比率は、ドコモが4.0%、KDDIが4.9%、ソフトバンクが4.4%、楽天モバイルが23.3%と、楽天モバイルの出店比率が最も高い。
今後は、デジタル化の進展により、オンラインとオフラインの融合を図る「オムニチャネル戦略」が求められることから、リアル店舗の役割が再定義され、顧客との接点を増やすことが期待される。ショッピングモールへの出店は集客力やプロモーションに強みがある一方で、高コストや競争激化といった課題も抱えており、消費者のニーズに応じた柔軟な戦略が求められるという。
日本のスマートフォン市場ではキャリアショップが主導的な役割を果たしており、その影響力は今後も続くとみられる。各キャリアは競争力を維持するために、店舗数のみならず接客品質の向上、サービスの充実を図ることが求められる。キャリアショップは多様な役割を担いながら進化し、顧客ニーズへの柔軟な対応と地域社会への貢献が成功の鍵になると、MM総研は予測している。