中村憲剛[写真]=金田慎平

 元日本代表で川崎フロンターレOBの中村憲剛さんの引退試合が14日に行われ、イベント終了後に同氏が記者会見に登壇した。

 『Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu』に22,014人を動員した引退試合を終えて、憲剛さんは「本当に幸せな1日でした。ピッチ上の選手たち、ファン・サポーターの皆さん、自分の見ている景色は最高でした。選手たちも楽しかったと言ってくれたのがすべてかなと。自分がどうこうよりも、皆さんに楽しんでもらったのが何よりですし、皆さんが楽しむ姿を見て楽しんでいたので、言うことないです。ありがとうございます」と、あらためて出場選手と来場者へ感謝を述べた。

 現在44歳の憲剛さんは、中央大学から2003年に川崎Fに加入すると、以降はプロキャリアを川崎F一筋でプレー。2004年にJ2リーグで優勝を飾ると、2017年、2018年、2020年にはJ1リーグ優勝も果たしたほか、2019年にはYBCルヴァンカップ、2020年には天皇杯のタイトルも獲得。個人としては15度のJリーグ優秀選手賞、8度のJリーグベストイレブン、2016年にはJリーグ最優秀選手賞も受賞した。コロナ禍の2020シーズン限りで現役を引退した後も、川崎Fの新たな役職「FRO(エフアールオー)」に就任し、クラブの“バンディエラ”としてファン・サポーターから愛されてきた。

 憲剛さんは、川崎という土地とサポーターについて、「18年もいたので自分そのもの」と表現。そして、「皆さんとともに歩んで来させていただいたクラブであり選手なので、その感謝を伝えたいなと思っていました。川崎Fに入らなければ、僕はこういう選手になれていないと思いますし、皆さんに育ててもらいました」と繰り返し感謝を述べ、「1月に引退試合をやると決めたときから、川崎の皆さんに感謝を伝えるということが僕やみんなのテーマになりました。みんなが楽しんでくれたようで、良かったと思います」と、安堵の表情を浮かべた。

 エキシビションマッチでは、憲剛さんが幼い頃から憧れていたという元日本代表のラモス瑠偉さんや小学生時代に所属した府ロクサッカー少年団の2年先輩で元日本女子代表(なでしこジャパン)の澤穂希さんとともにプレー。そして、息子である龍剛さんとの夢の共演も果たした。

 この特別な時間について、憲剛さんは「息子は、生まれてすぐから等々力に来ていました。彼は初めて等々力のピッチに足を踏み入れたんですけど、親の自分がビックリするくらい普通にやれていたので、大したものだなと思いました。僕自身もラモスさんとウォーミングアップの時点でパス交換ができたことがたまらなくうれしくて、ラモスさんはずっと憧れていてサッカー選手を目指したので、『いま、ラモスと蹴ってる…俺』って思いました(笑)。ウォーミングアップの時点でテンションが上がりすぎたのは良くなかったと思いますけど、そのくらい嬉しかったです。最後は澤さんにも入っていただき、夢のような時間でした。『このままずっとサッカーできたらいいのに…』と思うくらいでした」と充実感に溢れる笑顔を見せてくれた。

 また、同試合には元レスリング世界女王の吉田沙保里さんも出場。憲剛さんが吉田さんのタックルを受ける一幕もあったが、「気づいたら倒れていました。これか、世界を制したタックルはこれかと(笑)。まさか等々力の芝生の上で体感するとは思っていなかったですけど…(笑)」と感想を語り、「吉田さんの参戦が決定したときから実はやってもらいたくて、わざと近づいていって小声で『タックル、タックル』といったら、しっかりやってくれました(笑)」、「どう考えてもイエローカードですけど」と舞台裏を冗談交じりで明かした。

 引退試合を終え、「悔いはない」と選手キャリアにあらためて区切りをつけた憲剛さん。今後の活動については「指導者や普及活動、解説業も含め、サッカーをみんなに知ってもらうために、自分の役割があると思います。これから先は決まっていないですが、自分の信念をもとに頑張っていきたいです。コツコツとやるだけです」と抱負を語った。