CureAppが、医師・有馬久富氏監修による「冬場に気をつけるべき血圧習慣5選」を紹介している。

寒い冬、心筋梗塞や脳卒中のリスクも

冬場は気温が低下することで全身の血管が収縮するため、一般的に夏場よりも血圧が上がりやすくなる。そのため心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まり、心疾患や脳血管疾患による月別の死亡数は夏場(6月～9月)に比べて冬場(12月～3月)に増加する。

  • 死因別にいた月別死亡数(2022年) 人口動態統計月報をもとに作成

高血圧の人にとってリスクが高まる冬場だが、クリスマスや忘・新年会、お正月など、楽しいイベントが目白押しなのもこの時期。日常生活でどのようなことに気をつければ良いのか。福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 主任教授の有馬先生に、冬場に気をつけるべき血圧習慣について聞いた。

冬場に気をつけるべき血圧習慣5選

1.頻度が多くなる飲み会でもアルコールは抑えめに

アルコール飲料を飲む習慣のある人は、血圧が高くなりやすいことが日本・米国・韓国の成人約2万人を対象とした研究で明らかになっている。たとえ飲酒量が少なくても、継続してアルコールを接種することで血圧値は上昇する。また、今現在、正常な血圧値だと安心している人でも、毎日のアルコール摂取量が多いと年々血圧が上昇してしまう可能性があるという。クリスマスや忘・新年会など楽しいイベントが多い年末年始だが、飲酒量を増やしてしまうと血圧上昇のリスクに繋がる。飲み会の場だからといって無理をせず、適量を守ることがリスク回避にとってとても重要だという。

2.急激な血圧上昇「モーニングサージ」対策

血圧は1日のうちでも朝の起床前後に上昇しやすくなる。この目覚めの前後で急激に血圧が上昇することを「モーニングサージ」と呼ぶ。日中は血圧値が正常にもかかわらず、朝だけ血圧が高い人は正常値の人と比較して脳卒中や心筋梗塞などのリスクが2.47倍高いと言われている。普段から血圧が高めの人は動脈硬化により血管内部が狭くなったり、加齢により動脈の弾力が失われていることが多いため、冬の朝こそ特に注意が必要だという。起床前に暖房のタイマー設定で部屋を暖かくしたり、起床直後はゆっくりと行動するよう心掛けたい。

3.忘・新年会、塩分摂取量に注意

忘・新年会のコース料理で鍋物が出てくることも多い。冬場はラーメンやおでんなど、温かいものを食べる機会が多く、特に汁物は塩分摂取量が増える傾向がある。日本高血圧学会が定める「高血圧治療ガイドライン2019」では、高血圧の人は総塩分摂取量を1日6gに抑えることを推奨している。ラーメンのスープを残したり、鍋物やお味噌汁は出汁をとって薄味とし、血圧を下げるカリウムを多く含む野菜をたっぷりと入れて具沢山にするなど、塩分摂取量を減らす意識を持ちたい。

4.家の中に潜む温度差対策

血圧の変動を招く原因の1つが"温度の変化"。季節の変わり目の気温の変化だけでなく、室内の温度差も血圧の乱高下を引き起こす可能性がある。10℃以上の差があるとヒートショックの危険性が高まると言われ、家の中でも温度差には注意が必要。温度差が生じやすいお風呂場、冬場に冷え込むキッチンやトイレなど、家の中でも気温の低い場所への移動は特に気をつけたい。できるだけ温度差をなくすために、脱衣所や浴室に暖房器具を設置する、シャワーを使って浴室内を暖める、お風呂のお湯の温度は41度以下にして入浴は10分程度にする、暖房がついていない部屋に行く際はガウンなどを羽織って暖かい服装で体温を保つなど、温度差対策を。

5.寒さに負けず定期的な運動を

寒いと外に出るのが面倒になり、運動不足になりがち。しかし、血圧が上がりやすい冬場だからこそ、適度な運動が大切。運動は定期的に(できれば毎日)、30分以上、中等度(ややきつく感じる)程度の有酸素運動(ウォーキング・ステップ運動・スロージョギング・ランニングなど)が推奨される。適切な運動療法により降圧効果が得られ、高血圧症が改善することが期待される。

高血圧治療の第一歩は生活習慣の改善から

高血圧の治療には、薬物療法(薬による治療)と、非薬物療法(生活習慣改善、いわゆる"薬じゃない治療")がある。高血圧の主な原因として考えられるのは、塩分の摂りすぎや運動不足といった生活習慣の乱れであり、生活習慣を改善することが高血圧治療の第一歩となる。ただ、一人で生活習慣を改善しようと思っても中々続かないことも。一人で継続することが難しいときは、医師と一緒に取り組むことも1つの手だという。薬が必要になった時や心配が生じた時も、医師に相談することで最適なアドバイスをもらうことができる。