2024年も“東京ゲームショウ”なdynabookが登場
「dynabook RZ Special Edition」は14型ディスプレイを搭載したクラムシェルスタイルノートPCだ。東京ゲームショウ2024に合わせて登場した(それゆえに、この記事では「dynabook RZ TGS2024」と呼ぶ)。
Dynabook社は東京ゲームショウにあわせて特別仕様のモデルを参考出展しているが、今回もその流れに沿った投入といえる。
昨年開催した東京ゲームショウ2023でも、CPUにCore i7-1370Pを搭載し、「Adobe Creative Cloudコンプリートプラン」(1カ月無料体験版)と「Xbox Game Pass Ultimate 1 month」(1カ月無料体験版)をセットした“Special Edition”を参考出展した同社。
今年の東京ゲームショウ2024ではCPUにCore Ultra 7 155Hを搭載した上に、RPGゲームアプリ「ヘブンバーンズレッド」(以下、ヘブバン)のコラボレーションモデルという構成の新モデルが現れた。
dynabook RZ TGS2024では、コラボ特典としてヘブバンコラボ壁紙4種類とPCスキンシール、ステッカー、マウスパッド、マイクロファイバークロスが同梱する。
PCスキンシールはヘブバン主人公の茅森月歌をデザインしたモノトーンスクラッチ画風で、天面全体に添付できる。ステッカーは登場キャラクターなど12枚が用意されて、こちらも天面や本体に貼ってヘブバンデコレーションが楽しめる。
また、ヘブバンコラボとして用意されたグッズ系とは別に、TGSに連動した特別仕様として、これまでの“Special Edition”と同様に、5色同時発光に対応したマルチカラーバックライトキーボードを備えている。
また、アプリケーションでも従来のSpecial Editionと同じく、Adobe Creative Cloudeコンプリートプランの1カ月無料体験版も用意している。
ゲーミングモバイルPCとしての実力は?
本機はDynabook社のモバイルノートPCのラインナップ……というより現役モバイルノートPCにおいても、高い処理能力を持つモデルの1つといえる。
dynabook RZ TGS2024のCPUは現時点においてCore Ultra 7 155HとCore Ultra 5 125Hを選択できる。今回評価した機材はCore Ultra 7 155Hを搭載していた。
Core Ultra 7 155HはベースTDPが28W(最大ターボパワーは115Wに達する)となる“H”型番のラインナップだ。省電力を重視する薄型軽量のモバイルノートPCではTDPを抑えた“U”型番を採用するモデルが多いので、dynabook RZ TGS2024(に限らずdynabook RZシリーズ全般に言えることだが)は処理能力を重視していることがわかる。
Core Ultra 7 155Hは処理能力優先のPerformance-cores(Pコア)を6基、省電力を重視したEfficient-cores(Eコア)を8基組み込んでいるほか、低消費電力 Efficient-core(LPEコア)を2基備えている。Core Ultra 7 155Hは2023年末に登場した“Meteor Lake”に属し、Pコアはインテル ハイパースレッディング・テクノロジーに対応している。それゆえCPU全体としては16コア22スレッドとなる。
Core Ultraに統合されたグラフィックスは、Intel UHD Graphicsの系譜とは異なり、Xe-LPGを採用するIntel ARC Graphicsを採用している。
Xeコアは7基を組み込み、グラフィックスコアとしての動作クロックは最大で2.2GHzに達する。さらに、独立したAI専用エンジン(NPU)として「Intel AI Boost」を実装しており、AI処理に関するスピードを高速かつ高い電力効率で実行できる。
このほか、処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR5x-6400を採用。容量は32GBでユーザーによる増設はできない。ストレージは容量1TBのSSDで、試用機ではSamsungのMZVL21T0THDLU-00B07を搭載していた。接続バスはPCI Express 4.0 x4だ。
Core Ultra 7 155Hを搭載したdynabook RZ TGS2024の処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Time Spy、CINEBENCH 2024、CrystalDiskMark 8.0.5 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:黄金のレガシーを実施した。
比較対象としてCPUにCore i7-1360Pを搭載し、ディスプレイ解像度が1,920×1,080ドット、システムメモリがLPDDR5-4800 16GB、ストレージがSSD 512GB(PCI Express 3.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。
dynabook RZ TGS2024の主な仕様
CPU | Core Ultra 7 155H(P-cores6基+E-cores8基+LPE-cores2基、動作クロックP-cores1.4GHz/4.8GHz、E-cores900MHz/3.8GHz、L3キャッシュ容量24MB) |
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メモリ | 32GB (LPDDR5x-6400) |
ストレージ | SSD 1TB(PCIe 4.0 x4 NVMe、MZVL2512HCJQ Samsung) |
光学ドライブ | なし |
グラフィックス | Iris ARC Graphics (CPU統合) |
ディスプレイ | 14型 (1,920×1,200ドット) 光沢 |
ネットワーク | IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax対応無線LAN、Bluetooth 5.3 |
サイズ/重量 | W312.4×D224.0×H15.9mm/999g |
OS | Windows 11 Home 64bit |
ベンチマークテスト | dynabook RZ TGS2024 | 比較対象ノートPC(第13世代Core i7 TDP28Wモデル) |
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PCMark 10 | 5948 | 5487 |
PCMark 10 Essential | 9596 | 9988 |
PCMark 10 Productivity | 7219 | 6293 |
PCMark 10 Digital Content Creation | 8246 | 7132 |
CINEBENCH2024 CPU Multi | 590 | - |
CINEBENCH2024 CPU Single | 100 | - |
CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Read | 6989.27 | 6791.71 |
CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Write | 4895.97 | 4899.35 |
3DMark Time Spy | 3759 | 1968 |
FFXIV:黄金のレガシー(最高品質) | 3745 | - |
第13世代のCore i7 TDP28Wモデルを搭載した比較対象ノートPCと比べ、Core Ultraプロセッサーを採用したdynabook RZ TGS2024が全体的に上回る結果となった。
特に、3DMarkなどのグラフィックス性能で大きな差が見られた。これは、Intel ARC Graphicsの描画性能がアーキテクチャの進化によって強化されたことを如実に示したものといえるだろう。
Core Ultraプロセッサーの搭載により、バッテリー駆動時間が第13世代Coreプロセッサー搭載モデルと比べて約10~14%改善したとされているが、バッテリー駆動時間を評価するPCMark 10 Battery Life Benchmarkで測定したところ、Modern Officeのスコアは17時間42分(Performance 5471)となった。
ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスに、それぞれ設定している。なお、PCMark 10のSystem informationで検出した内蔵するバッテリーの容量は64,988mAhだった。
外観をじっくりチェック。ポートの豊富さに注目
モバイルノートPCの基本仕様となる本体サイズは幅312.4×奥行き224.0×厚さ15.9mmと従来のdynabook Rシリーズと変わらない。本体カラーもこれまでと同じく「ダークテックブルー」の一択だ。
本体に搭載するインタフェースは、Thunderbolt 4(USB4 Type-C)×2基(電源コネクタ兼用)、USB 3.2(Gen1)Type-A×2基(1基はUSBパワーオフアンドチャージ機能に対応)、マイク入力/ヘッドホン出力端子のほかに、映像出力用としてHDMI出力端子、そして、日本のビジネス用途では依然として必須……というより、もはやネットワーク対戦用の高速有線LAN接続用としてRJ-45を用意する。
メディア用インタフェースとしてmicroSDスロットも載せている。無線接続インタフェースでは、Wi-Fi 6E(IEEE802.11ax)とBluetooth 5.3を利用できる。
ディスプレイも従来のdynabook Rシリーズ同様に、1,920×1,200ドットの解像度を実現した14型サイズを採用する。映り込みが少ないノングレア処理を施しているほか、狭額ベゼルと細身のヒンジを用いるなど画面に集中できる工夫を施している。
軽量薄型のモバイルノートPCでは、重さと堅牢性およびバッテリー駆動時間はトレードオフになりがちだ。
本機ではボディ素材にマグネシウム合金を採用し、MIL-STD-810Hの10項目(落下、粉塵、高度、高温、低温、温度変化、湿度、振動、衝撃、太陽光照射)をクリア。バッテリー駆動時間はJEITA 3.0測定法で約11時間(動画再生時)、約31時間(アイドル時)、JEITA 2.0測定法で約36.0時間を実現した。
dynabook RZシリーズというと、ついつい「ハイパフォーマンスビジネスモバイルノート」というイメージが強い。しかし、Dynabook社がTGSに必ずSpecial Editionを投入するように、ライト向けゲーミングPCとしての実力も備えていると言っていいだろう。
その意味で、特典のPCスキンシールのデザインのような「切れ味鋭い」スタイルや処理能力を生かしたdynabook RZ TGS2024は“モバイルゲーミングPC”に相応しいといえるのではないだろうか。
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