[写真]=小澤一郎

 スペインに遠征中のU-16日本代表は14日、バレンシア州アリカンテにて再びU-17スペイン代表と国際親善試合を行った(U−17スペイン代表も2008年1月1日以降生まれの選手構成)。結果は2-2の引き分け。日本の得点者は葛西夢吹(湘南ベルマーレU−18)と加茂結斗(柏レイソルU−18)。

 2日前の1試合目で1−5という衝撃的大敗を喫した日本だったが、この日は立ち上がりから攻守でアグレッシブなサッカーを披露し5分、19分と得点を奪い前半を2-0でリードして折り返した。19分の2点目は加茂の左足ミドルがバーをかすめて突き刺さるスーパーゴールで数は少なかったが詰めかけた観客をどよめかせた。試合後、加茂は「前を向いた時にセンターバックとの距離が空いていて感覚的に『いける』と思ったのと、監督からもミドルシュートを求められていたので振ってみたらいいところに当たりました」と振り返った。

 大敗した初戦との違い、改善点について廣山望監督は「まず一つは自信を持ってボールを持ち運びできたこと。それによってスペインを押し下げることができた」と分析し、次のように続けた。

「初戦は、見えぬプレッシャーを受けて選択肢を狭められているような感じを受けてプレーしていました。選択肢を狭められた中でも選択肢を持てるかどうかが大事で、極論スペインの選手たちは選択肢を狭められた状態でも、ある選択肢の中で一番いいものをパッと選べます」

「日本の選手たちは、まだそこまで相手が迫っていないんだけれど、その選択肢を狭められている感に屈してしまうようなところがある。でも今日は、相手のプレッシャーをひっくり返すとか、恐れず斜め前のボランチにつけるとか、前回ほぼなかったサイドチェンジも入れて、空いてくる中からも入っていけた。正当な順序を踏んだ攻撃も意識してできたと思います」

 実際、前半は樺山文代志(興国高)、神田泰斗(大宮アルディージャU-18)のダブルボランチ経由での中央からのボール前進が目立ち、左SB藤井翔太(横浜F・マリノスユース)の左足から一発で局面ないしサイドを変えるロングフィードも効果的に繰り出せていた。

 ただ2-0で折り返した後半は2失点。後半開始直後に1点を返された後は3点目を奪う決定機を複数回手にしながら決定力に欠き、みすみす主導権と勢いをスペインに受け渡してしまった。選手交代を使いながらスペインが攻守でテンポアップしていったのに対し、日本は選手交代を使っても防戦一方でカウンターの精度も距離が長くなる分落ちていった。

 90分トータルで見た時のゲームマネージメント、勝負所を感じてプレス強度やパス回しのスピードを調節する駆け引き、といった面ではこの2試合目もスペインに軍配が上がった。ただ、1−5もの大差がついた初戦を踏まえればこの第2戦での2−2のスコア、内容は大いなる改善かつ前進であることに疑いの余地はない。

「1試合目の課題を意識してやることで改善できるのは日本のチームの良さだと思います。ただ結果論で言うと点差を広げるチャンスを決めきれず同点に追いつかれてしまったのは大きな課題。そして、今日はリアルな課題。この相手に引き分けで悔しいと思えるところ、スタート地点に立てたと思います」

 廣山監督がこう述べた通り、サッカー日本代表においても世界が驚く“カイゼン”があることをスペインの地でも確かに示した。

取材・文=小澤一郎