KDDIと京セラは12月16日、ミリ波(28GHz帯)の通信エリアを効率的に拡張する無線中継技術の開発に成功したと発表した。自律的にエリアを形成・復旧するミリ波中継技術として、KDDI調べでは世界発とのこと。
ミリ波は、高度化する5Gおよび将来的な6Gの通信において活用が図られている、波長が1~10mmで周波数が30~300GHzの電波帯のこと。広い周波数帯域を確保できるために高速で大容量の通信を実現できるが、直進性が高く障害物の影響を受けやすいという欠点があり、また通信距離も他の周波数帯に比べると短い。このため、連続・緻密なエリア展開を行うには、基地局の設置場所の確保やバックホールとなる光ファイバー回線の敷設、およびそれらの運用コストという課題がある。
この基地局の設置場所とバックホール回線の敷設という問題を回避するひとつの手段が、中継器の活用だ。中継器は電源供給だけで動作し、バックホール回線も必要ないため、基地局設備よりも設置が簡単。コストも削減できる。今回の新技術は、この中継器に次のような3つの特徴を持たせることで、中継器によるエリア形成を効率よく行えるようにするものとなる。
受信・送信の動的な切り替え:従来の中継器はアンテナ面が受信機能・送信機能のいずれかを固定して持っており、受信用のアンテナを基地局(もしくは隣接する中継器)に向けるよう調整する必要があった。今回の新技術では、各アンテナ面に受信/送信の双方の機能を持たせ、役割を動的に切り替えて通信を行う。これにより、受信用アンテナを基地局や隣接する中継器に向けるという調整が不要となり、設置場所の自由度を高め、工事設計を簡略化できるようになる。
中継ルートの最適化:前述のとおり新技術による中継器ではアンテナ面の機能が固定されていないため、各中継器は複数の方向から受信するミリ波の電波のうち、もっとも品質のよい中継ルートを選択してメッシュ状のエリアを自律的に形成することができる。信号の劣化を検知した場合も、その時点で最適な中継ルートに瞬時に切り替えられるようになる。
中継器の小型軽量化:新技術による中継器はD216×W216×H246mmで重さ4.9kgと、一般的なミリ波用中継器と比較して大きさと重さを削減している。これにより設置性が向上し、街路灯などへの設置も可能となった。
こういった特徴をもつ新たな中継器を西新宿のビル街に設定して試験を行った結果、既存設備では道路のカバー率が33%だったところ、カバー率は99%まで向上した。さらにこの中継器で送信した電波は同一基地局から送信される電波と鑑賞しないため、電波干渉の設計を省略してミリ波エリアを拡大できることも確認したという。
両社はこの技術は6Gにおいても適用可能であり、高周波数帯の利用促進に大きく貢献するとしている。今後、トラフィックの増加を見込む繁華街/駅/競技場などでのさらなる高速で安定した通信サービスの提供に向け、2025年度の実用化を目指していくという。