大正製薬は、風邪やインフルエンザに感染したときに重症化させないための有効な対策を、内科医・血液専門医である久住英二氏監修のもと公開した。

  • 風邪やインフルエンザに感染したときに重症化させないためにしていることは?

2024年11月、同社が全国の20代以上の男女1,000人を対象に「風邪やインフルエンザに感染したときに重症化させないためにしていること」を尋ねたところ、最も多いのは「病院に行き、処方薬をもらう」(449人)だった。

次いで、「水分を多めにとる」(418人)、「身体を温める」(328人)、「経口補水液やスポーツドリンクを飲む」(244人)と続いた。

感染時に免疫系統が正常にはたらくか否か?

  • 風邪やインフルエンザに感染したときに、重症化させないための有効な対策とは?

いざというときの免疫力を発揮するには、体内のところどころで起こっている「慢性炎症」を日頃から抑えておくことが鍵となるのだそう。

慢性炎症とは、感染症や外傷に対する一時的な急性炎症とは異なり、病原体や炎症の原因が排除された後も体内で長期間続く低レベルの炎症。糖尿病、高血圧をはじめ、肥満、運動不足、睡眠不足、老化などによって起こる体内の細胞ダメージが、免疫システムの働きを狂わせている状態を指すという。

感染症が重症化する状態は、いわば、免疫系が過剰に活性化されて制御が効かず、過剰な免疫反応が起こってしまう状態。炎症性サイトカイン(免疫細胞を活性化し、炎症を起こさせるたんぱく質)が大量に放出される「サイトカインストーム」が発生し、肺や他の臓器にダメージを与えてしまうという。

感染症の早期快復を意識した食事

・感染症を意識した腸活、救世主はタウリン

久住氏によると、腸内環境を整えることで、感染症の重症化リスクを下げることが期待できるといい、腸の免疫細胞の助けになるのが、イカ、タコ、牡蠣(かき)などの魚介類に多く含まれる「タウリン」だという。

また今年の11月、タウリンには、感染症にかかってしまった際に長引く疲労などの症状を抑制する可能性があることも発表された。

ウイルスを退治するために炎症性サイトカインが発生するが、その悪影響として痛み、せき、鼻水などの症状を引き起こしてしまう。このサイトカインの異常発生(サイトカインストーム)が重い症状につながるのだが、タウリンがこの異常を抑制する可能性があることが明らかに。さらにタウリンには細胞の抗酸化作用や保護効果もあり、体内のさまざまな臓器の慢性炎症を抑制してくれることもわかっているという。

・乳酸菌や食物繊維など、平常時の腸活フードのとり方にも注意

腸内環境を整えるためのふだんの腸活では、ヨーグルトなどの乳酸菌を含む食品や食物繊維が有効であるものの、感染症罹患(りかん)時は胃腸の働きが低下していることもあり注意が必要。

多くの成人は、乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の分泌が十分でないため乳糖を消化しづらい場合があり、感染症罹患時の胃腸が弱っている際は下痢やガスの発生を引き起こす可能性があるという。

感染症罹患時は、りんごやバナナに含まれるペクチンなどの水溶性食物繊維であれば刺激の少ない整腸作用が期待できるほか、よく煮込んだ野菜スープも腸への負担が少なく、溶性食物繊維のβ-グルカンを含む大麦や全キノコ類を煮込んで柔らかくし、食物繊維をとるのもおすすめとのこと。

・エネルギー代謝を助けるビタミンB群

感染症の際、体は病原体と戦うために多くのエネルギーを消費する。ビタミンB群は炭水化物や脂肪、たんぱく質の代謝を助け、エネルギーを効率よく供給することに役立つという。

また、ビタミンB6は免疫細胞の生成や抗体の産生に不可欠なほか、ビタミンB12は赤血球の生成を助け、酸素を体中に運ぶことで回復を促進すると言われている。そのため、肉(特に赤身)、魚介類(特に貝類)、卵、葉物野菜(ビタミンB6が豊富)を、おじややスープなど消化に良い調理法で取り入れるのがおすすめだという。

・免疫細胞や抗体の材料になるたんぱく質

感染症に罹患すると、体は免疫細胞を新たに作り出して病原体と戦うといい、主要な材料が卵、鶏肉(ささみやむね肉)、魚(タラ、ヒラメなどの白身魚)、大豆製品(豆腐)などのたんぱく質なのだそう。

血流とリンパの流れを促進

食事のほかに感染症を重症化させないための対策として、「ストレッチや入浴などで血流とリンパの流れを促進する」「飲酒や喫煙を控える」「質の良い睡眠を確保して自律神経を整える」などがあげられている。

なお、重症化させないための対策を意識しつつ、体調が悪化した場合は自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが最も重要。高熱や呼吸困難が続く場合には、早めに医師に相談し、必要な治療を受けるようにしよう。

  • 【監修】久住英二氏

立川パークスクリニック院長の久住英二氏は、内科医・血液専門医で、特に血液内科と旅行医学が専門。1999年新潟大学医学部卒業。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。