東京商工リサーチは2024年12月16日、「最低賃金1,500円に関するアンケート」調査の結果を発表した。同調査は2024年12月2~9日に5,277社を対象にインターネットで実施した。 ※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
「政府は、最低賃金を2020年代に全国平均1,500円に引き上げる目標を掲げているが貴社は、あと5年以内に時給1,500円に引き上げることは可能か?(択一回答)」か尋ねると、最多は、「不可能」の48.4%(5,277社中、2,558社)で、約5割の企業が最低賃金1,500円への対応が困難と回答した。
一方で、「すでに時給1,500円以上を達成」が15.1%(802社)、「可能」も36.3%(1,917社)で合計51.5%(2,719社)の企業は対応可能だった。 規模別では、 「不可能」は大企業34.7%(420社中、146社)、中小企業49.6%(4,857社中、2,412社)で、中小企業が14.9ポイント上回った。 産業別は、「すでに達成」は金融・保険業が33.3%(60社中、20社)、情報通信業が30.6%(300社中、92社)で3割を超えた。一方、「不可能」は小売業が62.3%(276社中、172社)、製造業が60.7%(1,361社中、827社)で6割を超えた。
時給1,000円以上の地域(16都道府県)で、「すでに時給1,500円以上を達成」している割合が10%以上は12都府県に及んだ。一方、時給1,000円未満の地域(31県)は、「不可能」が60%以上は19県に及び、地域によって差が大きかった。 続いて、最低賃金を5年以内に1,500円に引き上げることが「不可能」と回答した企業に、どうすれば可能になるか、その条件を聞いた。2,366社から回答を得た。
最多は、「賃上げ促進税制の拡充」の49.8%(2,366社中、1,180社)で半数を占めた。次いで、「生産性向上に向けた投資への助成、税制優遇」41.2%(976社)、「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」31.6%(748社)と続く。
規模別では、「賃上げ促進税制の拡充」は大企業が56.5%(129社中、73社)、中小企業が49.4%(2,237社中、1,107社)で、大企業が7.1ポイント上回った。「解雇規制の柔軟化」は大企業が20.9%(27社)、中小企業が26.5%(594社)で、中小企業が5.6ポイント上回った。 産業別では、運輸業は「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」が最大の53.5%(114社中、61社)。情報通信業や不動産業、金融・保険業は「解雇規制の柔軟化」がいずれも30%を超えた。
自由回答では、「取引先の価格改定への理解」(サービス業他、資本金1億円未満)、「価格転嫁の促進」(製造業、資本金1億円以上)など、価格転嫁が最大のポイントになっている。
最低賃金1,500円に向けて、中小企業から実現にかなり厳しい声が出ている。業績拡大のほか、収益強化が課題で、さらに税制拡充や投資への助成など、政策的なバックアップを求める声も多い。
一方、「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」など、正当な競争を求める声も上がっている。政策支援や生産性向上の自助努力が遅れると、最低賃金をトリガーにした企業経営の二極化が拡大する可能性もある。