「目標は50試合にしていたので、もうちょっと投げられたかなというのは思いますね」。
ロッテの横山陸人は今季、目標に掲げた50試合登板に届かなかったものの、シーズン自己最多の43試合に登板して、3勝1敗18ホールド3セーブ、防御率1.71と抜群の安定感を誇り、シーズン終了後に行われた『ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12』の日本代表に選出されるなど充実の1年となった。
◆ 開幕一軍の切符を掴む
「開幕一軍を目指していますので、ずば抜けた投球、相手を圧倒できるような投球ができてくれば、開幕一軍に繋がると思いますし、そういうところを目指していきたいと思います」。
開幕一軍に向け、2月の練習試合、オープン戦からアピール。3月6日のDeNAとのオープン戦では、自己最速タイの156キロを計測するなど、1イニングをストレートで三者連続三振に仕留めた。
横山は「横浜スタジアムの時は良かったんですけど、その次のマリンで投げた時は感じもあまりよくなかった。そういう誤差というか、調子の波があるのはよくないと思うので、そういうところはしっかり詰めていけるようにやっていければいいのかなと思います」と課題を口にする。
良い時と悪い時は自身の中でしっかり理解して調整できているのだろうかーー。
「そうですね、はい。良いところも悪いところもあって、ちょっとの違いなんですけど、振り返ってここを使えていなかったと感じるところだったりとか、変に意識しすぎるところもある。そういうところは考え方だったりを考え直して、やっていければいいかなと思います」。
では、いい状態を継続するために必要なことはどう考えているのだろうかーー。
「自分の体自体、始まったばかりでフレッシュ。投球の考え方、意識する場所を自分の映像と、実際に投げていた時と振り返りながら、考え方とかを振り返ってやっていけばいいのかなと思います」。
練習試合、オープン戦は10試合・10イニングを投げて、イニング数を大きく上回る14奪三振、被安打8、与四球は2、防御率は2.70。登板した試合全てで三振を奪い、開幕一軍の切符を掴み取った。
◆ 開幕から安定した投球も…
開幕してからは3月29日の日本ハム戦で今季初登板を果たすと、4月3日のソフトバンク戦では4-2の延長12回に登板し今季初セーブ。4月7日のオリックス戦では5-2の9回に登板し、ZOZOマリンスタジアムで初セーブ。これが横山にとって同学年の佐々木朗希が先発して、勝ち試合の9回を横山が締める初めてのゲームでもあった。
「9回は試合を締めくくるというところで特別な回だと思いますし、重要な回になってくると思うので、そういうところはまだ自分の中では特別というか、意識するマウンドではあるのかなと思います」。
「もちろんプレッシャーもありますし、シーズンが始まったばかりなので今季初勝利もかかってくると思う。そういうところは多少、プレッシャーがかかりますけど、そういうのに負けないというか、楽しめるようになるのが一番。今のところはプレッシャーを自分で受け止めて、冷静に考えるようになってきている。そういうところでは、冷静になろうと。今はしっかり場面によっていろんなことを考えられるようになっています」。
ストレートに関しても、「オープン戦から多少、上がっていってはいたと思うんですけど、まだまだ自分の中では真っ直ぐは良くなるなという感じもあるので、最後の最後まで突き詰めていければいいのかなと思います」と変わらず威力のある力強いストレートを投げ込んでいた。
開幕からストレートを武器に抑えていた横山ではあったが、4月19日の日本ハム戦、3-3の9回にマウンドに上がるも、一死満塁から加藤豪将に押し出し四球を与えサヨナラ負けを喫し、その後は登板がなく、4月24日に一軍登録を抹消された。
「力みだったり、フォームのメカニック的なところがバラバラになってしまっていたのかなと思うので、そういうところをもう1回修正して次は力まないようにというか、力んでもしっかり自分のフォームで投げられるようにしていければいいのかなと思います」。
その中で、4月30日の日本ハム二軍戦から「ちょっとトライ的な要素なんですけど、試しにやってみたという感じで、大きな理由はないですね」と、走者がいない時に左足を上げた時にタメのないフォームで投げていた時期も。「実際に試合で投げてみて今の2回タメていた方が感覚的に良かったですし、フォームのはまりも良かったなという感じです」と5月18日のDeNA二軍戦から再び走者がいない時に二段モーション気味の投球フォームに戻した。
◆ 15試合連続無失点
6月5日に再昇格を果たすと、「とにかくまだまだいつ二軍に落とされてもおかしくない立場だと思うので、これからしっかり結果を出してなんとか一軍にしがみついてなんとか勝ちパターンで投げられるようにしていければいいかなと思います」と危機感を示し、同日の巨人戦で2失点を喫したが、6月7日の広島戦から7月27日の楽天戦にかけて15試合連続無失点。
この時期力で押し込む投球が目立った。
「ここ最近は結構しっかり投げられているのかなと思います」と好感触。「球速もしっかり出ているので、球質だったり、もちろんアドレナリンがすごい出てると思うんですけど、そういうところがいいのかなと思います」と続けた。
ストレートで押す投球が目立ったのも、それだけストレートの質が良いということなのだろうかーー。
「もちろんそれもそうですし、変化球というところもしっかり意識して投げられるところに投げられている。失投も何球かあるんですけど、しっかり投げ切るところは投げきれているので、そういうところは真っ直ぐがファウルになったりにつながっているのかなと思います」。
“ストレートの質”にこだわっているが、“継続”して良いストレートを投げるためにやっていることなどあるのだろうかーー。
「最初(一軍に戻って)来た時に感じはよくなってきてはいたんですけど、これっというものを掴めていなかった。こっち(一軍に)きて試合を投げながら、自分のハマるフォームというか、ここを意識すればこういう感じの球がいくという部分を見つけられた。そこが良かったのかなと思います」。
変化球に関しては「ランナーが出てる場面で投げさせてもらっているところで、失投というのが一番やってはいけないこと。間違う方向というところもしっかり意識しているんですけど、まだまだ間違った方向にミスしているところがある。そういうところはもう少し詰めていかないといけないのかなと思います」と課題を口にした。
変化球はスライダーの割合が多く、シンカーをあまり投げていないように見える。「自分の今の感覚の中でシンカーがあまり良くないので、キャッチボールで練習してやっていければいいのかなと思います」と教えてくれた。
シンカーを投げられない状況で、無失点に抑えていることは自分の中で成長を感じるかと質問すると、横山は「去年まではスライダーが自分の中でダメだったので、いずれかはスライダーもシンカーも両立していければいいんですけど、そういうところが今後の課題かなと思います」と語った。
◆ シンカー
そんな中で、8月2日のオリックス戦から再びシンカーを投げるようになり、8月4日のオリックス戦、1-0の8回二死走者なしで森友哉を2ボール2ストライクから投じた5球目に空振り三振を奪った142キロシンカーが良かった。
再びシンカーを投げるようなったきっかけについて横山は「寝る前とかに結構考えていて、こうやって投げたらかかるんじゃないかなというのがたまたまパッと思いつきました。試してみたら良かったという感じです」と明かした。
シンカーの球速が以前投げていた時よりも上がったように見える。「球速的に40とか出ているので、確かに速くはなっているかなと思います。しっかり変化もしているので、そういうのがいいのかなと思います」。
公式戦でシンカーを再び投げるようになるまで、「色々自分の中でこうした方がいいんじゃないかというのを試していたんですけど、なかなかうまくいかずにずっとグダグダしていた。今回新しく自分の中でもっとこうしたらいいんじゃないかなとやった結果がそれが良かったので、結果的にはよくなったので良かったと思います」と、試行錯誤を繰り返したことで自分の中で良い感覚を見つけた。
ストレート、スライダーにシンカーも加わり、投球の幅が広がった。「そうですね、ただストレートが自分の武器なのでそこは忘れずに、変化球も活かしてやっていければいいかなと思います」。横山の言葉通り、8月24日のオリックス戦では0-0の7回に登板し、1イニングを10球中9球がストレートという力勝負でねじ伏せた。
今季まで一軍投手コーチを務めた小野晋吾コーチ(来季からプロスカウト)は「春先は特に結構、なかなかしっくりこなくて苦しんでいたんですけど、シンカーにしてもスライダーにしてもコントロールできるようになってきている。その中でもストレートの強さも出てきている。今は良い状態じゃないかなと思います。3球種が操れていると思うので、いい場面でいい働きをしてくれていると思います」と評価した。
◆ 夏場以降も安定
昨季は夏場以降打ち込まれるケースが多かったが、8月は9試合・9イニングを投げて6ホールド1セーブ、防御率0.00、9月も10試合・10回1/3を投げ6ホールド、防御率2.61と昨季の反省をしっかりと活かした。
8月を無失点で終えられた要因に9月3日の取材で、「今年上がった時に結構自分のフォームでの注意点がはっきりして、それを継続して修正できているというか、いい状態を保てている。そういうところが良くなっているのかなと思います。自分の悪いところが明確にわかったというのが、それで良くなっているのかなと思います」と説明した。
悪かった部分について「去年は疲れてくると下半身が使えていないというところで、上半身だけで速い球を投げようとかばかり考えていました。今はしっかり下から動いて、ボールに伝わるというところを意識して投げられているので、球速の安定に繋がっているのかなと思います」と自己分析。
「(上半身と下半身の)連動性が良くなっていると思いますし、しっかりとカード頭にスクワットを入れるようにして下半身に刺激を入れて、フォームの中で力が入れやすいようにとずっと継続してやっています。そういうのがすごくいい結果につながっているのかなと思います」。
シーズン最終盤、楽天と熾烈なクライマックスシリーズ進出争いを繰り広げた。「そういうプレッシャーは考えずに目の前の1試合1試合、ベストのパフォーマンスを出せるようにやっていければいいのかなと思っています」。
ロッテは10月1日の4位・楽天との直接対決に勝利し、CS進出を決める。日本ハムとのCSファーストステージでは、第2戦でプロ5年目でCS初登板を果たした。2-0の7回一死一、二塁で先発・小島和哉の後を受けてマウンドに上がると、マルティネスの打席中に暴投でそれぞれ進塁を許し、マルティネスの遊ゴロの間に三塁走者を生還されてしまうも、水野達稀を見逃し三振に斬ってとった。
初のCSマウンドに「ファンの方の声援であったり、今回ビジターだったんですけど、すごい声援だったのでいつもより緊張感はありましたけど、いつも通りの自分の球は投げられたのかなと思います」と振り返った。
マリーンズの戦いが終わった後も、「もちろんチームとしても個人としても日本代表のユニホームを背負っている以上は恥のない投球というか、情けない投球はできないと思うので、自分にプレッシャーをかけてしっかりやっていけたらいいのかなと思います」とプレミア12の日本代表の一員として腕を振った。
プレミア12まで戦いぬき、シーズンオフの期間が短くなるが、「その分、多く実戦がつめると思うので、それをプラスに捉えて、休むところはオフシーズンになったら休んで、また来年に向けて繋がってくるのでいいかなと思います」と10月18日の取材時点でこう明かしていた。
今季の投球を踏まえれば、来季はセットアッパー、その先のクローザーへの期待も高まる。「今年は去年以上の成績を出せているんですけど、もっともっと上があると思うので、もっともっと高みを目指してというか、いい成績を目指して来年以降やっていければいいかなと思います」。現状に満足することなく、さらなる高みを目指していく。
取材・文=岩下雄太