NTT西日本は12月13日、大阪本社にてグループ6社の新規事業について紹介した。AI、ドローン、データ連携など、NTT西日本グループの強みを活かしたソリューションが勢揃いしている。関係者は「成長領域のさらなる拡大に向けて、各社で新規事業に注力しています。今年度は減収減益の予想ですが、これら新たな取り組みを起爆剤にして、2027年度にはV字回復を目指します」と意気込んだ。
■NTTビジネスソリューションズ『データ連携基盤サービス』の特徴
NTTビジネスソリューションズの『データ連携基盤サービス』は、自治体と連携したスマートシティの実現に向けた取り組み。内閣府が進める「デジタル田園都市国家構想」では、住民の暮らしを支える様々なサービスの間で必要なデータを連携・共有するシステムの整備が求められている。
そこで同社は『データ連携基盤サービス』に4つの特徴を持たせた。「データ仲介機能」は、データの蓄積・管理・連携を担う。「API接続」により、さまざまなサービスと連携する。「地図基盤」は、データ連携基盤に蓄積されたデータを住民などが自由に抽出して地図上に表示させるもの。「開発者ポータル」では、蓄積されたデータ、APIを検索して確認できるようにする。
サービスの目指す世界観として、担当者は「今後、さまざまなシステムやデータを統合することで、住民、そのエリアを訪問される方々がさまざまな分野を横断・連携したサービスによる価値を享受できるようにします。都市をつないだ地域間連携も実現します。これにより、個人個人に最適化されたサービスが提供できる社会をめざしていきます」と説明する。
■NTTフィールドテクノ『AudinAI』の活用で、安心安全のまちづくりに貢献
NTTフィールドテクノでは『AudinAI』を活用したインフラ設備の診断サービスを提供する。たとえば同社が日常業務で使用している車のドラレコデータを活用し、AIによる劣化診断システムを連携することで道路構造物の錆、路面塗装の剥離、路面のひび割れなどを検知。これにより自治体の巡回点検を代行する。またカーブミラー、ガードレールなどの台帳整備にも活用。安心安全のまちづくりに貢献する。
ドローンによる設備点検サービスも提供する。橋梁本体、橋梁添架管路、鉄塔などの点検をサポート。西日本全県にドローンパイロットを配置して、空撮などの要望にも応える。
このほか、埋設物の工事を行うときの立ち会い受付のオンライン化を進めている。従来であれば、工事の際はガス、電力、上下水道、通信、鉄道の各事業者に個別に申請する必要があった。これを「立会Web」で一括受付を可能にする。作業者側、事業者側の双方の負担を減らし、未申請による掘削事故の低減にも貢献する。
■地域創生Coデザイン研究所、AIと森林DXでまちづくり活性化へ
地域創生Coデザイン研究所では『森林DX/AIを活用したまちづくり活性化の取り組み』を進めている。森林DXについては、環境省・経済産業省・農林水産省が進めている森林吸収系の「J-クレジット制度」をサポート。自治体など森林の保有者に対して、準備(可能性調査:山林の選定、収支算定、市場調査など)、J-クレジット創出(申請支援と創出支援:CO2吸収量の算出、モニタリング報告書の作成、審査期間対応など)、J-クレジット販売(流通支援:購入者の調査・探索・斡旋など)といった「長期かつ煩雑な手続き」(担当者)をワンストップで請け負う。
またAIを活用したまちづくり活性化の取り組みでは、地域の会議にAIを参加させることで議論の盛り上げにひと役を買うことを考えている。担当者は「交通、飲食、土産店、宿泊、観光協会といった地域の”会議”は、なかなか円滑には進まないものです。そこには人間関係が絡むほか、そもそも目標・利害関係が一致しない、そして内部競争、あるいは同調圧力もあるでしょう。そこで生成AIを議論に参加させて、人の言いにくい意見、まったく違った側面からの意見を言わせます」と説明する。
実際、今年(2024年)10月には福岡県大牟田市にて「会議シンギュラリティ ~AIたちと考えるこれからの大牟田」を開催。参加者たちからは「ロボットから意見が出ることによって、こちらも意見を出しやすくなる」「思わぬアイデア、きっかけのヒントになる」「コミュニティの中での議論が円滑になるのを感じました」といった声が聞かれている。
■NTTマーケティングアクトProCX、生成AIと人の融合で次世代型コンタクトセンターをめざす
NTTマーケティングアクトProCXでは、コンタクト(コール)センターにて生成AIを活用することを考えている。たとえば従来であれば、業務をはじめるにあたってオペレーターはたくさんのマニュアルに目を通す必要があった。こうした煩雑さが原因で、オペレーターが定着しない、あるいは顧客からの問い合わせの回答に時間がかかる、ということが現場では起きている。そこで同社では、膨大な業務マニュアルを生成AIに読み込まることでオペレーターの検索精度を向上させる「応対支援機能」、電話での問い合わせをテキスト化して自動要約する「応対要約機能」などを提供して、オペレーターの対応品質の向上と顧客満足度スコアの向上を実現する。
では、生成AIを活用することで将来的には、コールセンターには人が要らなくなるのだろうか。同社では「人とデジタルの融合が大事になると考えています。顧客に合わせた臨機応変な対応は、オペレーターさんがいてこそ実現します。コールセンターの未来として、有人対応領域ではロイヤルカスタマーへの特別な対応などに集中して、生成AIと人が融合したセンターの運営を目指していけたら」としている。
■ジャパン・インフラ・ウェイマークは、ドローン活用で社会課題を解決へ
ジャパン・インフラ・ウェイマークは道路橋、トンネルなどのインフラのメンテナンスを行う企業。『ボート型ドローン点検サービス』は全方向に水面移動できるドローンを用いた点検サービスで、これまで潜水士などの人力で実施してきた洗掘(せんくつ)調査を代替する。担当者は「増水などの影響で事故の危険が生じたり、透過性の低い濁水中では撮影した写真が不鮮明になり形状把握ができないケースも多々ありました。ボート型ドローン点検サービスにより、安全かつ効率的な溝橋点検と洗掘調査を可能にします」とアピールする。
ユニークなドローンの自社開発も進めている。たとえば、風力発電で使用中の風車が動いている状態でも点検できる『風車無停止点検ドローン』をNTTアクセスサービスシステム研究所と共同開発中。また、ドローンに落雷させることで人や建物への被害を未然に防ぐ『耐雷・誘雷ドローン』をNTT宇宙環境エネルギー研究所と共同で開発している。
■テルウェル西日本の『清掃コンサルサービス』- 清掃を効率化へ
テルウェル西日本は『清掃コンサルサービス』を紹介した。清掃を効率的に行いたい、コストは圧縮したいが人の手で清掃したような綺麗さは求めたい、というビルのオーナー / ビル会社の要望に応えるもの。たとえばセンサーでトイレなどの利用状況を把握し、時期・天候による清掃周期も加味することで、効率良くユーザーが求める清掃品質を実現するとしている。
今後は、立哨・巡回する警備ロボットと連携することで、汚れている箇所を素早く見つけて清掃ロボットを向かわせるなどのサービスも開発していきたい考え。
■NTT西日本 イノベーション戦略室、シームレスな遠隔コミュニケーションの実現
最後にNTT西日本 イノベーション戦略室が、シームレスな遠隔コミュニケーションの実現に向けた取り組みを紹介した。次世代情報通信基盤IOWN(アイオン)による超高精細・超低遅延なサービスの開発に注力している同社。等身大ビデオコミュニケーション「tonari」(トナリ)を提供するtonari社と連携して、NTT西日本が運営する「QUINTBRIDGE」と「LINKSPARK OSAKA」の2つの拠点でIOWN APNによる常時接続を実現させている。
両拠点は、映像も音声も遅延なく結ばれている。このため、対面と変わらない自然なリモートコミュニケーションが行える。担当者は「遠隔地を結んでいるのに、あたかも同じ空間にいる相手と喋っているような錯覚に陥ります。今後、新たなコミュニケーションの手段としてこれを確立し、将来的には医療、教育、エンタメなど対面でないと実現できないと言われてきた分野にも導入していけたら」と語った。