「だんじり祭り」というと、大阪・岸和田の荒々しいだんじり祭りが有名だ。
だが、愛媛県西条市にも「だんじり祭り」と呼ばれる伝統的な祭りがあり、町をあげて2日間ぶっ続きで開催されるという。西条市に行き、祭りの準備にいそしむ青年たちに聞くと「西条祭りは日本一だと思います。」と答える。
力むことなく、当然日本一だと言わんばかりだ。
「こんな田舎に渋谷のスクランブル交差点くらいの人が集まる。77台のだんじりの熱気で湯気が出る!」大げさに言ってるんじゃないの?でも77台はすごいね!
西条独自の食文化「いもたき」を楽しむお父さんは「岸和田のだんじりは曳くものですが、こっちのだんじりは担ぐんですよ。」えー?あんなもの担げるの?
商店街のお母さんたちは「だんじりが町中を回るの。夜中の12時くらいに出発して。ほんで2日間寝ずに。」寝ずにって、盛ってるでしょ?「迫力がハンパない!」そんなにすごいの?
会場は西条市内の伊曽乃神社。ここを深夜に出発し、1日30kmずつ、2日間で60km練り歩く。
10月15日深夜1時、ふだんは静かな神社に、高さ6m近いだんじりが勢ぞろいし、人も大勢集まっている!
だんじりには一つ一つ個性があり、こまやかな彫りが施され、なんと
1台約3000万円もするそうだ!
重さは600kg以上、これを20名程度でおみこしのように担ぐ。マジか!
岸和田のだんじりは車輪がついて荒々しく曳き回すが、こっちも負けず劣らず勇壮だ。1800年以上の歴史がある祭りと言われ、伊曽乃神社に奉納されるだんじりは77台。他に飯積神社、嘉母神社、石岡神社に奉納されるものも合わせるとだんじりは100台以上!
朝6時、だんじりが動き出し、60kmの行程がスタート。伊勢音頭を歌いながら町を練り歩く。
今年2024年の祭りは10月15日(火)と16日(水)つまり平日。なのにすごい人出なのはなぜ?はっぴを着たおっちゃんに聞くと「会社は休み。会社を選ぶ時も祭りに休めるところにした。」と平気で言う。西条市中心部の学校は休校になり、飲食店や公共サービス、たとえばゴミ収集も休みになるという。本当に町をあげてのお祭りなのだ。
祭りは2日目に突入、16日の深夜1時も盛り上がっている。この時、だんじりを底から持ち上げるのを「差し上げ」と呼ぶそうだ。きれいに上がるとわーっと盛り上がる。この祭りの見せ場の一つだ。だが担ぎ手の息が合わないとバランスを崩し、倒れそうになる。危ない危ない!
夜が明け、朝になっても盛り下がることはない。タフだなあ。だが中には、撃沈してしまう人も。路上で寝ちゃって、大丈夫?「だんじりが来たら起きらい!」そこへだんじりが来たら、撃沈してた人が起き出した。おそるべきお祭り魂!
さて祭りの佳境が近づいた。「川入りがフィナーレなんです!」とおねえさんが教えてくれた。川入り?市内を流れる加茂川に行くと、77台のだんじりが土手にずらりと並んでいるではないか!何が始まるの?
「伊曽乃神社のお膝元だけが入れるようになってる。」と解説してくれる。伊曽乃神社周辺の集落11台のだんじりのみが川入りを許されているのだ。残りの66台は土手で見守る。
午後6時、暗くなるとだんじりの提灯に灯がともされ、幻想的な雰囲気になる。
さあ、川入りのスタートだ!11台のだんじりが川に入ると、会場はヒートアップ。子供たちが「ヨイトサー!」と盛り上がる。
神さんが川を渡ったら祭りが終わる。祭りを終わらせたくないから、神さんだんじりが通るのを他のだんじりが邪魔する。つまり川入りは、2日間の祭りの終わりを惜しむ行為なのだ。そう知ると、なんだかジーンとしてくる。
だんじりが川から上がり、祭りが終わった。また一年間、西条の人々はこの日を待って過ごすのだろう。
こんなにすごい祭りが、しかもだんじり祭りと呼ばれる祭りが岸和田とは別にあったとは!他にもいろんなお祭りを探して回らなきゃね!