週末や連休を使ったショートトリップやワンデーツーリングに行くときに、初心者が抑えておくべきポイントを、稚内のショートトリップを例に実践した内容を紹介しよう。

【目的地と期間】

目的地が決まったら、何時から走り出せるか考えよう。空港や駅なら到着時間プラス作業時間がかかる。空港の規模や装備によって差はあるが、駅や空港に到着してからスタートするまでは1時間程度みればいい。そこから日没までが走行時間の目安だ。

▼参考ルート:【絶景レポ】北海道最北端「白い道」&「オロロンライン」をグラベルバイクで走る

羽田空港を出発し、最速で稚内空港に到着するのは8時15分発のANA4715に搭乗、札幌でANA4841に乗り換えて11時15分着するパターンだ。直行便は12時25分着。

日没は18時前だから、初日の走行時間は4時間半ぐらい。してみると70分の差は小さくないが、チケット代も安いし、手間もかからないので直行便を選んだ。

空港までのアクセスは、私の場合、羽田空港までは高速バスか電車の2択。到着時間の確実性は電車にアドバンテージがあるが、大きな荷物を持って移動するならバスのほうがラクだ。ただし、路線バスは自転車の積み込みが出来ない場合も多い。比較的、空港に向かう高速バスは柔軟に対応してくれるが、事前に必ずバス会社に連絡をしよう。同じ行き先でも運行会社によってルールが異なったり、同じ会社でも規約が変更していることもあるので、毎回、確認するように。

荷物室がいっぱいの場合は積み込み不可なこともある。電車で移動しても間に合うか? 間に合わない場合の対策も考えてバスの時刻表を確認しておこう。自家用車で空港まで行くという手もあるが、連休や週末だと駐車場が満車の可能性もある。レンタカーやタイムズカーシェアなら空港乗り捨て(ワンウェイ)サービスもあるが、事前に現地のホテルに送るという手もある。

【空港の設備をチェックする】

  • 大分空港のサイクルハブ。※更衣室は国内線ターミナル一階に移設。

続いては、到着空港についても調べておこう。大分や松山、広島のように自転車を組み立てるスペースや、着替え室がある空港もある。飛行機輪行ではタイヤの空気を抜くので、スポーツバイク用の仏式バルブに対応した空気入れが用意されていることもあるが、今回はフロアポンプ持参した。

なぜ!? と思う人もいるだろうが、適正な空気圧は快適性も向上するし、パンク防止の効果的である。ミニポンプで適正空気圧にするのはポンピング作業が大変だし、Co2ボンベだと分子が小さく、空気は抜けやすい。空港の近隣にある自転車屋で空気圧を確認するようにしよう。

組み上がったら、フロアポンプと飛行機用の輪行袋は空港のコインロッカーへ。手荷物預かり所やコインロッカーを前提にすると工具も携帯用だけでなく、ノーマルサイズを使えるので整備性が向上し、作業時間が短縮できる。ツーリング中はゆっくり走りたいので、組み立てや梱包に時間はできるだけ短時間で済ませたい。

たとえば、輪行で自転車にキズがつくのは嫌なので、今回もチェーンカッターを使った。面倒に思うかもしれないが、チェーンでフレームやホイールが傷つくのを防ぐために工夫をするぐらいなら、いっそ外してしまったほうがキズの心配もない。昨今、標準仕様になりつつあるミッシングリンク形式なら作業も簡単。あとは飛行機用の輪行袋を使う。これもトラブルや梱包時間を時短できる工夫だ。

時間短縮と安全性の向上を考えると、費用対効果は高いので、出発前に大型のコインロッカーがあるかwebで調べよう。復路が違う空港の場合は、日時指定で最寄りの営業所留めに送るという方法もある。

  • 稚内空港のコインロッカー。大型ロッカーなら飛行機用の輪行袋も折りたたんで収納できる。

【バッグ&アクセサリー】

  • ロッキーマウンテンのグラベルロードはツーリング車としても使い易く、欧米でも人気が高い。

荷物はできるだけ軽装にする基本。万全を期せば、荷物量はどんどん多くなるし、楽観しすぎると後で後悔する。私は専用工具を1つ持つのを躊躇ったせいで、走行不能になったことがある。そのためには軽量なアイテムにするか、アイテム数を減らす方法があるが、必要最小限を見極めるには経験を積み重ねるしかない。

バッグ類のセレクトは装備次第だが、ベースはハンドルバーバッグとトップチューブバッグ、サドルバッグの3つが基本。稚内ツーリングは日程も短く、身軽に走りたい。だからホテルに連泊して、走っている時は着替えや洗面道具を持たない。簡単に言えば、日帰りツーリングと一緒。必要なのは工具、カメラ、ウインドブレーカー、補給食だけである。

【ハンドルバーバッグ】

デジカメ、財布、ウインドブレーカーなど使用頻度が高いアイテムを入れる。使い勝手がいいので、ついつい大型を選びたくなるが、スタビライザーやサポーターが必要になる。また、脱着性も悪くなるので、容量は3〜5ℓ程度がオススメ。

  • 中に入れるアイテムの性格上、撥水・防汚加工が施されているのが望ましい。トピーク・チューブラーバッグ。

【トップチューブバッグ】

近年、一気にメジャーとなったのがトップチューブバックだ。グラベルライドやブルベ(長距離ライド)では必須の装備で、走行中にアクセスしやすいストレージのため、スマホや予備バッテリー、補給食を入れておくことが多い。バッグを選ぶときは、トップチューブに跨がったときに、身体と自転車のクリアランスを考慮すること。股下にスペースがないと、信号で着地したときに接触する場合もある。

  • スマホを表層に入れられるトピーク・ベントゥパックを選択。トップチューブバッグは用途に応じて、いくつか用意しておこう。

【サドルバッグ】

  • 予備チューブや携帯工具を入れるのに便利な小型サドルバッグ。

本格的なバイクパッキングでは大型のサドルバッグが人気だが、おすすめするのは、できるだけ小さなバッグだ。大型のサドルバッグはスタイリッシュであるが、重心が高くなる。さらに、しっかりと固定できないと立ち漕ぎのときにブラブラと動き、走行中に脚に当たるモノもある。

容量が大きければ装備を充実でき、それで助かることもある。一長一短ではあるが、高い位置のバッグを重くしないのはパッキングのセオリー。そこは頭の片隅に入れておこう。

【ボトル&ボトルケージ】

今回は2種類のボトルケージを使った。一つはノーマル、もう一つフロントフォークに固定するタイプで、これはペットボトル対応タイプでミネラルウォーター用。いろいろな形状やサイズに対応できるベルクロテープ仕様にした。

ボトルはサーモスの真空断熱スポーツボトルを2つ用意した。これはちょっとした贅沢装備だ。ポリエチレン製のノーマルボトルでも問題はないが、保温ボトルがあればコンビニでドリップしたコーヒーを入れたり、冷たいままのスポーツドリンクが飲める。ノーマルボトルよりも重くなるが、ドリンク類のクオリティが一気に上がる。デメリットを差し引いても価値のあるアイテムだ。

  • 補水ポイントが少ないので、ドリンクによって太さを可変させられるトピーク“モジュラージャバケージ”を装着。荷物が多いときは、ボトル用ではなくカーゴケージを取り付ける。

  • サーモス・真空断熱スポーツボトルの飲み口は2種類。手前は立ち止まって飲む保温・保冷タイプ。奥は飲み口をくわえて飲める保冷タイプ。

【その他】

今回のツーリングではパンク修理関係のツールをギアバッグにまとめて、ダウンチューブに取り付けた。さらに、携帯用ツールは中空シャフトの中に入る“BBハイドツール”を採用。少しでも重心を下げ、車体中央に配置して“ロッキーマウンテン”の走行性能を損なわないようにした。

  • BBハイドツールは中空クランク軸に収納し、必要な時だけ取り出して使える。

  • テールランプは後続車への視認性を高めるために常に発光させておこう。

自転車の撮影をするときにあると便利なのが、簡易スタンドの“フラッシュスタンド スリムX”だ。撮影するときのコツは、背景をできるだけシンプルにすること。自転車は細い線で構成されているので、ガードレールに立てかけるだけでも存在が薄くなる。そんなときにスタンドがあると撮影しやすい。また、カメラを向ける角度や高さを工夫し、ハンドルやコントロールレバーが重なるようにすると上手に撮れる。

  • BBハイト(地面からBBまでの距離)が大きいと、傾きが大きくなるが、撮影している最中に自転車が倒れてしまうことはなかった。