日本人の死因第1位である「がん」。2022年にがんで死亡した人は、男女合わせて38万人を超えています。このように、多くの人ががんで命を落としていますが、症状の進行を抑えるには、がん検診を受けてできるだけ早くがんを見つけることが重要です。今回は、がん検診の種類や受け方、対象者などを詳しく解説します。

■がんの現状

2022年の日本人の死因第1位は「がん」で、38万5797人(男性22万3291人、女性16万2506人)が亡くなっています。ちなみに、死因第2位は「心疾患(高血圧性除く)」で23万2964人が、死因第3位は「老衰」で17万9529人が亡くなっています。がんが死因の第1位となる状況は、1981年から続いています(厚生労働省「2022年人口動態統計(確定数)」)。

また、国立がん研究センターの2020年のデータによると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性62.1%(2人に1人)、女性48.9%(2人に1人)となっています。また、2022年のデータによると、日本人ががんで死亡する確率は男性25.1%(4人に1人)、女性17.5%(6人に1人)です。

そして、がんにもさまざまな種類がありますが、2020年のデータによると、がん罹患数の順位は以下のようになっています。※カッコ内は性別で分けた場合

1位: 大腸(男性は前立腺、女性は乳房)
2位: 肺(男性は大腸、女性は大腸)
3位: 胃(男性は肺、女性は肺)
4位: 乳房(男性は胃、女性は胃)
5位: 前立腺(男性は肝臓、女性は子宮)

一方、2022年のデータによると、がん死亡数の順位は以下の通りです。※カッコ内は性別で分けた場合

1位: 肺(男性は肺、女性は大腸)
2位: 大腸(男性は大腸、女性は肺)
3位: 胃(男性は胃、女性は膵臓)
4位: 膵臓(男性は膵臓、女性は乳房)
5位: 肝臓(男性は肝臓、女性は胃)

■がん検診を受けるにはどうすればいい?

がん検診の種類

がんを早い段階で見つけるには、健康診断だけでなく、「がん検診」を受けることが大切です。日本のがん検診には、市町村などの住民検診や職域検診に代表される「対策型検診」と人間ドックなどの「任意型検診」の2つがあります。

対策型検診は、対象集団全体のがん死亡率の減少を目的として、有効性が確立された検査方法で実施されている検診です。予防対策として行われる公共的な医療サービスであるため、費用は無料か少額の自己負担で済みます。市区町村のほか、職域・医療保険者等の保健事業として実施されているケースもあります。

一方の任意型検診は、個人の死亡リスクを下げる目的で、医療機関・検診機関などが任意で提供する医療サービスです。費用は基本的に全額自己負担で、人間ドックのほか「がんスクリーニング検査」なども任意型検診となります。さまざまな検診方法があり、中には有効性が確立していない検査方法が含まれていることもありますが、自分の目的に合わせて検診を選べるというメリットもあります。

がん検診の受け方

では、がん検診を受けるにはどうすればいいのでしょうか。市区町村のがん検診の場合、がん検診の案内が市区町村から郵送されてくることもありますが、自分から情報を集めないと検診を受けられない場合もあります。まずは、自分が住んでいる自治体のホームページや広報誌でがん検診について調べてみましょう。

検診日や予約の必要の有無、予約方法を確認し、予約が必要な場合は電話や郵送、インターネットで予約を行います。その後、医療機関や検診センターでがん検診を受けましょう。

働いている人の場合、職場の年1回の定期健康診断と併せてがん検診が行われることも多いです(職域検診)。そのため、自分で医療機関の予約を取らなくても、検診の機会を得られる可能性が高いですが、職場でがん検診が行われない場合は市区町村のがん検診に申し込みましょう。

がん検診は自覚症状のない時点で行われるため、がんが進行していない状態で見つけることができます。現在では、早期発見・早期治療によりがんの多くが治ります。自分は健康だと思っても、しっかりとがん検診を受けることが重要です。

■対策型検診5種類の内容と対象者、受診間隔

対策型検診には5種類あり、それぞれ内容や対象者、受診間隔が以下のように定められています。

胃がん検診…問診に加え、胃部エックス線検査または胃内視鏡検査のいずれか。対象者は50歳以上(当分の間、胃部エックス線検査については40歳以上に対し実施可)、2年に1回実施(当面の間、胃部エックス線検査については年1回実施可)。

子宮頸がん検診…20歳代は2年に1回、問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診を行う。30歳以上は2年に1回、問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診を行い、5年に1回(罹患リスクが高い人については1年後に受診)、問診、視診およびHPV検査単独法を行う(実施体制が整った自治体で選択可能)。

肺がん検診…質問(問診)、胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)細胞診。対象者は40歳以上(喀痰細胞診については、原則として50歳以上の重喫煙者(喫煙指数600以上の者)のみ)、年1回実施。

乳がん検診…質問(問診)および乳房エックス線検査(マンモグラフィ)、視診や触診は推奨しない。対象者は40歳以上、2年に1回実施。

大腸がん検診…問診および便潜血検査、対象者は40歳以上、年1回実施。

ちなみに、がん検診には「PET検査」と呼ばれるものもあります。PET検査は、静脈からFDG(放射線フッ素を付加したブドウ糖)を注射し、細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を、放射性フッ素を目印に画像にする検査方法です。

がん細胞は、通常の細胞よりブドウ糖を多く取り込む性質があるため、多くのブドウ糖が集まるところにはがんがある可能性が高いと考えられます。

また、CT検査を組み合わせる「PET-CT検査」もあります。PET検査とCT検査の画像を重ね合わせることにより、がんの有無や位置、広がりを高い精度で診断することができます。

最後にがん検診の重要性や必要性などについて、呼吸器内科の専門医に聞いてみました。

がん検診の目的は、がんを早期に発見し、適切な治療を行い、がんによる死亡を減少させることで、単に多くのがんをみつけることではありません。日本でさらにがんの死亡率を減らしていくためには、がん検診の受診率向上が課題であり、早期に発見することができればがんは決して怖い病気ではありません。

肺がんに関しては罹患数も多く、死亡数も一番多いがんです。肺がんは典型的な症状はなく、症状に乏しいこともあります。また症状が出現すると進行していることも多くあり、発見時にすでに治すことができなくなる可能性もあります。肺がん検診をうけることで早期に発見して適切な治療をおこなうことでがんによる死亡率を低下させることが期待できますし、また早期に発見することで身体への負担が少ない治療をうけることも可能になります。そのためには肺がん検診は年に1回は必ず定期的に受診するように心掛けて下さい。

その他、胃がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんも特定の方法で検診を受診することで死亡率を低下させることが科学的に証明されているがんで定期的な受診が推奨されています。がんが発見されることが怖くて受診したくない方もいると思いますが、がんであっても早期発見によって病状の悪化を防ぐことができますし、早期発見が健康で長生きするための第一歩です。

竹下 正文(たけした まさふみ)先生

一宮西病院 呼吸器内科/副院長、呼吸器内科部長
資格:日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医