冬こそ訪れたい!クリスマスの街、アルザスのコルマールへ

パリは11月だというのに二日間雪が降り積もった。パリは東京と同様、雪は滅多に降らないため、少しでも降ると交通機関が混乱する。今年の冬は寒くなりそうだ…と思ったのも束の間、二日後には気温が16度まで上がり、雪は跡形もなく消えていった。気がつけばもう12月。街はすでにクリスマス一色に染まりつつある。

【画像】厳かでゴージャス。美しく煌めくアルザスのマルシェ・ド・ノエル(クリスマスマーケット)(写真35点)

クリスマスといえば、やはり「マルシェ・ド・ノエル(クリスマスマーケット)」で有名なアルザス地方が気になる。11月最終週、すでにマルシェ・ド・ノエルが始まったというニュースを見て、思い切って行ってみることにした。週末を使って計画を立てることにしたが、ここで問題が発生。アルザス地方は観光客に大人気で、特にコルマールのホテルはすでにオーバーツーリズムの影響を受けていた。手頃な宿泊施設はほとんど満室で、残ったホテルは1泊10万円以下では見つからない。民泊も同様の状況だった。平日にずらせば少し状況は改善し、1泊1万円前後の宿をなんとか確保することができた。目指すは、アルザス地方の小さな街コルマールだ。

この日はパリからコルマールへ直行便のTGVがなく、ストラスブールで降りて在来線に乗り換えるルートを選んだ。車で行けば6時間ほどのドライブだが、降雪もあって今回は電車を選んだ。パリ東駅を出発したTGVは予定通りストラスブールに到着したものの、在来線でのトラブルもあり、コルマールに到着したのは遅い時間だった。

夜のマルシェ・ド・ノエルを楽しもうと旧市街へ向かったが、コルマールは小さな街で、マルシェ・ド・ノエルはなんと19時で終了。到着時にはすでに店じまいしていた。パリならマルシェは深夜まで営業しているのに…と少し残念に思いつつも、イルミネーションに彩られたコルマールの街を散策した。

アルザス地方はドイツとの国境に接しており、その歴史の中でドイツ領になったりフランス領になったりを繰り返してきた。そのため、統治していた時代に建てられた建物の様式が入り混じり、フランスとドイツが融合した独特の町並みを作り上げている。コルマールに着くと、どこからともなく鐘の音が聞こえてくる。教会が多いせいだろうと感じたが、調べてみると、宗教戦争の時代にコルマールは一時スウェーデンの統治下にあったことがあり、その時代のプロテスタント教会も残っているらしい。

町並みの特徴的な建物といえば、「メゾン・ア・コロンバージュ(maison à colombages)」と呼ばれる木組みの家々だ。アルザス地方特有のこの建築様式は、壁がカラフルに塗られ、さらにクリスマスの飾りとイルミネーションで彩られている。その美しさにはワクワクせずにはいられない。夜の雰囲気だけでなく、昼間の太陽に照らされて見る建物のディテールもまた別の魅力を放つ。16世紀に建てられた建物が今も使われている街並みは、まるでおとぎ話の世界だ。

クリスマスの歴史にも思いを馳せてみた。クリスマスツリーの始まりは中世の「アダムとイブの日」の風習に由来し、エデンの園を象徴する「パラダイスツリー」としてモミの木が使われていたという。この木には禁断の果実を象徴するリンゴが飾られ、後に赤いガラスのオーナメントへと発展したそうだ。16世紀には、そこにろうそくが加えられ、キリストの光や救いを表す象徴となった。それが現在のイルミネーションのルーツだ。

また、フランスのクリスマスケーキといえば「ブッシュ・ド・ノエル」。これは中世の頃、12月24日に家族で薪を火にくべ、その灰をお守りとする風習に由来する。19世紀以降、暖房が普及し薪の使用が減ると、この伝統がデザートとして形を変えたのだという。

コルマールを歩きながら、クリスマスがヨーロッパでは日本のお正月のように家族と過ごす大切な行事であり、その一つ一つに深い歴史があることを思い出す良いきっかけとなった。陸続きのヨーロッパだからこそ生まれたこの独特なアルザスの文化。小さな街ながら、歩くたびに新たな発見がある。何度でも訪れたいと思わせる魅力的な街だ。

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI