ロッテ・藤岡裕大(撮影=岩下雄太)

 「できたこともあれば、できなかったこともある。それは毎年なんですけど、どうですかね、良いところもあれば悪いところもあったシーズンかなと思います」。

 ロッテの藤岡裕大は、今季をこのように振り返った。今季は「いい背番号をもらったと思うので、結果で応えるだけ」と背番号が『4』から西岡剛、鈴木大地、福田秀平が背負った『7』に変更し、守備でも「基本をできるようになっての応用だと思うので、まずは基本をしっかりやろうと思います」とショートからセカンドにコンバート。

 昨シーズン終了後にZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習で、「(23年は)シングルヒットが多く、長打があまり出なかった。そこをもう少し伸ばせたら出塁率が上がったと思う。来年(24年)はもう少し長打率を上げたいなと思ってオフから取り組みたいなと思います」と、新シーズンに向けて“長打率アップ”を掲げた。

 シーズンオフは「ウエイトもしっかりやりましたし、技術的なところも長打が伸びるような打ち方を研究してやるようにしています」と、“長打率アップ”するために意識を高く持って取り組んだ。

 石垣島春季キャンプでは、ライブBPで二保旭からライトへ本塁打を放つなど、早速その“長打力”を示した。オープン戦で左足首を捻挫したが、開幕に間に合い3月29日の日本ハムとの開幕戦に『1番・セカンド』でスタメン出場し、第1打席に今季チーム初安打となる安打をセンター前に弾き返すなど2安打。日本ハムとの開幕3連戦全ての試合で安打を放ち、4月4日のソフトバンク戦では「まずは先制点を取りたかったので、塁に出ることを考えて打ちに行きました。ファウルにならずにいい形で打つことができてよかったです」と今季第1号ソロ。

 4月6日に左ふくらはぎの張りにより一軍登録抹消。4月16日のオイシックス戦で実戦復帰を果たすと、4月19日に一軍再昇格と短期間で復帰した。4月27日の楽天戦では、1-0の7回一死走者なしで鈴木大地が放ったセンターへ抜けそうな打球を逆シングルでキャッチし一塁へジャンピングスローでアウトと、今季から挑戦するセカンドで好守備を見せた。

 5月に入ってからは5日の楽天戦、0-0の初回無死二塁の第1打席、岸が1ボール2ストライクから投じた4球目のチェンジアップを中飛で二塁走者・岡大海を三塁に進め、角中勝也の犠飛に繋げれば、7回には3-1の7回二死二塁の第4打席、「追加点が欲しかったので、ランナーを返すことができて良かった」と岸孝之が1ストライクからセンター前に追加点となる適時打を放った。

 7日の西武戦では「前の打席でチャンスを潰しているので、何とか一点と思って打席に入りました!」と6回に2点適時二塁打を放つと、10日の日本ハム戦では「いいところに飛んでくれました」と5回に適時三塁打。長打で打点を挙げていたが、5月19日に故障で再び一軍登録を抹消。

 6月14日に一軍復帰すると、同月23日のソフトバンク戦で3-5の9回一死一塁の第5打席、オスナに対して2球で追い込まれるもそこからボールを4球連続で見送り、3ボール2ストライクからの6球目カットボールを見送り四球。ソトの一時逆転3ランに繋げた。

◆ 追い込まれてからも粘って四球

 今季の藤岡は2球で追い込まれながらも、そこから粘って四球を選ぶ打席が多かった。7月5日の西武戦でも、3-0の7回無死走者なしの第4打席、豆田泰志に対して2球で追い込まれるもボールを見極め3ボール2ストライクとし、6球目の148キロストレートで四球。

 8月7日のソフトバンク戦でも、4-2の7回一死走者なしの第4打席、津森宥紀に対して2球で簡単に追い込まれるもファウルのあと、4球連続でボールを選び、3ボール2ストライクから7球目のインコース151キロストレートを見送り四球。

 8月28日の西武戦、2-3の8回二死三塁の第4打席、平良海馬に対し2球で追い込まれるもそこからファウル、ボール球を選び、3ボール2ストライクから7球目に暴投で同点に追いつき、10球目の141キロスライダーを見送り四球を選んだ。

 9月14日の西武戦と9月26日のオリックス戦では5打席で30球を投げさせるなど、球数も投げさせた。

 粘って四球が多かったことに関して藤岡は「追い込まれたらなんとかボール球我慢してというのは常に意識を持っています。それは去年も四球を取りましたし、今年も四球はそれなりに取れたので、そこは自信を持って来年もやりたいと思います」と振り返った。

 昨季は380打席で54四球、今季は369打席で46四球だった。

◆ 2番という打順

 今季は2番という打順も多く、走者を進めるバッティングも目立った。

 7月27日の楽天戦では、0-0の初回無死一塁の第1打席、ポンセが2ストライクから投じた4球目の134キロチェンジアップで一塁走者・岡が二塁盗塁成功。無死二塁となり、1ボール2ストライクからの6球目の127キロカーブを二ゴロで二塁走者・岡を三塁へ進める進塁打。ソトのレフト前適時打で先制に繋げた。

 2番打者として、無死二塁の時にセカンドゴロで走者をすすめ、ポランコ、ソトに繋げる考えがあったのだろうかーー。

 「そうですね、はい。ありました。初回とか点が欲しいところは右に打つというのは、はい。当てるバッティングというのではなくて、しっかり自分のスイングで右に打てるようにと思ってやりました」。

 進塁打だけでなく、9月14日の西武戦では、0-0の初回無死一塁の第1打席、羽田慎之介が1ボール2ストライクから投じた4球目のスライダーをセンター前に運び、スタートを切っていた一塁走者・岡が三塁へ進み、続くポランコの二併の間に三塁走者の岡が先制のホームを踏んだ。結果的にこの1点を守りきり勝利した。

◆ 長打

 今季“長打率アップ”を掲げた中で、本塁打はシーズン自己最多タイの5本塁打、長打率はシーズン自己最高の.353だった。

 シーズンを終えて長打について「もうちょっとできたなと。怪我もあったので、試合数が少なくなってしまった、はい」とポツリ。

 それでも、8月30日のソフトバンク戦、3-0の4回二死一塁の第3打席、有原航平が1ストライクから投じた外角132キロチェンジアップを右中間破る適時二塁打、9月17日の楽天戦、3-3の10回一死二塁の第5打席、渡辺翔太が1ボールから投じた2球目のスプリットをレフトの頭を越える適時二塁打は良かった。

 「ホームランもそうですけど、二塁打。三塁打はちょっと難しいのでアレですけど、二塁打を増やしていけたらなと思います」。

 来季に向け11月11日の取材で「毎年そうですけど、スイングスピードを求めながら、体もしっかり作って。打つことを中心にやっていきたいと思います」と、打撃に力を入れていく考えを示していた。また、リーグ優勝するために必要なことについて藤岡は「個々の力」と話す。この冬を越えて来季は、今季以上に打って、チームの勝利に貢献する一打を数多く放ってほしい。

取材・文=岩下雄太