SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦2024 決勝戦が12月15日に渋谷区の「明治神宮会館」で行われました。本棋戦はファン投票と予選通過で選ばれた東西所属の棋士各6名による東西対抗団体戦です。本記事では第5局として行われた、藤井聡太竜王・名人と伊藤匠叡王の対局を解説します。

先手藤井竜王・名人、後手伊藤叡王で始まった本局では、持ち時間が初手から30秒未満という超早指し戦のためか、非常にスリリングな対局が展開され、92手目で伊藤叡王が勝利しました。

序盤、先手の得意戦法である角換わりで戦いの幕が開けました。やがて、後手は早繰り銀を志向。これはなかなかに珍しい展開で、盤面が一気に緊張感を帯びたように見えました。さらに後手は7筋、6筋と銀を進め、とうとう5筋の先手銀に自らの銀をぶつけるという、対局早々に両者の銀がぶつかり合う激しい展開となります。

さらに銀の後ろに角を配置。相手陣を斜めに切り裂く趣向を見せます。これに対し、先手はあえて角道を開け、さらに相手陣深くに角を打ち込み、両者の角による攻略がぶつかり合う局面となります。この後も互いに攻めを主張し、大駒を取り合う派手な展開が続きます。

終盤、後手玉の前に先手の角が成りつつ殴り込み、いよいよ絶体絶命かに見えましたが、後手は自玉の左に控えていた金を差し出します。これが一見、危険なようで、紙一重で先手の攻めを防ぎ、逆に攻めが途切れた刹那に先手玉を積ませてしまう展開につながる妙手でした。

防戦もむなしく、やがて秒を読まれた先手藤井竜王・名人が投了を告げ、ライバル対決は終局を迎えました。なお対抗戦全体では、他対局のすべてで西軍が勝利する結果となり、幕を閉じました。

  • 第9期叡王戦で火花を散らした両者。同棋戦は1月から本戦トーナメントがスタートする。写真は、第9期叡王戦五番勝負から(提供:日本将棋連盟)

    第9期叡王戦で火花を散らした両者。1月から、同棋戦は本戦トーナメントがスタートする。写真は、第9期叡王戦五番勝負から(提供:日本将棋連盟)