IVE×デヴィッド・ゲッタ「Supernova Love」実現の舞台裏とは? 坂本龍一「戦メリ」サンプリングの意図も明かす

洋の東西を代表するアーティスト同士のコラボが実現——K-POP界を代表するガールズグループのひとつであるIVE(アイヴ)とEDM界のレジェンド、デヴィッド・ゲッタがタッグを組み、シングル「Supernova Love」を11月にリリースした。この曲が特別である理由はそれだけではない。なんとこの曲は、故・坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」をサンプリングしているのだ。

今回のコラボの舞台裏に迫るべく、Rolling Stone Koreaは音楽プラットフォームTHE COLLAB Xの創設者で、East 2 West Entertainment Group (以下、E2W Group)とKDM Recordsのトップを務めるダニエル・キム(Daniel Kim)にインタビューを行った。

ーこんにちは、ダニエルさん。まずは読者のみなさまに自己紹介をお願いします。

ダニエル:みなさん、はじめまして。エンタメコンテンツの制作と配信を専門とするE2W GROUPとKDM Recordsの最高経営責任者(CEO)、そしてTV番組やライブなどの配信を行う音楽プラットフォームTHE COLLAB X 創設者のダニエル・キムです。このほかにもソングライター、プロデューサー、クリエイティブ・ディレクターとして、さらにはGODBOY名義でアーティストとしても活動しています。音楽を通じて人と人をつなぐこと、さまざまな文化やジャンルを融合させて唯一無二の作品をつくることに情熱を注いでいます。

ダニエル・キム

ーTHE COLLAB Xの第一弾リリースにIVEとデヴィッド・ゲッタを抜擢した理由は?

ダニエル:IVEはK-POP界でもっとも成功したガールズグループのひとつであり、韓国を象徴する存在です。彼女たちを選んだ理由は、THE COLLAB Xの記念すべき第一弾リリースとして、この国の”精髄”を体現するグループと仕事をしたいという想いがあったからです。「Supernova Love」は坂本龍一さんが作曲した有名な楽曲のメロディーをサンプリングしたものです。IVEの日本人メンバーを通じてグループと日本とのつながりを表現できることも、意義のあることだと思いました。

コラボ相手として、デヴィッド・ゲッタ以上の適任はいないと思いました。デヴィッドはグローバルレベルの人気と、文化や世代の垣根を越えてあらゆるオーディエンスの共感を誘う卓越した才能を持っています。デヴィッドの音楽は、世界中の人の心に響くのです。それは、伝説的な音楽家の坂本龍一さんにも言えることです。ですから、「Supernova Love」を坂本さんへのトリビュート・ソングにしたいとスターシップエンターテインメント(IVEが所属する韓国の芸能事務所)とIVE、そしてデヴィッドに伝えると、全員がすぐに賛同の意を表してくれました。こうして「Supernova Love」を世界中の人々に届けられることができ、IVEとデヴィッドには心から感謝しています。

坂本龍一への敬意、「戦メリ」をサンプリングした理由

ー坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」をサンプリングした理由は? ご自身にとって「Supernova Love」はどのような楽曲ですか?

ダニエル:私は5歳のときに家族と一緒に韓国からドイツに引っ越しました。そのときに身をもって”文化の壁”を体験したのです。映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)は、こうしたテーマを見事に捉えながら、愛は文化的・社会的障壁に打ち勝つことができることを描いた作品です。また、坂本さんがこの映画のために作った楽曲にも感銘を受け、いつかはコラボレーションという形でこの曲に対する賞賛を表したいと思っていました。そのようなわけで、「戦場のメリークリスマス」のメロディーを「Supernova Love」のなかで正式に使用できることになったときは——音楽業界でいうところの「クリアランスの取得」ですね——とても嬉しかったですし、名誉なことだと思いました。

「Supernova Love」は、ルールや文化、国といったあらゆる境界を越え、すべての人を深いレベルで結びつけてくれる”愛”を歌っています。坂本さんの楽曲を使用させていただくことは、彼のレガシーを讃える有意義な方法であると同時に、アートと音楽を通じて人々をつなぐ、というTHE COLLAB Xのメインテーマを体現できると感じました。坂本さんを敬愛してやまない、才能あふれるヨーロッパのソングライターのみなさんと一緒に仕事をする機会を与えられたという意味でも、「Supernova Love」はとても思い入れのある作品になりました。キャスティングと音楽を通してヨーロッパ文化とアジア文化の出合いを美しく描いた映画と真のつながりが感じられる作品になっていると思います。「Supernova Love」をリリースできたことは、私たち全員にとってとても感動的なことでした。今回のアイデアがまとまった1カ月後に坂本さんが亡くなったのですから。「Supernova Love」を坂本さんに捧げ、彼のレガシーを今後何年にもわたって次世代のオーディエンスと分かち合えることは名誉であると同時に、私たちに課せられた責任だと思っています。

ー「Supernova Love」を通して、オーディエンスにどんなメッセージを届けたいですか?

ダニエル:普遍的な愛というメッセージを世界中のみなさんに届けたいです。ちょうどホリデーシーズン前にリリースされたということもあり、この曲はいま与えられている幸せに感謝すること、互いに愛情を示し合うことの大切さに改めて気づかせてくれると思います。

映画『戦場のメリークリスマス』には、どんなに苦しいときも人が互いを思いやり、絆を育めることを示す瞬間が描かれています。それと同じように、この曲がホリデーシーズンを通してみなさんに温もりと平和、そして連帯感を届けられることを願っています。同時に、決して色褪せることのない坂本さんのレガシーと、今日の世界における彼の音楽の新たな意義を讃える素晴らしい方法になったと感じています。

ーリリースまでの道のりは、かなり大変だったのではないでしょうか?

ダニエル:大変でしたね。IVEとデヴィッドは、それぞれが唯一無二のスタイルを持つアーティストです。両者のバランスを保ちつつ、K-POPファンと洋楽ファンの両方にアピールする作品にしていくことは、なかなかのチャレンジでした。幼い頃から洋楽に慣れ親しんできたことと、K-POP業界での長年の経験のおかげで、ちょうどよいバランスを見つけることができました。結果的に「Supernova Love」は、東洋と西洋というふたつの世界の最良の部分が落とし込まれた作品になったと思います。

ビジネスの観点からすれば、IVEとデヴィッドの音楽がそれぞれのテリトリーを超えて共存共栄できる環境づくりに苦労しました。というのも、特に欧米で高いプレゼンスを誇るのはデヴィッドですが、アジアにおいてはIVEのほうが知られています。何カ月にもわたるプランニングと試行錯誤の結果、グローバルレベルで両者をサポートするための新レーベルの立ち上げとディストリビューション体制を構築することができました。

ありがたいことに、スターシップエンターテインメントとデヴィッドのマネジメントチームが手厚くサポートしてくれました。スターシップエンターテインメントがK-POP界のトップを走り続けている理由は、そのプロフェッショナリズムとチャレンジを恐れない姿勢にあると痛感しました。経験豊富なデヴィッドのマネジメントチームも、「Supernova Love」がグローバルリーチを獲得できるよう、重要な役割を果たしてくれました。

私たちは、世界中のオーディエンスとつながるための最高のプラットフォームをアーティストに提供する、という目標を分かち合ってきました。全員のチームワークのおかげでそれを実現することができ、感謝の気持ちでいっぱいです。

ー最後に、読者のみなさまにメッセージをお願いします!

ダニエル:「IVE x デヴィッド・ゲッタ」コラボに関しては、まだまだワクワクするようなサプライズを用意しています。詳細は、12月から順次公開予定です。今回の楽曲がそうであるように、今後のサプライズも世界初&唯一無二のものになることをお約束します。というわけで、「Supernova Love」の続報にぜひご期待ください!

2025年は、私たちの音楽を通じて世界をひとつにできるような素晴らしいコラボレーションをいくつも企画しています。K-POPスターと世界のトップアーティストとのグローバルコラボレーションを楽しみにしていてください。みなさんがあっと驚くようなものをお届けしますよ!

From Rolling Stone Korea

Photos Courtesy of Daniel Kim

IVE/デヴィッド・ゲッタ

「Supernova Love」

配信・購入:https://umj.lnk.to/DavidGuettaIVE_SL