◆心躍る瞬間「メジャーデビューしたとき」
松下:ゴスペラーズの皆さんのメジャーデビューは1994年12月。ちょうど30年前になりますね。
黒沢:そうなんです。実は、その前にインディーズデビューをしているのですが、そのときのメンバーとメジャーデビューしたときのメンバーが違うんです。アカペラサークルで活動していたときは同級生で組んでいましたが、就職活動だったり……。
松下:それぞれの道がありますよね。
黒沢:“そりゃそうだよね”ということで、3人抜けて。“さあ、どうする?”となったときに、よく知っている後輩で歌える人、そして、何よりも“プロになりたい”と思っている人がいいということで、(条件と合致した)後輩(酒井雄二さん、北山陽一さん、安岡 優さん)を入れてメジャーデビューしたんです。
松下:そういう(プロになりたい)方たちがすぐ周りにいらっしゃるのがすごいですね。
黒沢:続いたから良いようなものの(苦笑)。
松下:それだけ素晴らしい出会いだったのですね。
黒沢:それで、インディーズデビューしたときにすごく尽力してくださったのが、ラッツ&スターのベースボーカル・佐藤善雄さんだったんです。
佐藤さんはインディーズのレコード会社の代表をされていて、僕たちのことを応援してくださっていたので、(メンバーが変わったので)佐藤さんのところに「この5人でまた頑張りますから!」と報告しに行ったら、「実はソニーの人が来ているんだよね」と奥からソニーの方たちが出てきて、「2週間後にレコーディングします」「よろしくお願いします」となりまして。
松下:ええ!? そんないきなり決まるものなんですね!
黒沢:先にタイアップだけ決まっていたんです。めちゃめちゃトントン拍子じゃないですか?
松下:そうですよね。
黒沢:そこから必死に練習して、なんとか録りきって、メジャーデビューの日を迎えました。“メジャーデビューしたら世界が変わる”なんて思っていたんですよね。
松下:違う世界が見えると。
黒沢:“この日からスターだぞ”くらいに思っていたんです。でも、メジャーデビューした瞬間はワクワクしたけれど、その後は“思っていたのと違うなぁ”“おかしいなぁ”と……。レコード店に行っても、僕たちのCDが全然「面出し」されていないんです。
松下:(笑)。
黒沢:だから、売り場で自分たちのCDを一生懸命に探して一番前に出す、ということを繰り返していました。歩いていても全然声をかけられないし“なんでだろうなぁ”みたいな(笑)。
松下:メジャーデビューすることに対していろんなことを想像されていたのですね。
黒沢:そうですね。一瞬ときめいた後、静かにそのときめきがなくなっていく……という経験を1994年12月に味わいました(苦笑)。
◆メジャーデビューの“決め手”は?
松下:振り返ってみて、メジャーデビューを勝ち取った直接のきっかけは何だったと思いますか?
黒沢:これはハッキリしていて、やっぱり“オリジナル曲があったから”なんです。歌のうまい方は先輩にもたくさんいましたし、アカペラができるグループもたくさんいたんです。
そのなかで、(アカペラ)サークルの創始者の方が「Promise」という曲を書いていて、最初はわりと適当な英語の詞がついていたのですが、それをサークルの同期の人に詞を書き直してもらって、日本語にして歌っていたんです。それを観に来てくれていた佐藤善雄さんが「あれはオリジナルの曲?」と。
松下:そういったところにグループのカラーみたいなものが見えたんでしょうね。
黒沢:そうですね、やっぱり考え方でしょうね。今考えると、アカペラをただ単に歌がうまくて技術力のある人たちが楽しくやっているだけだと、やっぱりアマチュアなんだと思うんです。多分、そうじゃない人を求めていたんだと思います。
松下:なるほど。
黒沢:実は、佐藤さんのほかにも何人かに声をかけられたのですが、レコード会社に行くと、そのときも「オリジナルが欲しいね」と言われていましたね。
松下:やっぱり、それがグループのオリジナリティですもんね。
黒沢:そういうことですね。
<番組概要>
番組名:Grand Seiko presents My Time My Story
放送日時:毎週土曜 12:00~12:25
パーソナリティ:松下奈緒
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/mystory/