クラシエ薬品はこのほど、2024年に売上を伸ばした注目の漢方薬をまとめた「KAMPO OF THE YEAR 2024」を発表した。
漢方薬市場は一般用・医療用ともに直近6箇年で拡大
薬局やドラッグストアで販売される一般用漢方薬市場、並びに医療用漢方薬市場は、直近6箇年で拡大傾向が続いている。
購買指数は50歳前後を分かれ目に若年層では上昇、高齢者層では低下傾向に
今年度の一般用漢方薬市場では、50-54歳前後を分かれ目に若年層需要の増加傾向が見られた一方で、高齢者層では減少傾向が見られた。購入個数と来店者数を基に算出した購買指数(PI値)を年代ごとに比較した下記のグラフでは、20代・30代ではいずれも前年比105%以上の伸長率となった。昨年に引き続き、年代が高くなるほど伸長率は減少傾向にあり、既存ユーザーの高齢者層だけでなく、漢方薬の需要は幅広い年代により広がっている様子が窺える。
2024年の漢方トレンド1: 感染症の流行で「咳・のど」処方が伸長
一般用漢方薬市場において、2023年11月~2024年10月の期間で最も伸長率が高かった漢方処方は、痰が切れづらい激しいせきに対応する「麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)」という結果になった。2位にはのど関連の処方である「響声破笛丸(きょうせいはてきがん)」3位・4位には「五虎湯(ごことう)」「桔梗湯(ききょうとう)」が入り、上位は全て"咳・のど"に関連する処方がランクインしている。
咳・のどに関する処方が伸びた要因の1つに、8年ぶりにみられたマイコプラズマ肺炎の大流行や2024年度上半期のインフルエンザの流行などが考えられる。これらの感染症では、のどの痛みや咳の症状を伴うことが多く、漢方薬だけでなく西洋薬も含めて鎮咳去痰剤や風邪薬への需要増につながったことが予想される。
2024年の漢方トレンド2: 気象病や二日酔いへの対処として「五苓散」需要が増加
2024年の漢方薬市場において、注目すべきトレンドの1つに「五苓散」があげられる。「五苓散」は全身の水分バランスの乱れを整え、余分な水分を排出することで頭痛やむくみを改善する漢方薬。直近5年間で、五苓散の販売数は69%増と急速に成長している。この背景には、医療用と一般用の双方における処方名の認知拡大が要因として考えられる。医療用市場では、コロナの5類移行に伴う「受診控え」の解消によって受診者総数の増加を背景に、頭痛や急性胃腸炎で受診する患者数の増加とそれに伴う五苓散の処方増加がみられた。一方、一般用市場では気象病や天気頭痛など、近年になって顕在化された病名の広がりと共に頭痛やめまいへの対処として「五苓散」の使用が広がった他、5類移行後完全に回復した外食需要による二日酔い、昨今関心の高まるむくみ対策まで幅広く使用されている。
実際にSNS上では、2023年から2024年にかけて「五苓散」に関連する投稿数は、昨年対比で269%と大幅に増加している。また「五苓散」と合わせて投稿されるキーワードを比較してみると、2023年は"気象病"対策のワードが多かったのに対し、今年は"二日酔い"対策へと変化している傾向もみられた。
「五苓散」は20~40代からの支持が高まる傾向も
購入商品のランキングを比較したところ、男女共に20~40代で「五苓散」が上位に入っており、特に20代の男性で顕著に表れた。SNS上での「五苓散」の拡散と効能に対する認知の拡大が、20~40代の購買に少なくない影響を及ぼした可能性が考えられる。
2025年以降は「セルフケア」の定着がポイントに
超高齢化社会の到来や健康寿命の延伸といった社会の変化に伴い、2025年以降は生活者の予防医学や健康寿命への意識がより一層高まることが予想され、「セルフケア」(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)の定着が進んでいくと考えられる。
漢方薬は、冷え症やイライラといった「病院に行ってよいのかわからない」「行くほどでもない」ような、日常の些細な不調にも対応できるという特徴がある。ストレッサーの増加など、社会の変化に伴い不調が多様化する中で、漢方薬の視点からも「セルフケア」の定着は加速していくと考えられる。