民法改正により、近々離婚後の財産分与の請求期限が2年から5年に延長されることが決定しています。具体的な施行日は未定ですが、民法改正に合わせ、令和6年11月5日の社会保障審議会(年金部会)で離婚による年金分割の請求期限が2年から5年に延長されることが検討されています。

◆離婚時年金分割とは?

離婚時年金分割とは、平成19年4月以降の離婚に対して、元夫婦双方の結婚期間中の厚生年金記録を当事者間で分割できる制度で、合意分割と3号分割があります。

合意分割は元夫婦の合意、または公正証書作成や家庭裁判所での手続きにより、厚生年金記録を上限50%の割合で分割します。

3号分割とは平成20年4月以降の第3号被保険者が相手の合意を取らずに50%の厚生年金記録の分割を受けることができます。

そもそも第3号被保険者とは第2号被保険者(厚生年金加入者=会社員や公務員)の被扶養者のことを指します(妻であることが多いです)。

◆離婚後2年以内に請求を!今後は5年以内に延長される!

離婚時年金分割の請求期限は、離婚日または内縁解消、婚姻の取り消しの翌日から原則2年以内と決められています。ところが民法改正により離婚後財産分与の請求期限が2年から5年に延長されるため、離婚時年金分割の請求期限も離婚日の翌日から5年に延長されます。

◆離婚後に年金分割って合意してもらえる?

平成20年4月以降の第3号被保険者だった期間なら、一方的に請求しても3号分割で元配偶者から厚生年金記録を50%受けることができますが、合意分割は簡単にいかない場合もあるでしょう。

扶養されていた第3号被保険者期間でも平成19年3月以前なら元配偶者の「合意」が必要ですし、平成19年4月以降、例えばワンオペで家事育児を引き受けて月10万円未満のパート収入で社会保険に加入していた期間も元配偶者の「合意」が必要です。元配偶者が「年金を分割するなんて! これは全額、俺(私)の財産だ!」と強く主張して、合意分割が難航したらどうなるのでしょう?

◆年金分割請求期限の特例も延長?

分割の協議が難航した場合、次の場合の翌日から6カ月以内に限り、年金分割請求ができます。

・離婚から2年を経過する前に、審判申立または調停申立を行って、本来請求期限(2年)経過後または経過前6カ月以内に審判または調停が確定した日。

・按分割合に関する附帯処分を求める申立を行って、本来の請求期限(2年)経過後、または経過前の6カ月以内に按分割合を定めた判決または和解が確定した日。

要するに現在は離婚後2年以内に、審判や調停申し立てを行い、確定した日から6カ月以内に年金分割請求する必要があるのです。民法改正が施行されれば、年金分割について離婚後5年以内に審判や調停申立をすればよくなるのでしょうか。分割の制度を知らないで離婚してしまっても、取り返せる期間が長くなるのですね。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

文=拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)