「本物の富裕層」はどのようなお金の使い方をするのだろうか。「本物の富裕層」はお金を使っても、減らないというのだ。一体どういうことか。富裕層に特化したファイナンシャルプランナーとして活躍されている、『年収1億円思考』(経済界)の著者・江上治さんにお話をうかがった。

「本物の富裕層」はどのようなお金の使い方をするのだろうか。富裕層というと、自宅のほかに別荘を買って、何台もの高級車をガレージに並べたり、シーズンごとにブランド品を買い替えたりするといった姿を思い浮かべる人も少なくないだろう。

もちろん、このようなお金の使い方で資産を減らしてしまう「なんちゃって富裕層」のような人もいる。一方で、「本物の富裕層」はお金を使っても、減らないというのだ。一体どういうことか。富裕層に特化したファイナンシャルプランナーとして活躍されている、『年収1億円思考』の著者・江上治さんにお話をうかがった。

◆本物の富裕層は、お金を使っても減らない

――お金持ちの中にも、「本物の富裕層」といわゆる「なんちゃって富裕層」がいるといいますが、彼らの違いはどこにあるのでしょうか。

江上さん:本物の富裕層とは、永続的にお金を使っても減らない人だと私は思っています。私の周りにいる20人から30人ぐらいの、会社を上場させて長く成功している人を見ると、お金を使っても減らない。逆に、なんちゃって富裕層みたいな人たちは、見栄のために散財してしまうので、お金がある状態が続かない。仮想通貨で一瞬大儲けしてもすぐにお金がなくなったり、会社が軌道にのって数十億になったけど、すぐにその事業がダメになってしまったり。

――本物の富裕層は、お金を使っても減らないという点についてもう少し詳しく聞かせていただけますか。

江上さん:例えば、私が広報大使を務める「河口湖音楽と森の美術館」のオーナーのHさんは、コンサルタント会社を上場させ、60歳で退任されて、今75歳なんですけれども。彼は、お金の使い方や人の目利きが上手だと思いますね。

例年、Hさん主催の『河口湖の桜を見る会』というのがあって、おそらく10人以上の上場企業の社長が来ていると思います。そういった付き合いのある方々の事業を応援しようとか、(今回のようなイベントを)楽しんでもらおう、みたいな……投資用語でいうと「出資」みたいなものですかね。そういったことに時間とお金を使っているので、そこでお金を使ったとしても何かで返してもらえるんですね。彼らの事業を応援して、自分の美術館も応援してもらうというわけです。

美術館でイベントをしようというときは、大体100人くらいの人が集まってくれますし、この会には、ロメロ・ブリットという世界的に有名なブラジルポップアート界の巨匠が来てくれます。わざわざイベントのために来日してくれるんですよ。ブリットは、去年、美術館で展示をしてからのお付き合いですが、私も小さい絵を買わせていただいて、それが1年前と比べて20%くらい価値が上がっているんですね。しかも、イベントで絵を買ってくれた人にはサインもしてくれるんです。特別なサイン会があれば、みなさんまた集まってくれるじゃないですか。

彼らを応援することで、その人の価値も上がっていく。「この人と付き合うといいことあるよね」みたいな、本物の富裕層はそういったお金の使い方とか人の目利き、人の価値を上げるのがうまいと思いますね。

◆本物の富裕層を見分けるには、その人の周りにいる人を見ればいい

――先ほど、本物の富裕層は人の目利きが上手とのことでしたが、そのあたりについてもう少し具体的に教えていただけますか。

江上さん:例えば、10年ぐらいその人を尊敬して、協力している人やスタッフがいるかが、人間性やその人の魅力を知る方法の一つです。経営者やリーダーは、サポートしてくれる人なしでやりたいことを長く継続できません。信用されていなかったら、10年も助け続けてくれないと思うんですよね。なぜ10年かというと、10年存続する会社は全体の10%くらいしかなく、一つの事業を続けているというのは、周りの協力者がいたという実績でもあるので、10年という期間は一つの目安になる数字だと思うからです。

継続して協力してくれる人がいるかどうかはとても大事。人間的な魅力がない人には、やはり長期間助けてくれるスタッフやファン、お客様はつきにくいですから。

――「本物の富裕層」と「なんちゃって富裕層」の違いともいえるかもしれませんね。

江上さん:そうですね。なんちゃって富裕層みたいな人たちは、たまたまパーティーで会った芸能人とのツーショット写真をSNSに載せるなど、華やかに見せるのは上手ですけれど、実体は伴っていないというか。短期間で有名になった一部のインフルエンサーとかね。そういった人に長く応援してくれるファンはつきにくいです。

一方で、実業家の三崎優太さん(青汁王子)や与沢翼さんのように失敗から立ち直って、多くのファンを獲得しているインフルエンサーもいます。「本物の富裕層」は失敗の全体像を捉えてきちんと学びます。

◆本物の富裕層は失敗の振り返り方が上手

――具体的に、本物の富裕層は失敗の捉え方がどのように違うのでしょうか。

江上さん:当たり前ですが、人間誰でも失敗します。チャレンジが多い人ほど失敗の数も多いでしょう。企業を上場させて成功している人だって、若いころは相当失敗してるはずですよ。ただ、最終的に成功している本物の富裕層はその失敗の振り返り方がとても上手なんです。どういうときに失敗したのか、逆にどういったときにうまくいっているのか、をきちんと振り返って学ぶから次の行動に活かせる。過去の経験を基に、リスクを減らしながら次のチャレンジができるので、成功確率が高い打ち手を自然と選べるんです。

――失敗を内省して次に活かしている点が違うということですね。

江上さん:そうですね。同じような失敗を繰り返す人は、振り返りをしていないし、自己観察ができていないと思うんですよ。失敗から学ばずにチャレンジを繰り返しても成功するのは難しい。

私の知り合いで、今レンタカー事業で順調な経営者がいるのですが、彼はコロナが流行したとき、別の事業で規模を拡大しすぎたために、自己破産に追い込まれた経験をしています。その失敗を活かして、今のレンタカー事業では無理に事業を拡げず、高級車に絞って今では10億円規模の会社にまで成長させました。コロナ時の調子にのって事業を拡大させて痛い目を見た経験から、手堅く、自分だけ儲けるのではなく、出資者にもリターンが出て、節税にもなるような事業にしているそうですよ。

事業やお金の使い方に限らず、どんな失敗でも振り返りをして次に活かす。これは成功し続けている「本物の富裕層」に多く見られる共通の特徴ですね。

江上 治(えがみ・おさむ)

オフィシャルインテグレート 代表取締役。1967年生まれ。有名プロスポーツ選手から経営者まで年収1億円超えのクライアントを50名以上抱える富裕層専門のカリスマファイナンシャルプランナー。サラリーマン時代には大手損害保険会社、生命保険会社の代理店支援営業において、新規開拓分野にて全国1位を4回受賞。今は、1億円思考倶楽部という次世代リーダーを育成するコミュニティを運営し勢力的に活動している。主な著書に、ベストセラーとなった『年収1億円思考』(経済界)、『一生お金に嫌われない生き方』(PHP研究所)など多数。

取材・文/七海 碧

不動産・金融に特化しているフリーライター。「本質を捉えて分かりやすく伝える」をモットーに、初心者でもすぐに理解できるシンプルな言葉で説明することが得意。ファイナンシャルプランナー、資産運用検定資格を保有。

文=All About 編集部