J.D.パワーは12月11日、「2024年ホテル会員プログラム顧客満足度調査」の結果を発表した。調査は2024年10月上旬~10月中旬、ホテルの会員プログラムを直近1年以内に利用したことのある20~74歳の男女(グローバルブランド部門859人、国内系ブランド部門2,572人)を対象にインターネットで行われた。
5年ぶりの実施となった本調査では調査内容を大幅にリニューアルし、「グローバルブランド部門」と「国内系ブランド部門」に分けて調査が実施された。
総合満足度は、グローバルブランド部門平均が662ポイント(1,000ポイント満点)、国内系ブランド部門平均が656ポイントと、大きな差は見られなかった。満足度の測定にあたっては、「会員特典」、「ポイント制度」、「会員サイト/アプリ」、「ホテルからの各種提供情報」の4つのファクターを設定し、各ファクターの総合満足度に対する影響度をもとに、総合満足度スコアを算出した。各ファクターの影響度は、「会員特典」が29%と最も大きく、続いて「ポイント制度」が25%、「会員サイト/アプリ」が24%、「ホテルからの各種提供情報」が21%であった。ホテル会員プログラムは、特典の種類や有益さ、ポイントのためやすさや利用のしやすさなどが重視されるが、会員サイトやアプリの利便性、ホテルが提供する情報も満足度に一定の影響を与えていることがわかった。
加入理由はグローバルと国内系ブランドで異なる傾向
会員プログラムの加入理由は、グローバルブランドでは「無料宿泊特典や会員限定料金などの宿泊料金の優遇があるから」(28%)、「よく利用するホテルだから」(25%)、「宿泊時に利用できる特典が充実しているから」(24%)が上位に挙がった。一方、国内系ブランドでは「よく利用するホテルだから」(39%)、「チェックイン・チェックアウトの手続きが簡単になるから」(33%)、「無料宿泊特典や会員限定料金などの宿泊料金の優遇があるから」(26%)が上位となった。ホテル利用頻度の高さや宿泊料金の優遇は共通の理由として挙げられているが、グローバルブランドは各種特典の充実が、国内系ブランドは宿泊時の手続きの簡便さが加入動機として多く挙げられる。
この1年間で利用した会員特典は、グローバルブランドでは「客室アップグレード」(28%)、「アーリーチェックイン/レイトチェックアウト」(26%)、「朝食の無料提供・割引」(25%)、「ホテルの料飲施設の割引・利用特典」(25%)、「宿泊料金の割引特典/無料宿泊特典」(25%)が、国内系ブランドでは「宿泊料金の割引特典/無料宿泊特典」(24%)、「クイックチェックイン/アウト」(22%)、「朝食の無料提供・割引」(18%)が多く挙がった。グローバルブランドではホテル滞在をより楽しむ特典が、国内系ブランドでは料金優遇と宿泊時の簡単な手続きが上位となった。
ポイント利用の有無で満足度に大きな差
今回の調査対象の16プログラム中15プログラムがポイント制度を導入している。過去1年間でのポイントの利用内容を見ると、「宿泊料金に利用・充当/宿泊券への交換/無料宿泊特典の利用」がグローバルブランド(39%)、国内系ブランド(29%)共に最も多く挙がった。
一方、獲得したポイントをこの1年間で利用しなかった割合は、グローバルブランドで32%、国内系ブランドでは半数近い48%であった。ポイントを利用しなかった理由として、いずれも「利用したい特典・サービスと交換するにはポイントが足りないから」が最も多く挙がった。
ポイントを利用した場合と利用しなかった場合の総合満足度の差は、グローバルブランド、国内系ブランド共に100ポイント以上あり、ポイント利用の有無で満足度に大きな違いが見られた。特に国内系ブランドは、グローバルブランドと比較してポイントの利用率が低く、利用しやすいポイント制度の構築が満足度向上の1つのカギになると考えられる。
また、総合満足度が高い会員ほど、そのプログラムが利用できるホテルに優先的に泊まりたい意向が高いことがグローバルブランド、国内系ブランド共に確認された。宿泊料金の高騰が続く中、宿泊者にとっては宿泊料金の優遇や特典の利用が滞在のクオリティ向上につながり、事業者側にとっては、顧客の囲い込みや直接予約を促進する手段となるのが会員プログラムである。各会員プログラムにおいては、会員の新規獲得のみならず、既存会員が何にメリットを感じ、高い満足度を維持していくかを詳細に分析し、特典の設定やポイント制度設計をしていくことが重要となる。
顧客満足度ランキング グローバルブランド部門
グローバルブランド部門の総合満足度1位は「Marriott Bonvoy」(686ポイント)が獲得した。「会員特典」、「ポイント制度」、「会員サイト/アプリ」、「ホテルからの各種提供情報」の全4ファクターで最高評価となった。続く2位は「Hilton Honors」(655ポイント)、3位「ALL-Accor Live Limitless」(644ポイント)という結果に。
顧客満足度ランキング 国内系ブランド部門
国内系ブランド部門の1位は「東横INNクラブカード」(669ポイント)が獲得した。「会員特典」、「ポイント制度」、「会員サイト/アプリ」の3ファクターで最高評価となった。2位は「ルートインホテルズインターネット予約会員」(662ポイント)、3位「リーガメンバーズ」(659ポイント)となった。